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異世界で戦闘玩具職人に任命されました  作者: 夏野あさがお
第一章
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7. 正義のヒーロー


~村の女の子目線~


 朝、目が覚めて、私は昨日のことを思い出しました。

 昨日はスカッとしたなぁ。

 あいつのあんな顔初めて見ました。

 あいつとは、いつも私をいじめてくる、意地悪な年上のガキ大将です。

 私は、ふふふと笑いながら大事に抱えた粘土の人形を見ました。

 昨日、聖女様に作ってもらった正義のヒーロー様です。

 ありがとうね、私のヒーロー様!

 正義のヒーロー様は本当にすごいのです!

 あいつの作ったバカでかい不細工な粘土魔獣がぶつかっても、何ともありません。

 昨晩はずっと抱えて眠っていたのに、少しも凹んでいないのです。

 そういえば、聖女様は“ロボ”って言ってたけど、どういう意味なんだろう?  

  

「おい、早くおいで。畑に行くぞ!」


 お父さんが呼んでいます。

 今日は、お父さんと私で畑へ行って、聖女様や王都からお越しになった騎士様たちの朝食作りの準備をしなければいけません。


「はーい! 今行きまーす!」


 野菜を入れる大きな麻の袋を担いで、お父さんの後を追います。

 本当は正義のヒーロー様は野菜運びの邪魔になってしまうので、置いていったほうがいいのですが、私はこっそりと後ろに隠しながらお父さんについて行きました。

 少しも離れていたくありません。


 あれ?

 家の外に出た私は不思議な事に気が付きました。

 昨日は、確かに普通の粘土の色……灰色だったのに、今は少し輝いて、新しい鉄のような輝きを持っています。

 

「すごい……さすがヒーロー様……!!」


 私は早くみんなに自慢したくなりましたが、今はお父さんを追って、畑へと急ぎました。



 畑についたお父さんは、目を丸くしました。

 なんてことでしょう!

 毛むくじゃらの尻尾の長い魔獣が三匹、大事な畑の作物を荒らしています。


「コラー! やめろー!!」


 お父さんは大声をあげながら、近くにあった鍬を振り回しました。

 時々ですが、こうして魔獣は村の畑から作物を奪っていきます。

 いつもは大声で追い払えるのですが、この日は違っていました。

 二匹の魔獣が牙をむき出しながら、お父さんに襲いかかったのです。

 大人の膝くらいの大きさしかない魔獣なので、そんなに力はありません。

 お父さんは鍬で応戦しています。

 私はまだ小さいので、お父さんの助けにはなれません。大人しく魔獣たちが去ってくれるのを待っていました。

 

 その時、一匹の魔獣が私に気付きました!

 私は思わずビクッと体が震えて、後ずさります。

 その魔獣は牙を剥きだして、私に迫ってきました!


 ひぃ!

 助けてー!!


 私は目をつぶりました。


『私にまかせなさい!』


 ドカン!!

 何かの衝撃音がありました。

 

 目を開いてみると、毛むくじゃら魔獣が地面にひっくり返っています。

 そして、私の目の前には、ヒーロー様の背中が!

 ヒーロー様は右手を前に突き出しています。

 そして、足の裏から炎を出しながら、宙に浮いていました。


「……ヒーロー様?」


『私がいるから大丈夫だ! 任せなさい! 君は危ないから、少し離れていなさい』


 振り向いたヒーロー様は、私にそうおっしゃいました。

 私はコクコクと頷いて、その場から少し離れました。


 ヒーロー様にやられた魔獣は、「キーキー!!」と叫び声をあげました。

 それを聞いて、お父さんとやりあっていた魔獣たちもヒーロー様を取り囲みました。


『何匹こようと私にはかなうまい。弱気を助け、悪をくじく。私は“正義のヒーロー”なのだから!』


 魔獣が三匹同時にヒーロー様に飛び掛かりました。

 ヒーロー様は、それをヒラリと避けると、前に両手を突き出し、その手が外れて煙を出しながら、すごいスピードで魔獣の顔面に次々とヒットしました。

 そしてまた元に戻ります。


 ヒーロー様の攻撃は終わりません。

 肘を前に向けると、そこから小さな礫が次々飛び出し、魔獣たちの全身に当たりました。

 当たったところは小さな火花が散っています。


 魔獣たちは痛みからか「キーキー」と泣き叫び、飛び跳ねながら森へと逃げ帰っていきました。

 私は茫然とその光景を見ていました。


 そしてヒーロー様は振り返ると、腰に手を当ておっしゃいました。


『もう大丈夫だよ。小さなお嬢さん!』


「キャーーー!! すごい、すごい、ヒーロー様!! キャーーー! カッコイイーーー!!」


 私は思わず、大声で叫んでしまいました。

 お父さんは私に駆け寄り、茫然とヒーロー様を眺めています。


 私の叫び声に気付いた村の人たちが、畑に集まってきました。

 みんなヒーロー様に驚いています。


 その中に聖女様もいらっしゃいました。

 聖女様は口をポカンと開けて、ヒーロー様を見ていました。

 


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