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彼女のライブが終了すると、店内の明かりが増える。ショウは立ち上がり、彼女に会いに行ってもいいかな? とミッキーに尋ねた。
ミッキーは辺りを見回しながら、そうだな、と言って立ち上がる。
僕がやるべきことが見えた気がするよ。ヨーコと手を繋ぎ歩くショウが、独り言のように呟く。うん、そんな気がする。と、ヨーコが返事をする。
楽屋の中、彼女が誰かと抱き合っていた。だいぶ歳が離れているおじさんだ。どこかで見たなと、ショウは感じる。
あら、あなた達も来てくれたの? 嬉しいわ。今夜の興行、どうだったかしら? 楽しんでもらえた?
おじさんから身体を離した彼女は、満面の笑顔でそう言った。もちろん最高に楽しかったと、ショウが言う。ヨーコとミッキーも、それぞれ簡単な感想を述べた。
そう言ってくれると励みになるわね。彼女はそう言い、隣のおじさんに顔を向ける。
そうだわ。紹介しないといけないわね。この人が私のお父さんよ。そう言い、彼女は隣のおじさんに手を向けた。
娘が世話になりまして。なんて言い、頭を下げた。ミッキーの言う通りだ。人の見た目っていうのは、当てにならない。
この人達がね、あの本の解読をしてくれたのよ。彼のことは知っているでしょ? 有名な聞き屋のお兄さんよ。そう言ってミッキーに手を向ける。隣の彼が解読屋さんね。本の言葉を解読して、詩にしてくれたのよ。隣の彼女は解読屋さんの婚約者よ。
彼女の紹介が終わると、彼女の父親が突然、ショウの前に一歩を踏み出した。
君があの詩を! 素晴らしかったよ。本当にありがとう! まさかこうしてあの詩を今の言葉で聞けるとは思わなかったよ。あんな意味があるなんて、本当に驚いた。
彼女の父親はショウの右手を両手で掴み、何度も上下に揺さぶる。喜びと感動の表現のようだが、ショウの身体が壊れてしまいそうだった。
ちょっとお父さん! 興奮しすぎよ。そんな彼女の言葉に、父親が動きを止める。おっと、これは失礼をした。そう言い、一歩足を後ろに戻す。
あの本はどこで手に入れたんですか? ショウが質問をする。
うちにずっとあった物なんだ。代々大切に受け継がれてきたんだよ。ここだけの話だが、私たち家族はみんな、あの本の文字が読めるんだ。意味は分かっていなかったがね。その中のお気に入りが、あの詩だったんだ。今日はその意味を知れて本当によかった。ありがとう。
彼女の父親はそう言い、ショウに握手を求めた。今度は片手で、一度だけ軽く振り、すぐに離した。




