高木さん
高木さんは品行方正に暮らしていました。
出しゃばること無く、人の道から外れる事もなく、、
可もなく不可もなく、目立つことも無く、、
そんな高木さんにも人生の終焉の時がやって来ました。
白い天井を見ていた高木さんは、、フ〜と意識が遠のき、、
次に意識が戻ってきた時は大きな男の人の前にいました。
??この人が閻魔大王さんかな??
目の前にいる男の人は何やら帳簿を見ていますが、困った顔をして左右の鬼?さんに相談している様です。
たいそう長い時間がかかりましたが、閻魔大王さんから鬼が離れて行きました。
判定が出た様です。
『高木さん、お待たせしました。』
閻魔大王さんはイメージと違い、、丁寧だけど何か事務的に話し出しました。
『高木さん、あなたは地獄に送る様な悪いことはしていません。』
その言葉を聞き、高木さんは安心しました。
『しかし、、』
ほっとしている高木さんに向かい、閻魔大王さんは言葉を続けました。
『天国に行く程の良い事もしていません。』
『今までに無かったケースなのでお時間をとりました。』
何やら怪しい雰囲気です。
『高木さん、私達は何もしなかったことは罪だと考えました。』
『しかし地獄に送るのも偲びません。』
『そこで(半地獄)に送ることにしました。』
『ただ今急いで準備していますので、暫くお待ち下さい。』
閻魔大王さんは、、、ここで高木さんから反論があったら(半地獄)行きを撤回するつもりでした。
悪い事はしていなかったのですから、、
しかし目立たず出しゃばらず何もしてこなかった高木さんは(半地獄行き)を受け入れてしまいました。
•••••
次に意識が戻った時、高木さんは生前のアパートの部屋にいました。
また以前の様に背広に着替えて職場に向かいます。
職場には生前ただ一人苦手な上司がいました。
伊加利屋さんです。
他の人達は高木さんの存在に気づいていない様に、本当に気づいていなかったのかも知れませんが、、
伊加利屋さんは違いました。
『何やってんだよ〜』
『だめだこりゃ』
何かにつけて怒られました。
その日も怒られながら仕事をして、17時になり帰りの支度をしました。
隣では伊加利屋さんも帰り支度をしています。
社屋を出ると直ぐ後ろを伊加利屋さんも歩いています。
高木さんは焼き肉が大好物です。
よく行く焼肉屋さんの暖簾をくぐり、席に着きました。
『よぉ〜っ』
対面に伊加利屋さんが座りました。
『なんで???』
しょうがなくメニューを次々に注文していきます。
勿論二人に会話はなく、、
来たカルビ、豚トロ、豚レバーを網に乗せていきます。
高木さんは肉が大好物です。
焼けるのなんて待っていられません。
網に乗せた途端、直ぐに口に放り込みます。
空腹もだんだん収まり、、、
気づくと対面の伊加利屋さんの顔が赤く染まり、眉間にはシワがより、プルプルと頬の筋肉が痙攣しています。
『俺はよく焼きが好きなんだ!俺が食えないだろ〜』
高木さんの顔を焼き網に押し付けるがごとく怒りました。
高木さんは誤り誤り、ほうほうのていで店を出ました。
(早く帰ってもう寝よう、、)
自宅に向かう高木さん、後ろを伊加利屋さんがついて歩きます。
ドアをガチャガチャ、、
後ろで伊加利屋さんが待っています。
ドアを開けて、、、一緒に入ってこようとする伊加利屋さんを入れない様にドアを閉めようとすると、、ドアが閉まりません。
伊加利屋さんが足でドアを押さえていました。
『伊加利屋さん、、もう勘弁して下さい。自宅までは勘弁です。』
高木さんは人生で初めて他人に自分の感情を伝えました。
その言葉を聞き伊加利屋さんがニヤ〜と笑い言いました。
『これが(半地獄)だから!』
『24時間365日よろしくな!』




