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最低でもビートルズ  作者: 林広正
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第五章、1

 大学を卒業したショウは、ヨーコと正式に結婚をした。定職にはつかず、形のある本で溢れた部屋を中心に一日を過ごす。ときには寝泊まりすることさえあった。

 三階のレストランへは、ちょくちょく顔を出している。オーナーと知り合えたことをきっかけに、ショウが行けば無料で飲食物が運ばれてくる。以前ショウが手がけた詩の解読、その詩を唄う彼女の父親が、店のオーナーだったんだ。そのことは、聞き屋のミッキーも、あの時点では知らなかったという。

 レストランの名は、ボブアンドディラン。その意味はきっと、人の名前だそうだ。彼女の家族に代々伝わっている先祖の名前だという。後にショウは、そんな読み方をする文字を、形のある本の中で見つけている。

 ボブアンドディランの壁には、奇妙な置物が多く飾られていた。彼女の話では、文明以前に使用していた楽器だという。楽器っていうのは、音楽を楽しむための道具の総称だそうだ。彼女の家には似たような物や、まるで形が違う物まで、楽器らしき物が溢れているという。

 ショウは、そんな楽器に興味を抱いた。楽器がどういうものなのかも分からないまま、勝手に手に取っては、その感触を確かめ、好き勝手に音を出す。

 一方でショウは、ヨーコの手伝いを得ながら、音楽に関する本をかき集めてもいた。

 これってきっと、あの楽器の勉強をする本じゃないかな?

 ヨーコが持ってきた本の表には、確かに同じと思われる楽器が描かれていた。中身は初めの数ページに楽器の説明やら記号の読み方やらが書かれていて、その後は以前に見かけたことのある五本戦とオタマジャクシだった。ただ少し違っていたのは、その五本戦に、オタマジャクシの他に文字が描かれていることだった。その文字が数を表しているってことは、すぐに分かった。その意味を知ることもそれほどは難しくなかった。そして、数字の書かれている線の数にいくつかの種類があるってことにも気がついた。四本と六本が多かった。ショウがボブアンドディランで手にした楽器には六本の細い棒が縦長に張られていた。端と端に下駄があり、数ミリ浮いている。その浮いた棒を抑え込み、弾くことで音を変えることができる。棒の太さも六本共に違いがあり、音に違いが生まれる。

 この楽器の名前が、ギターであるとショウはその本によって知ることになるが、ギターには多くの種類があることを後に知り、さらにはその仲間が何十種類と見つかっている。ショウはそれらの楽器を総称して、弦楽器と呼んでいる。細い棒のことを、弦と呼ぶことからの命名だそうだ。

 ショウはギターに夢中になった。形のある本で勉強をしては、ボブアンドディランで実践をする。勘のいいショウは、音の繋がりや組み合わせを自分なりに生み出していく。正解は分からないが、数字の並ぶ六本戦の上には必ず、同じような形で数字の部分だけがオタマジャクシに変化をしている記号があり、それがきっと音の上下の変化だってことに気がついたんだ。ショウは完全なる独学で、その意味を読み解いた。

 ボブアンドディランの片隅で勝手にギターを鳴らしていたショウだったが、その音が、最初こそ嫌がられていたが、次第に店員やお客さんの間で評判になっていった。

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