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最低でもビートルズ  作者: 林広正
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4

 ショウは一人、黙々と作業を続け、ようやく二時間後、詩が完成をした。やっと終わったと、天井を見上げて両手を開き伸びをする。

 そんなに真剣な顔するの、久し振りじゃない?

 部屋のどこからともかく聞こえてくる聞き覚えのある声に、ショウは身体をビクつかせた。

 ひょっとして、気づいていなかったの?

 なぜだかショウは、左右と後ろを見回し、最後に正面に顔を向けた。

 うぉっと、驚きの声を漏らすショウに対し、ふざけてるの? と笑いながらヨーコが言った。

 いつからいた? 真剣な表情でショウは答えた。本当に気がついていなかったのだから当然だ。

 三十分くらい前かな? それ、誰かに頼まれたの?

 ヨーコの言葉に、少し棘を感じる。ショウは繊細なんだ。その空気感を読むこともできるが、言葉のちょっとしたニュアンスをも読み取ってしまう。

 ひょっとしてだけど、なんか知っているでしょ?

 ショウのそんな言葉に、ヨーコはムッとする。

 知っているっていうか、気がついていなかったの? 上のお店に私もいたんだけどなぁ。

 ヨーコの言葉にギョッとする。あそこにいたってことは、全てを見ていたってこと? なにかをしたわけじゃないけれど、後ろめたい気持ちでいっぱいになる。

 ごめん・・・・ とりあえずの謝りの言葉だが、その表情が意外なほどに真剣だった。

 彼女、可愛いものね。私ね、何度かライブも見ているんだ。今日もそのつもりで来たんだよ。

 そうなんだ。なんてショウが言う。

 何度か誘ったことあるんだけど、覚えてないわよな? 興味なさそうにしていたもの。

 ヨーコの言葉に、ショウは反論をしなかった。まるで覚えていないし、確かに興味なんてなかったはずだからだ。三階で行われているライブがどんなものなのか、きっと知ろうともしていなかったはずだ。

 この頃のショウとヨーコは、少し距離を置いていた。特に理由はないとショウは考えていたが、ヨーコの意見は違かった。なにをしていいのか分からず、悩んでばかりのショウを見るのが嫌だった。ヨーコは、やりたいことに一生懸命なショウが好きだった。

 それ、彼女が唄うの? ちょっと読んでもいい?

 ショウの返事を待たずに、ヨーコは机の上の紙を取り上げた。

 これ・・・・ ショウが書いたの?

 紙を持つヨーコの手が震えている。上目遣いでゆっくりとショウを見上げる。

 うーん、半分はそうかな。解読した文明以前の詩を、この時代の言葉で書き換えたんだけど、僕の感情が篭っているのは確かだよ。

 凄いよ、これ! 彼女が唄うの? 勿体無いわよ! ショウが唄いなよ。

 ヨーコはかなり興奮していた。手に持っていた紙の端が、ギュッと捩れる。

 これは彼女に頼まれたから書いたんだよ。お父さんに贈りたいだってさ。しかもさ、今日唄いたいらしいよ。

 ショウはそう言いながら、ヨーコの手からその紙を奪い取り、そろそろ渡しに行かないとね。一緒に来る? そう言いながら立ち上がった。

 ヨーコは無言で頷き、ショウの後をついていく。

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