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マカロニ(追想の十分間クッキング)  作者: 九丸(ひさまる)
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追想の十分間クッキング2

 オイルの色が少し赤みを帯びてきた。これくらいでもう十分。ここからはあっという間に火が通ってしまうので、一旦火を消す。


 鍋からフライパンに大匙二杯のゆで汁を入れて、余熱でオイルとゆで汁を混ぜていく。乳化の第一段階。五徳をガッガッといわせながら、フライパンを小刻みに素早く前後に揺する。オイルとゆで汁が行ったり来たりして混ざり合っていく。


「調理過程って恋愛と似てんだよ。世の男達ももう少し料理すりゃあモテんのにな」彼の恋愛持論。まるでモテ男の言いぐさだ。


 ガコンッ! リズムがずれてオイルが少し飛び散り、コンロを汚してしまった。まあ、いいか。拭けば済むことだしね。なんでも丁寧に! 彼以外にもよく言われる。


 そうこうしているうちに、キッチンタイマーが茹で上がりを告げる。


 鍋の火を消して、お玉で別の小鍋にゆで汁を移していく。十掬いくらいで小鍋が七割くらい満ちる。あとは、シンクに置いてあるボウル型のザルに勢いよく流し入れる。ザアーッとマカロニごと流れて、モワーッと湯気が立ち上がり、顔を熱く濡らす。


 顔なんておかまいなしに、ボウルを手にして、マカロニをフライパンへと。湯切りはいらない。余計な粘りがうんたらかんたら。はいはい。彼の持論。


 さあ、ここからが本番。火は弱火より少し強めに。菜箸右手にフライパンを大きく揺する。マカロニがほどけてオイルと絡まっていく。乳化の第二段階。


 素人が失敗するのは乳化が上手くできないから。それで味が絡まない。プロならさっとできるけど、素人が失敗しないためには時間が必要。だからマカロニは六分ろくぶ茹でくらいで上げて、あとはフライパンでゆで汁を足しながら仕上げる。もう彼の持論だらけだ。


 マカロニが片寄らないように菜箸で流れを作りながら、フライパンを揺すり続ける。途中でゆで汁を適宜投入して、また揺する。


 フライパンを傾けて流れ落ちるオイルの粘りけを確認する。うーん。まだ粘度が足りない。もう少し。


 せっかくだから、彼のようにフライパンを煽ってみる。勢いと手首の反しが弱いのか、マカロニが舞い上がってクルッとフライパンに着地することもなく、そもそも舞い上がりもせずに、スキップの出来損ないみたいにもたっと跳ねただけだった。まあ、仕方ない。別に調理に影響はないだろう。


 わたしは気を取り直してフライパンを揺する。


 

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