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最低でもビートルズ  作者: 林広正
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8

 あの文字が読めるって、本当に? 教えてくれませんか? 今後のためにも、ぜひ。

 一度離れた手を、今度はショウの方から近づき、握り返す。

 お願いです。意味なら僕が解読しますから。

 ショウの熱意は伝わり、後日でよければと、その文字の読みを教えてもらうことになった。しかし、彼女の父親が言うには、文字を読めているわけではなく、どう読むかを知っているだけだそうだ。つまりはその本を丸々一冊暗記をしているだけで、文字の読み方が分かっているわけではなかった。それでも、ショウが文字を読むための大きなヒントになったことは事実だ。

 聞き屋の仕事は、実にあっけなく終了した。こんな仕事ばかりだと楽なんだけどな。ミッキーの独り言だよ。

 仕事の内容は、あの詩を解読するだけでお終いだった。ショウがやったことは、大きなおまけに過ぎなかった。なんでも彼女の祖父が、財産分与をするにあたり、本の中のあの詩を解読することを条件にしたようだ。解読をできた者に、財産の四分の三が与えられ、残りは兄弟で等分する。彼女の父親に 兄弟は四人いる。大きな差が生まれるってわけだ。必死になるのも無理はない。

 しかし、彼女の父親が必死に解読したがっていた理由は、別にあった。風に吹かれて、とショウが名づけたあの詩は、彼女の祖父のお気に入りで、死ぬ前にその意味を教えたかったそうだ。あの日、楽屋にはいなかったが、彼女の祖父はテーブルからその詩を聞いていた。

 その後に兄弟の揉め事が巻き起こるかとの予想を聞き屋はしていたが、そうはならなかった。彼女の祖父は二週間後に亡くなったが、財産分与で揉めることはなかった。四分の三を相続することになっていた彼女の父親だったが、兄弟達を集め、五等分することを提案した。反対する者は当然いなかった。

 彼女の父親がその決意をしたのは、ショウが書いた言葉による影響が強かった。父親なりにその言葉を解釈した結果だった。

 報酬を受け取った聞き屋は、取り分としてショウに半分を手渡した。驚くほどの金額だったが、ありがたく受け取っている。その金があったからこそ、ショウは音楽を始めることができたとも言えなくはない。

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