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最低でもビートルズ  作者: 林広正
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 どこまで行ってきたのか、本当にトイレだったのかは分からないが、爺さんが戻ってくるまでには、それなりの時間がかかった。戻ってきた爺さんの手には、分厚い紙の束と、小さな棒が数本握られていた。

 これに書くといい。爺さんはそう言い、それらを机に置いた。文字を書くことはできるんだろ?

 俺にはできなくとも、ショウにはできる。当時は六年生で書道を習っていたようだ。とは言っても、実際に紙などに文字を書く機会は少なく、忘れてしまう輩が圧倒的に多い。スティーブに頼りっきりだから仕方がない。読むことだけができるっていうのが、現実だ。

 当然だよと、ショウは言った。書道は大好きなんだ。今でも家では書いているからね。

 なら問題はないな。この棒を削って書くんだが、これを使ったことはあるか?

 爺さんの言葉を聞き、ショウはすぐにその棒を手に取った。そしてやたらと触りまくる。頭の回転は相当早く、すぐにその棒の使い方を把握したようだ。

 これを削る道具は? ショウがそう尋ねた。

 まぁ方法は色々あるんだが、こいつを使ってみるか?

 爺さんはポケットからまた、板状の棒を取り出した。床板を剥がしたときに使用したものと同じやつだ。

 こいつの先っぽが尖っているだろ? これでこうやって、削っていくんだ。コツはいるがな、慣れるとそれほど難しくはない。

 爺さんは器用に、その丸い棒の先を削って円錐状に尖らしていく。丸い棒の素材は木製で、板状の棒は鉄製だ。どちらも今の世の中では珍しいが、全く存在していなわけではない。しかし、物を削るのに、なんて原始的なやり方をと感じるだろ? 柔らかい物を硬い物で削るっていう理屈は分かるが、俺達は普段、なにかを削ったり切ったりするのに光を利用する。光は持ち運びも便利だしな。俺は普段から、切削切断用の光を携帯している。小さくて軽いからとても便利だ。指に埋め込む奴もいるが、俺としては、取り外して使用できないと不便なんだよ。冒険家って仕事をしていると、普通じゃない状況にはよく出くわすからな。そんなときに対応できるよう、携帯型を使用しているんだ。

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