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爺さんの話に、ショウは興奮を隠さない。そいつは凄いや! 見てみたいよ! なんて叫んでいた。
ちょいとだけ、下を覗いてみるか? 爺さんの言葉に、ショウは満面の笑みで、うん! と言い、椅子から勢いよく立ち上がった。
おいおい、この部屋ではあまり乱暴をするなよ。形のある本はもちろんだが、この棚や机なんかも相当に古いものなんだよ。文明以前の代物だっていう噂だからな。とても壊れやすいんだ。
爺さんが言うにはだが、この建物自体が文明以前の物かも知れないそうだ。確かに見た目ではそう感じられる。しかし、俺の時代でもそうだが、古さを演出する建物や街並みは多く存在する。最先端の建物は、政府関係のものくらいだ。それ以外の建物は、その素材だけを最先端でまかない、外見を古く演出する。この建物もそうだと、当然思っていた。ショウ達三人が通う学校についてもそうだ。政府が所有する建物の中で、唯一学校だけはその外観に拘っている。
ここ全体がそうなの? チタン製に表面処理をしているんじゃないんだ? そうか・・・・この机、本物なんだ?
そう言いながら、ショウは机を撫で回す。そういえば、あの双子の置物もそうだったよね? 木でできているって言ってたな。正直、そんなことどうでもよくって、気にもしていなかったよ。ここの机も同じだね。だからこんなに輝いているんだ。偽物の輝きとはやっぱり違うよ。学校の机は偽物だから、こんなには輝いていないもんね。
まぁそう言うことなんだがな。本物ってのはいいことだけじゃないんだ。手入れをすれば輝くが、なにもしなければすぐに朽ち果てる。文明以前の建物が今に残されていないのはそういうことだ。ここみたいな建物は、珍しいんだ。ちなみにだが、隣の三角柱は偽物だ。けれどな、横浜駅周辺にはまだ、いくつかの本物が残っているんだ。今度自分の目で探索でもするといい。きっと大きな発見に繋がるはずだからな。
爺さんはそう言うと、ショウが立っている向かい側の机の前に立ち、その机を横に動かした。
ここに階段が隠されているんだが、お前には分かるか? 爺さんがそう言う。
ちょっと待って、とショウはしゃがみこんで床を手探りする。けれどなにも違和感がなかったようで、困惑の表情で爺さんを見上げた。
そんな顔をすることはない。無理もないな。なんて言いながら声をあげて笑った爺さんは、こうするんだと、ズボンのポケットから取り出した二本の板状の棒を取り出した。
まずはこれで、ここの溝を擦るんだ。詰まっているゴミを取り除くんだよ。
爺さんはそう言いながら、板材の形に沿って、一定の場所だけを擦っていく。なんだか歯抜け婆さんの口の中のような形が浮き上がっていく。




