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最低でもビートルズ  作者: 林広正
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 ショウは、子供扱いをされるのが好きではなかった。飛び級を重ね、年上連中に囲まれて生きていたからだろう。学校ではよく、身体が小さいことをバカにされていた。しかしショウは、その頭の良さと負けん気の強さで全てをかわしてきた。次の日には、年齢差を理由にバカにされることはなくなり、仲間として認められるようになる。

 見た目や年齢で判断をすると、痛い目に遭うよ。爺さんだってそうだろ? 見た目はヨボヨボだけど、中身は違う。なにか危険な香りがするのはなんでかな?

 そんなショウの言葉を受け、爺さんが笑った。

 ちょっと中を覗いてみるか? 面白いものを見せてやるよ。もちろん、スティーブには秘密でな。

 爺さんはそう言い、建物の中に入っていった。二階へ上がり、カフェの中からトイレを抜けて、この本だらけの部屋にやって来たんだ。ショウは俺と同じように、棚を埋め尽くす物の正体には気がつかなかった。形のある本なんて見たこともない。それがなんなのか、分からないのが当然だ。

 形のある本の説明と、その文字の種類が多いことと、誰も解読できる奴がいないことを伝えた後、爺さんは好きな本を読んでいいぞと言い、ショウは棚に並んでいる形のある本を物色し始めた。そして適当に、数冊を手に取り、机に並べた。

 これって、本当に文明以前からあるの? なんだろう? 物凄くいい匂いがする。

 ショウは本に鼻をくっつけて匂いを嗅いだ。

 だろ? 私もそう思うよ。爺さんがそう言って、笑顔を見せた。

 ページを捲るショウの顔は、とても真剣で、活き活きとしている。読めないはずの文字を必死に眺めているが、なにが楽しいのか、俺には分からない。

 これってさ、どういうことかな?

 ショウはそう言い、一冊の本の中の文字を指差した。そこに描かれていたのは、やはり俺たちの世界とはまるで異なる発想から生まれた文字が描かれていたんだが、その隣に、口の形をした絵も描かれていたんだ。

 こいつは面白いな。口の形を真似てみるといい。もしかしたら、発音の記号かなにかかも知れない。爺さんがそう言ったが早いか遅いか、すでにショウはその口真似で様々な声を出して遊んでいた。

 他にも似たような本がないかな? これって絶対にそうだよ。文字を読むためのヒントなんだ。

 ショウは立ち上がり、棚の本を物色し始める。爺さんも一緒に物色し、五冊の本を探し出した。

 他にもまだあるはずだけど、まずはこれくらいから始めるといいだろう。爺さんがそう言った。

 そうだね。けどさ、これだけを調べるのだって大変だよ。しかも解読するとなると、どれほど時間が必要か分からないな。爺さんはもちろん手伝ってくれるんだよね?

 私には無理だよ。この場所を管理して何十年が経っていると思うんだ? 手伝えることなんて、本を探すことくらいが関の山だ。

 それでもじゅうぶんだよ。ショウは爺さんに顔を向けてそう言った。これだけの数があるんだ。読みたい本を探すだけでも一苦労だよ。

 それはそうだがな・・・・ 実はな、この下にあるレストランの奥にも部屋があってな、そこにも大量の本が隠されているんだ。ここよりも広い部屋でな、私でさえ把握しきれていない量の本がある。しかもな、新しく世界のどこかで形のある本が見つかると、ここを管理している連中はそれを買い取ってくる。ときにはここの本が欲しいという者もいてな、貸し出したりもしているんだが、売り渡すことはまずないからな。形のある本は、日々増えているんだよ。そろそろ三階にも部屋を作るって噂になっている。

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