ギルド結成の日
「こ、こんにちは。」
「こんにちは。」
「あの、冒険者ギルドってここですか?」
「はい。そうですよ。新規登録の方ですか?」
「あ、そうです。」
「畏まりました。それでは、あちらのソファにお掛けになってお待ちください。」
受付のエルフお姉さんは、手馴れた振る舞いで僕の新規登録をこなしている。
僕はソファに腰を降ろした。数多の戦士たちもここに座ったのかと思うと、自然と背筋が伸びてしまう。
今日は、待ちに待ったギルドへの登録だ。
僕は緊張気味の右手をグッパグッパしていた。
待ち時間というものはどうも落ち着かないなぁ、なにか暇を潰せるものはないかなぁなんて考えも覚えつかないくらい、必死のグッパでした。
あ、爪痕がついちゃった。恥ずかしいなぁ。
なにかすることは無いかな、手持ち無沙汰は嫌だし...
そうだ!受付のお姉さんを気にしてみよう。
彼女はここ、ハンターズギルドの看板エルフ娘だ。
歳は誰も知らないのだけれども(知ったものは彼女の親衛隊に"消される"らしい)僕の見立てた所では、ハタチかそこいらだ。
ちなみに、エルフはヒトよりも長く生きる。
だから、ヒト基準で見てはならないんだろうけどもね。もしかすると僕の母よりも高齢なんてパターンも有りうる。
閑話休題。
事務的な対応が目立つとのことで同業の事務員たちからの評判は余りよろしくはないのだけれども、血に飢えた男ハンター達からは絶大な人気を誇っている。
その理由は、言わずもがな胸と臀である。
腰から臀部に掛けてのなだらかなラインが、彼女の本来の武器を主張させている。
そこに架かるは金髪のミルキーウェイ。
立ち振る舞いが美しい。
上は白の清楚そうなブラウスに、ピンクの下地が少し透けて見えている。前面に構えるは2つの大きな果実である。
まるでメロンだ...
事務的な印象を与えかねない彼女であるが、その色合いと果実からは大人の芳醇な色香と、どこか幼さを感じ取れた。
そして、下はピチピチに張り付いたスカート。
性的すぎる!って、今屈んだ時チラッとピンク色のアレが見えた気が...下もピンクなの?
破廉恥だなぁ。事務員とは思えないぞ。
男って単純。しかし、僕はそんなのに惑わされないぞぉ。
僕はチラチラとそのエルフプロポーションを視界に入れながら、両手をグッパグッパしてソファにより深く腰を落ち着けた。
いいものだな。
男は単純である。
僕が桃色の思考に夢中になってると
「よぉ〜、ミノン」
「あ、ラージ!」
ラージ、名の通りビッグな体型の男だ。
僕とラージは幼なじみというやつで、昔から仲が良くいつも遊んでいた。でも、周りからはでこぼこコンビとかって言われるんだよね。納得はしてる。
何故なら、僕はどちらと言えば背の低い方でラージとは頭2つ分ほど違う。さらに、ラージみたいに活発的に動く方ではなく、どちらかと言えば物思いに耽るタイプなのだ。
皆は、僕の性格も見抜いた上で、でこぼこコンビと称したというわけ。
ラージはそんな僕の事を気にかけてくれる"良いヤツ"なのだ。
そして、彼がここで僕に声を掛けたということ。
それの意味するところは、彼は僕の結成するギルドのメンバーの1人ということになる。
チーム、とでも言うと結束力が高まりそうだね。
「なぁ、ミノンさぁ、ギルド結成で金がねぇのはわかるんだけどよぉ俺もピンチでなぁ」
「えっ、またぁ〜。もう、ラージはお金の使い方に気を付けた方がいいよ?」
「ハハッ!わるいわるい!」
僕は普段からお世話になっているラージには、これくらいの恩返しはしなければいけないという想いがあるので、むしろラージの金遣いの荒さには感謝してる節がある。僕がラージに対して出来ることってこれくらいだから。
「ハハハ!助かったぜ。そんじゃあ、結成手続きが終わるまで時間かかるだろうから、俺はそこいらを"歩いてくる"なぁ」
「うん。わかったよ。また後でね」
ラージは意気揚々と早足で去っていった。
きっと、僕と同じで早くギルド結成の手続きが終わらないかな?という気持ちで胸がワクワクしているんだろう。
こう言うのを隠しきれないのは、昔から変わらないラージの可愛い所なのだ。
財布は軽くなったが、その分僕の心は満たされた。
うん、これでいいのだ...。
今日も世界が平和でありますように。
僕は心の中に巣食うモヤモヤを端に避けて、
再度、受付のお姉さんのメロンを鑑賞する事にした。
View ラージ
昼下がりの繁華街。大通りから1本小脇に入った小路地では、昼ではあるが、まるで夜みたいに不清潔さを体現としたかのような空間が醸し出されている。
一言で表すなら、怪しい世界だ。
俺は、友人から恵んで貰った札を握りしめながら歩調を早めた。
彼の目的とする"もの"は、その不潔な空間にどかっと腰を落ち着けながら、白い煙を口からあげて、
そこにいた。そして、足音に気付いたのか、煙を吐き出しながら焦点の定まらない白色の濁った目をこちらに向けてきた。薄汚いボロ布を着た初老の男だ。
「ぉぉ、ラージぃ〜なんだぁ今日もかぁ」
「ハ!うっせぇ!こちとら、連日シマ荒らされて気がたってるんだ!早くアレを寄越しやがれ!!」
