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これなんだけど、あなた本当に読めるの?
ミッキーに紹介された依頼人は、ショウの予想とは全く違い、かなり可愛い女性だった。真っ直ぐな黒髪、小さな顔、ほんのり焼けた肌、大きな瞳に小さな唇、細すぎないバランスのとれた体型。どこを見ても可愛さしか感じられない。ヨーコと付き合っていなければ、その場で好きだと言ってしまいそうなほどだった。
私の顔になにかついているの? 彼女がそう言った。
あなたがあまりにも可愛いからとの言葉は、しっかりと飲み込んだ。そして、差し出された本を受け取り、これを全部? そう言った。
できないの? なんて彼女が言う。そんなことはないと、ショウはなぜだか口籠ってしまった。
このページだけでもいいのよ。今日中ならもっといいんだけどね。
彼女はショウに顔を近づけ、開いている本のページを捲る。彼女の腕が、ショウの胸を掠める。
ここだけでいいなら、できなくはないよ。これってきっと、なにかの詩だね。解読だけでいいの? 詩っぽくした方がいい?
さすがは聞き屋の紹介じゃない。可愛い顔して、本当に凄いのね。
彼女の言葉に、ショウは素直に喜んでいる。指で頬をツンとされ、その頬を真っ赤に染めている。
流れる風の中に、みたいな意味だと思うよ。きっとこれがタイトルだね。僕ならそうだな。風に吹かれて。なんてどうかな?
あらあなた、意外と言葉のセンスあるんじゃない。音楽やってみる? きっと向いているんじゃないかな?
彼女のそんな言葉を、ショウは少しばかり間に受けているようだ。満更でもない笑みを見せる。
ライブは三時間後なんだけど、自信があるなら父を呼びたいのよ。どう?
三時間もあればじゅうぶんだけど、それじゃ覚える時間がないんじゃない? まさかスティーブにメモして朗読?
あのね、私はプロなのよ。詩は覚えるわよ。そうね、十分もあれが問題ないわ。ただ覚えるだけなら五分もかからないわよ。けれどね。これは詩なのよ。感情を込めるためにも、十分貰えると助かるわね。
それじゃ僕は、解読に取り掛かるよ。すぐそこに仕事場があるから、ちょっとこれは借りて行くよ。
本を抱え、ショウは二階のカフェからいつもの部屋へと向かって行く。
本まで持っていかれちゃったけど、信用してもいいのよね? ミッキーに向かってそう話しかける彼女の声が聞こえてきたが、ショウは無視をして立ち去った。
解読には十分もかからなかった。驚くほどにシンプルな詩だった。シンプルでいて、力のある言葉達。作者の感情が強いのに、その答えを聞く者に委ねている。ただ感じるだけの言葉じゃない。考えずにはいられない言葉達が並んでいる。これを詩として組み立てるのは難しい。
けれどショウは、約束した以上はやり遂げなければと言葉を探し、何度も紙に書き記していく。




