追想の十分間クッキング3
揺すって、足してを繰り返すこと、もうどれくらいだろう。そろそろかとフライパンを傾けてみると、オイルがタラーッと伝うように垂れてくる。よし。乳化完了。
マカロニを一つ箸に取って食べてみる。食感は申し分ない。でも、少し塩気が足りない。
「男の料理に二度塩なし!」
でも、わたしは女だしね。関係ない。
塩を少し足して味を調える。
仕上げに刻んだイタリアンパセリを二つまみ振り入れて、ささっと馴染ませたら、はい出来上がりっと。
オイルが絡んで艶々と照るマカロニは、散りばめられた赤と緑もアクセントになり、そしてニンニクの程好い匂いを纏って、見た目も食欲もわたしを刺激する。
白い深皿に手早く移して、いざテーブルへ!
アイロニーなんてマカロニを茹でてみた。今年で三回目だけれど、去年よりも茹で加減最高。味もちょうどいい。
「余計なことなんていらないね」
「シンプルが一番うまいんだよ」
あなたの言葉が今更ながら頭に浮かぶ。料理上手だったあなたに食べさせてあげたい。きっとわたしを誉めてくれただろうから。
わたしはスパゲッティーニよりもマカロニが好き。皮肉なんてシンプルで短いに越したことはない。
あなたがいなくなったなんて、わたしの人生最大の皮肉でしかないのだから。
了