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序章
まさか僕がこんな死に方をするとは想像すらできなかった。
僕の目の前には、拳銃を手に持った男が立っている。その拳銃を、迷いもなく僕の眉間に突き刺す。こいつが誰なのか知らないが、興味もない。こうやって僕は死んで行く。
僕が見ているこの現実を、誰かに伝えなくちゃな。ライクアローリングストーンのニック。なぜだがあいつの顔が真っ先に浮かんでくる。僕はあいつのことが好きなんだ。一緒に映画を撮れなかったのが心残りだな。
死を意識しても、恐怖はない。もうじき生まれてくる息子に会えないのは哀しいが、精一杯生きてきた僕の魂はこの世に多く残してきた。悔いは残さない。その代わり僕は、この記憶の全てを息子に残そう。三十年後に開くように設定をして。