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最低でもビートルズ  作者: 林広正
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 とは言っても、数十年前までは、この国に限っての話だが、文字や絵を書く独特の文化が残っていた。墨汁と呼ばれる真っ黒な汁を使って、束にした毛を使い、細長い紙に書き記す。書道なんて呼ばれているが、その方法は様々で、横長に絵を書くこともあれば、縦長に文字を書いたりする。特に決まりなんてなく、自由に感情を表現するのが書道だ。

 ショウ達三人が手に持っている木の棒には、真っ黒な芯が仕込まれている。その芯を擦って文字を書いている。束に重ねた紙は、形のある本によく似ている。

 ショウ達三人がなにをしているのか、俺には理解ができなかった。そりゃあそうだ。俺は、文明以前の文字が読めない。そんな物をいくら眺めていても、ちっとも楽しくはならない。

 この世界の文字は、一種類しかない。しかし、文明以前の文字は、限りがない。その全てを解析するなんて、俺にはできないし、そんな考えすら浮かんでこない。ショウ達三人は、それを成し遂げようとしていた。しかも、たったの十歳で。

 この本なんだがな。と、部屋のどこかから現れたのは、白髪で背の高い爺さんだった。

 爺さんが机に置いた本は、なんだがオタマジャクシのイラストが描かれている不思議な本だった。サイズが大きい古びた紙でできている。五本の線が横長に並び、その上をオタマジャクシが泳いでいる。オタマジャクシ以外のイラストの意味は分からないが、なかなかに美しい絵柄だった。五本の線は、二段を一セットになるよう左右真ん中など五箇所を縦の線で繋いでいる。一枚の紙に、そんな五本の線が四セットか五セット描かれている。イラストのタイトルを示すような文字が書かれているページもあった。

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