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最低でもビートルズ  作者: 林広正
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4

 一人きりでの興行は、大成功といえた。横浜の街だけでなく、国中で評判になり、あちこちから客がやってくるようになった。当然、連日満員だった。

 しかし、ショウ自身は、納得がいっていなかった。もっと楽しくなれる。もっと表現ができると考えていたんだ。しかし、一人きりでの演奏には限界があるとも感じていた。悩んでいたショウに、ヨーコが口を出す。

 チャコとジョージを誘えばいいじゃない?

 あまりにも単純すぎる閃きに、ショウは驚いた。どうして今まで気がつかなかったんだ?あの二人ならきっと、期待以上の反応を示すだろう。思い立ったらすぐに行動に移す。ショウはスティーブを使って二人を呼び寄せた。

 あれほどに仲の良かった三人だが、大学生になってからは顔を合わす機会が減っていた。それでも、校内で顔を合わしていたこともあり、お互いの現状は把握していた。しかし、大学を卒業してからは、偶然に顔を合わすなんて機会は全くなく、かといってわざわざ連絡を取ったりはしていなかった。ショウがボブアンドディランで興行をしていることも、特には伝えていなかった。チャコとジョージが見にくることもなかった。チャコとジョージがなにをしているのかも、ショウは全く知らないでいた。知りたくなかったわけではない。知ろうとしなかっただけだ。

 久し振りだね? そう言ってまっ先に顔を見せたのは、チャコだった。ショウが連絡を入れてから、十分後のことだった。

 ショウの生活は、とても不規則だった。ボブアンドディランでの興行は、多ければ日に三度、少なくても一度はある。一ヶ月間の休みもないに等しい。店自体に休みがなく、ショウも休もうなんて気はなかった。店にいないときは、新しく三階に作られた部屋に入り浸りだった。二階の形のある本で溢れた部屋の上に当たる部屋で、今では音楽に関係のある本だけが集められ、その他の空間は様々な楽器で埋まっている。三階と二階を行き来する穴は、少し広げられ、ちょっと狭いが、普通の階段を備えつけている。三階の方が広くできているが、ショウはなにかの調べ物をするときには必ず二階へと降りていく。三階にも机があるにも関わらず、二階の机を使用する。身体も心も落ち着くようだ。

 結婚をし、新居を構えたショウだが、実際に家で寝る日は少ない。ヨーコと一緒にいる時間も減っている。

 思いつきでチャコとジョージに連絡を入れたショウだが、今の時間をまるで把握していなかった。

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