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異世界で戦闘玩具職人に任命されました  作者: 夏野あさがお
第二章
69/127

9. 次の調査場所は…


 騎士の仲間たちと夕食をとった私は、部屋へと戻り、寝る準備を始めた。

「あのー……着替えたいので、ちょっと部屋から出ててもらえますか?」

「ああ、俺、人間の裸には興味ないから大丈夫だよー」

「いえ、私が気にするので……」

 魔物の男性は、廊下に出ると不満そうに声を掛けてくる。

「ねえ、フィアリーズは平気なのに、何で俺は駄目なの?」

 うーん……見た目の問題かな?

 今の魔物は、見た目が全くの人間だからね。

 私は宿からもらったお湯で軽く体を拭くと、素早く寝間着に着替えた。

 この世界の宿にはお風呂はないようだ。

 辛い……

「すいません。お待たせしました」

 扉の外へ声を掛けて魔物が入って来ると、ベッドへと入った。

「今日は疲れたし、もう寝ましょう。おやすみなさい」

「そうだねー。おやすみ」

 そう言って、私の隣に入って来る。

「いや……待ってください。困ります」

 ジロッと魔物を睨んだ。

「だって、この部屋、ベットが一つしかないよ? 狭いけど、しょうがないよね」

 ……そうだった。

 しょうがない。私が床に寝るか……

 はぁー……と、ため息をつくと、ベットから出て荷物から毛布を出し、床に敷いてゴロンと寝転がった。

 うう、背中が痛い……

「おやすみなさい」

 そう言って掛布を被ると、何故か今度は魔物がそこに入って来た。

「ちょっ、なんなんですか!?」

 私はガバッと起き上がった。

「人間の姿って、ちょっと寒くってぇ。くっつくと温かいよね」

 は?

「ダメです。人間は普通、恋人同士でも夫婦でもない男女で、くっついて寝たりしませんから!! 寒かったら、元の姿に戻ればいいんですよ!」

「あ、いいの!? 分かった!」

 魔物は、ボフンと元の大きな鳥の姿へと変わった。

「ぎゃーーーーー!!」

『なんですの!?』

『真っ暗やー!』

 この狭い部屋の中で元の大きさに戻った魔物は、部屋全体に窮屈に押し込められているような状態になった。

 私、ライディ、マリア、シェルは、彼の羽毛の中に埋まってしまった。


 私の悲鳴を聞きつけて、騎士の4人が駆け付けた。

「どうしたんだ!」

 扉を開けると、そこを塞ぐ青い羽毛が。中は全く見えない。

「おーい! スイ、いるかー!?」

「大丈夫かー?」

 羽毛をかき分けて中に入ってきてくれた。

「うぷ、だ、大丈夫です……」

 私と騎士達は、マリアとライディを見つけ出すと、抱いてベッドへと移動する。シェルは寝ているようで返事がないので放っておく。


「ありがとうございました。羽毛が覆いかぶさってきますが、軽くてフワフワなので、窒息の心配はなさそうです。このまま寝ますね。おやすみなさい」

 私は引きつった笑みを浮かべた。

 魔物が一緒で大丈夫!って、あんなにきっぱり啖呵切っちゃったもんね……

 今さら嫌です……なんて言えない。


「そ、そうか……。まあ、頑張れよ」

 騎士のみんなは私を励ますと、扉を閉めて帰っていった。

 はぁ……早まった。



 翌朝、朝食の席には、昨夜、宿を留守にしていたクラウディオの姿もあった。

 私たちは挨拶を交わすと、朝食を食べながら軽く打ち合わせをする。

「今日は残りの一か所を調べる。しかし、そこでも手掛かりがなければ、昨日言っていた魔物の調査をしなければならない」

 クラウディオは難しい顔をした。

 大蛙が出たという噂なんて、この町に来てから聞いたこともない。何の手掛かりもない状態だ。


 魔物は私達と同じテーブルで、私が作ったスープを飲んでいる。もう食材があまりないと女将さんに言われ、スープしか作れなかった。

 しかし魔物は文句を言うこともなく、ご機嫌でスープを飲んでいた。

「なんでもいいんですが、何か手掛かりになりそうな事を知りませんか?」

 魔物に尋ねてみた。

「ねぇ、今日行く所って、近くに池ってある?」

 クラウディオは預かっていた地図を開いて、印を見た。

「いや、……なさそうだな」

「奴は池の近くを好むんだ。そこは違うんじゃないかなぁ」

「……そうか。しかし、他に手掛かりはないし……」

 池か……


「ねえ、ところで名前を聞いていないんですが、教えてもらえますか?」

「あれ? 言ってなかったっけ。俺、スライト」

「あ……」

 しまった! この魔物の名前も聞いてなかった!