「ふぃ〜♪いいがよぉ〜お前さん、金使いすぎじゃねぇか?良客だから俺は助かるがなぁ〜。
なにか、危ない橋でもぉ渡ってるんじゃないかって勘ぐっちまうぞぉ〜」
図星である。事実、今は明かされない事だがラージは危ない世界に片足を踏みかけているのだ。
「おまえには関係ねぇ、と言うかお前にだけは言われたくねぇ」
「がふぁふぁ!!その通りだなぁ〜。ほら、今日は冴えてるお前にサービスだ。おまけだ。」
怪しい男は震える指先で、白色の粉を袋に流し込んだ。
ラージは呆れていた。
なにがおまけだ。いつも目分量の癖して。
口先だけは一丁前だな。それでいて、サービスと称していながらも後になってから恩着せがましく、あの時は良くしてやったぞとこちらに見返りを求めてくるのだ。
つくづく、人間を辞めたジジィだ。
「がふぅ、ほら、貰ってけ。」
「...どーも」
ラージの感情が受け取り方にも出たのだろう、
乱雑に扱われたため、少量の粉が袋から粒子状になって空気に溶けてしまった。
やべっ、ジジィにイラついたせいで粉を無駄にしちまった。
ラージは焦った様子に変わったが、ジジィはそれを気にしたフリもなく、自分の口元からあがる煙に夢中だった。
俺も大概どうしようもない野郎だが、このジジィはもっとやべぇ。
良くも悪くも売人...とっととここを出て行くべきだな。
ラージは論理的に物事を考えることは苦手とするが、その分、野生の勘というやつは得意としている。
やっぱり、やべぇよなぁ。あのジジィ。
目もやべぇし、なんもかんもが胡散臭い。
それに比べて、ミノンは穢れを知らない、
まるで産まれたてのヒヨコのようだなと彼はミノンの事を心の中で評するのだった。
暗闇が支配する小路地には、もう足音は響いていなかった。
View ミノン
「ぶぇっくしょん!」
うわ〜、もしかして誰かに噂されたのかな〜。
僕なにか悪いことしたのかな?
はっ!もしかして、受付のお姉さんにバレた!?
ジロジロ見てることがバレた!?
う〜ん。でもそんな素振りないしなぁ。
僕の考えすぎだろう。
ところで、そろそろ手続きも終わりそうな時間なはずだけども、ラージはまだ戻ってこないのかしら?うーん、ジロジロ見るのは危険な気もし始めたしどうしようかな?
「戻ったぜ!」
ラージの声!
「どうしたの!早いね」
「あぁ、どうも綺麗な空気が吸いたくなってな」
「??」
ラージはこちらから目を背けた。
「いや、なんでもねぇんだ。それより、金助かったぜ。」
「いいんだよ。ラージのためになるなら、僕はそれだけで儲けものってやつさ」
「ッッッ!ミノンお前ってやつわぁ」
「あわわ、なに」
「グリグリ攻撃だ〜」
「あはは!やめてよ〜ラージ。きみのそれは痛い代わりにくすぐったいんだってば」
「この世にはくすぐりの刑というものがあってな?」
「ちょっ、ストップ!痛そうな話は無しだよ!」
「三日三晩ばかり磔にされて...」
「うわぁー!ラージぃぃぃぃ」
受付のエルフお姉さんの冷ややかな視線を浴びていることに、2人は気付いていないのでした。
View ???
繁華街で流通している人気商品があるらしい。
それは、一息吸い込むだけで神様からの恩恵を受けると専らの噂だ。具体的になにが恩恵かっていうのは目下調査中。そして、これを常習しているやつはみな、不自然なまでに同じことを口にする。
【神が舞い降りたのだ】
〜ー〜ー〜ー〜ー〜ー〜ー〜ー〜ー〜ー〜ー〜ー
あとがき
...街の設定の話なにもしてないやん。
マジで物書き目指せ無さすぎる。
計画性の無さが露呈しました。
リサイクル不能文章か、これ。
そして、先手必勝の断り文句。
View.ラージにて一人称視点での口語と
三人称視点での文語を合わせているのはわざとです。
あくまでも、この作品の主要人物はミノンであり、
ラージは彼を補完する役割として機能させようかなと考えての措置です。まぁ、本当は苦手なだけなんだけど。
ミノンは僕とキャラが近いから語りやすいけど、
ラージは正反対だからさ。
目指したもの
ファンタジー×ライト&ダーク×麻薬密売×友情
いつの時代だって、落ちぶれた人間と
それを助ける"ブツ"は存在している。闇。
しかし、同じく不変のものもある。
それは、友情である。
不可視、幻想といくらでも批判をするための文句を挙げることは出来るが、友情には決して、それらに屈しない強さがある。光。
つまり、闇に染まりかけた友人を友情で麻薬密売から救い出すっていうのが大まかなプロットってわけさ。
そこに、必然的なエロティシズムを挿入できるファンタジーを合わせたってだけのこと。
どうも、現実の世界観でエロを入れようとすると生々しさがあり、抜けないからなぁ。
という極めて個人的な趣向である。
そして、極めつけはエルフ×OLっていうのがやりたかっただけ。エルフは知能水準が高いってよく言うし、そこに知性の象徴たるタイトスーツ合わせたら最強じゃね?というIQ3の発想である。
でも、僕は大体ギャクテイストか自虐テイストに仕上げる傾向があるから、どっちにしろエロも笑いに変えるんだけどね。