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最低でもビートルズ  作者: 林広正
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 ヨーコの参加により、ほんの少しだが、ショウ達三人の関係に変化が起きてしまった。この時点では、その変化がどう転んでいくのかは分からなかったが、人間関係っていうのは、常に変化を続けていくものだ。その変化を止めることは、誰にもできない。

 形のある本が溢れているこの部屋に、たったの一日だけ爺さんが現れなかったことがある。身体の調子が悪かったわけではなく、遠い親戚が亡くなり、挨拶にいかなければならなかったからだ。

 お爺ちゃんがいないから、今日は箱型スニークで来たんだ。久し振りに乗ったけど、結構人が多いんだね。

 ヨーコがそう言った。ヨーコは、ショウ達三人と出会った翌月に飛び級のテストを受け二十二年生になり、その年の暮れに卒業している。いまだに破られていない、この国での最年少記録になっている。他の国を合わせても、最年少じゃないかと言われているが、真相は分かっていない。学校を何歳で卒業をしたかっていうことを、国同士で争うことには意味がないらしい。国内でもそれは変わらない。それでも国内でそういう話がほんの少しでも話題に上がるのは、実のところ、事実を伝えるニュースが義務化されているからだ。なにか新しいことがあれば、スティーブによって国内に配信される。世界へと配信をしないのは、その重要性によってスティーブが判断をする。最年少による卒業は、それほど大した話題ではないとスティーブが判断をしているってことだ。

 その日の帰り、スニークの中で、ショウとヨーコが二人きりになった。帰り道の方向が同じだったんだ。しかもヨーコは、ショウよりも家が遠かった。送っていくよと、ショウが言い、ありがとうと、ヨーコが言った。

 二人は互いに出会ったその瞬間から惹かれ合っていた。爺さんの命の危機だったこともあり、表には出さなかったが、その気持ちを忘れることはなかった。ヨーコがショウ達三人と解読を始めたのは、そういった理由の方が強いっていうのが真実だ。

 二人の付き合いは、この日から正式に始まった。爺さんの前でも、二人はその感情を隠さない。平気で手を繋いだり、寄り添ったりと、イチャイチャすることを止めようとしない。爺さんもチャコもジョージも、特に嫌な気分になりはしなかったが、一緒にいる時間が減ったのは確かだ。ショウとヨーコは、二人きりになる時間を欲しがった。

 ショウにとっても、ヨーコにとっても初めての恋だった。ほんの少しでも周りが見えなくなるのは仕方がないことだ。とは言っても、二人は決して爺さんが望んでいた本の解読に手を抜いたりはしなかった。

 高校最後の年に、ようやく形のある本の解読を成し遂げた。おまけにショウは、その読み方についても理解をしたと言っている。爺さんの前で、まずはその文字の言葉をそのままに読み上げた。そしてその後から今の世界の言葉に変換して読み上げる。

 嬉しいよ。爺さんの感想はとても簡潔だった。それ以外の言葉に、意味はないと感じたのだろう。

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