 でも、今は本当は大蛙の名前を聞いたつもりだったのだ。

 思わず、やばいって気持ちが顔に出てしまった。

「んー? その顔って、俺の名前には興味なかったの?……予想外、ちょっと傷ついちゃった」

 スライトはしょんぼりと肩を落とす。

 これは私が悪かった。

 テーブルに置いてあった残りのスープを鍋ごと、魔物スライトに差し出す。

 本当はフィアリーズに持って行ってあげようと思ったんだけど、彼らは食べなくても平気なんだし、いいよね。

「やったー! 得しちゃったなぁー」

 スライトはたちまち元気になると、鍋を持ち上げごくごくと飲みだした。

 豪快だ……

 すっかりと飲み終わると、スライトはニコニコと話し出した。

「奴の名前はボレシャス。息子もいたな……確か、グラトナス……だったかな?」

 私はそれを聞いて、ん?と顔をしかめた。

 どこかで聞いたような……?


「ちょっと待っててください!」

 私は自身の部屋へと駆け出す。

 荷物から紙を取り出すと、すぐに階段を駆け下りてみんなの元へ戻った。

「こ、これ……!」

 私は紙を広げてテーブルの上に置いた。

「あれ? これって、スイの事可愛いって言ってた男が渡してったやつだよね?」

 マークが覗き込んできた。

「うん、そうそう!」

「……なに?」

 クラウディオが硬い声で聞いた。

「昨日の朝、これを渡されたんですが、何か怪し……」

 私が話している途中で、バッとクラウディオが紙を取り上げた。

「……これは?」

 紙には、簡単な地図が書いてある。

「これって、通りの名前ですよね。この場所に来いってことなんだと思うんですが……ここ、ここを見てください!」

 私は紙の下の方を指さす。

 そこには、“ラトス”と書いてある。彼の名前のようだけど……

「グラトナスと何となく似てませんか? いや、ただ似ているだけかもしれませんが……」

「スイ、字が読めるようになったのか? 頑張ってるな」

 アルフレッドに褒められた。

 えへへ。

 思わず頬が緩む。

 

「お待たせー!」

 明るい声で、リーナが宿へ入って来た。

「何を見てるの?」

 リーナがひょいと横から紙を奪う。

「んん? この場所って……確かこの辺りには誰も人が住んでないわよ。廃墟になってるとこじゃない? どうしたの? これ」

 やっぱり!

 こんな場所にお店なんてないんだ……!

 彼は嘘を言っていた。


「怪しい人だったんですよ。私一人しかいなかったのに、 “君達”って言ったんですよ」

「それって?」

 マークが首を捻る。

「うん。マークと私に来て欲しかったんだと思うよ」

「マーク様が見えていたってことは……」

「そうだな。只者じゃないな」

 ホレスとフリッツが顔を見合わせて、うんうん頷く。

「ふーん……近くに池はあるかい?」

 魔物スライトの言葉を受けて、リーナさんはうーんと考え込む。

「どうだったかしら……それって重要?」

「ああ」

 クラウディオは頷く。

「分かった。その辺りの地形を調べてみるわ。ちょっと待ってて!」

 そう言うと、彼女は宿を飛び出していった。

 

 しばらくして戻って来たリーナは、手に大きな丸めた紙を持っていた。

「これ見て! 確かに池があるわ」

 テーブルの上に広げられた紙は、詳細な地形が記してある地図だった。

「それから、ちょっと気になる事を聞いたんだけど……この辺りには少しだけど、貧しい人々が住んでいたらしいの。でも、ここ一か月程前からいなくなっちゃったらしいのよ。でも、家も職もない人たちでしょ? 誰も捜索願を出さなかったんだって」

「あー……やばいね、それは」

 大食いの魔物、ボレシャスとグラトナス……

 行方不明のフィアリーズと町の人々……


「次の調査場所が決まったな。早速向かう事にする」

「「「「「はい!」」」」」

 私たちは勢いよく椅子から立ち上がった。



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