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最低でもビートルズ  作者: 林広正
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5

 爺さんの病気って、そんなに重いの? 真剣な眼差しでショウが尋ねる。緊急用の薬を持参しているってことは、そういうことだ。しかも、あれほど大きな薬ってことは、相当な重病を予想できる。

 はぁー、やっぱりお前達には話すべきだよな。爺さんはそう言い、ヨーコに顔を向ける。続きはヨーコが喋ってくれとの意味らしい。

 この際だからはっきり言うけど、お爺ちゃんはね、どう誤魔化しても後三年の命だって言われているのよ。スティーブと薬の服用で、普段通りの生活はできるんだけど、今回みたいなことは、またいつ起きるか分からないのよ。

 そんな・・・・ ショウ達三人が、揃ってため息をついた。

 気にすることはないよ。爺さんは信じられないほどに明るい声でそう言う。私はもうこんな歳だし、死んでしまうことに恐怖はないんだ。お前達と別れるのは辛いがな。

 僕だって、辛いよ。ショウが独りごつ。

 私はな、お前達が羨ましいんだ。長年ここで大量の本に囲まれて生きているがな、どんなに眺めていても、私にはまるで意味が分からない。それなのに、お前達はたったの数日で、解読に成功をしている。神様に選ばれたとはいえ、信じられない偉業なんだよ。正直私は、ちょっとばかり悔しくもあるんだ。いつも眺めている本があるだろ? 私の夢はな、あれを解読することなんだよ。

 そんなことならなんでもっと早く言わないんだよ! ショウが叫びを上げた。解読をしたって言っても、たったの一語なんだ。しかもとっても簡単な言葉だよ。読み方については正しいのかどうかの証明もできていないんだ。

 そう言うとショウは、机の上に置いてある爺さんがいつも読んでいる本を掴み、ページを開く。

 これだけの量を解読するのは大変なんだ。早速今から取り掛からなくっちゃね。爺さんには悪いけど、しばらく僕達に貸してくれないか? もちろん、この部屋にいるときだけだけどさ。

 分かったよと、涙ぐみながら爺さんは頷いた。これが時間的余裕がなく解読している理由だ。

 この日から、文字の解読にはヨーコも参加をするようになった。ヨーコがいれば爺さんになにかがあったときも安心できる。もちろん、なにかが起こらないのがベストだが。それだけでなく、ヨーコはショウ達三人に負けないくらいに頭の回転が早い。即戦力として、文字の解読に貢献している。

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