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異世界で戦闘玩具職人に任命されました  作者: 夏野あさがお
第二章
63/127

3. 捜索初日の夜


 町に戻って来た私達は、リーナさんおすすめの宿へ入った。


 こじんまりとした佇まいで、1階は受付と食堂。2階が宿泊部屋になっていた。この世界の宿屋によくある作りだ。

 中を見回すと、素朴で洒落っ気はないが、隅々まで掃除がされていて好感がもてる。


 私は一人部屋がもらえた。他の騎士達は2人と3人に分かれて部屋に入った。

 ミントは宿屋には入れてもらえなかったので、他の馬と一緒に馬小屋に泊まってもらう。大らかな性格の彼は、別に気にしてなさそうだ。

 ミントだけいつも苦労してるなぁ。なんだか申し訳ない。


 夕食の時間になり、私は1階へと降りた。

 騎士の4人は、すでにテーブルについていて、食事が運ばれてくるのを今か今かと待ち構えている。


「あれ? クラウディオさんはいないんですか?」

 キョロキョロと食堂内を見回す私に、騎士達は複雑な笑みを浮かべた。

「ああ、ちょっと他で食べてくるみたいだ」

 ホレスが、言いにくそうに答えた。

「あ、そっか! リーナさんとですね! 久しぶりの再会っぽいから、積もる話もあるんでしょうね」

 笑顔で言う私に、フリッツが驚いた顔をした。

「余裕だなぁ」


 え、なにが?

 どういう意味?


 問いただそうとした私だったが、そこへ美味しそうな匂いが漂ってきた。女将さんが私たちのテーブルへと料理を運んでくるのが見える。

「あ! 来ましたね!」

 もう私の目は、運ばれてきたお皿に釘付けだ。

「ここいらは海に面してるからね。魚はどれも新鮮だよ」

 女将さんが次々と並べていく数々の魚料理を前に、私を含む騎士達一行はご機嫌に食事を始めた。



「大人の雰囲気……。僕はこういう所、苦手だなぁ……」

 マークはクラウディオの後をつけて、町の中心部の、ムーディーな一角へと来ていた。

 彼はリーナと連れ立って、趣のある酒場へ入って行く。

 カウンターの端に並んで座った二人は、注文した酒を受け取ると、グラスを合わせる。

 口を付けた二人は、早速、言葉を交わし始めた。


「冒険者を始めてずいぶん経つけど、こんな経験は初めてよ。あなたの事もあるけど、あの女の子の事も」

 リーナは首を傾け、横目でクラウディオの顔を伺う。

「あいつの事は、他言無用で頼む。詳しくは言えないんだが、特殊な能力があってな。騎士団で保護している」

 クラウディオはグラスを揺らしながら、それを見つめている。

「あなたが目を見て話さない時は嘘をついているか、何か隠し事がある時」

「カタリーナ!?」

 ギクッと肩を震わせてリーナを見たクラウディオを、リーナはくすくすと笑う。

「ごめんなさい。もう聞かないわ。でも、私はリーナ。昔の名前はもう捨てたのよ」 

「何があったんだ?」

「別に何も。ただ、大人しく屋敷に引きこもってるのが耐えられなかっただけ。……心配しないで、もちろん王もご存じよ」

 リーナはそう言うと、グラスの酒を一気に(あお)る。

「ふう。それにしても……ふふ、嬉しいわ! こうしてまたあなたに会えるなんて。ねえ、運命を感じちゃわない?」

「運命か……。以前は考えたこともなかったが、確かにそういうものも、あるのかもしれない」

 クラウディオはグラスの中身を一口飲むと、何かを思い出すように遠くを見つめた。



 ----------



 魚料理を満喫した私たちは、暫しそのまま休憩していた。

 はあ……満腹、満腹!


「カタリーナ……カタリーナ……」

 隣でブツブツと呟くホレスを、フリッツは不審な目で見た。

「さっきから、何ブツブツ言ってるんですか? 気持ち悪いんですけど」

「いやあ、魔導士様がさ、リーナさんを見た時、確かそう言ってたと思うんだが、どっかで聞いたことある名前だなぁと思ってな。あー思い出せん!」

 ホレスは、頭をガシガシと掻いた。

「へえ、お知合いですか?」

 ロイも興味あり気に尋ねる。

「いや、会ったことはないんだが……確かにどこかで……ん? あ、そうだ!!」

 ホレスは急に大声を出した。


「な、なんですか!?」

 目を丸くする私達に、ホレスはご機嫌な様子で膝を叩く。

「思い出したよ! 彼女は魔導士様の許嫁だ!……いや、許嫁だった、だ。」

「え!? そうなんですか!?」

 またまた驚く私達。

 ホレスは声を潜め、私達に顔を近づける。

「確かな、彼女の父親があのビンデバルト公爵だ」

「え!? あの、不正が発覚して捕らえられた!?」

 バシン!!

 声を上げたロイの頭をホレスとフリッツが張り倒す。

「馬鹿! 声が大きい!!」

 ロイは頭を抱えた。涙目になっている。

「彼女はあの事件の後、爵位を失ったと聞いていたが……」

「平民になって冒険者をやってるってわけか。貴族のご令嬢から冒険者って、すごいな」

 フリッツが感心したように顎を撫でた。


 クラウディオさんが婚約していたなんて初耳だ。

 犯罪者の娘っていうと、やっぱり上手くいかなかったのかなぁ。

 好き同士だったなら、なんだか可哀そう……

「今からでも、上手くいかないんでしょうか。まだお互い好きかもしれないのに……」

 そう言った私の顔を、みんながバッと一斉に見た。

 え!? なに!?

 びっくりしてみんなの顔をみつめ返す。

「これって、もしかしたらスイは知らないんじゃ……」

「なんですか!?」

「う~ん、俺たちの口からは何も言えん」

 騎士のみんなは席を立ち、気まずそうに部屋へと帰っていく。

「え? なんで!?」

 不安になって声を掛けると、振り向いたアルフレッドが申し訳なさそうに眉を下げた。

「ごめん。魔導士様から直接聞いた方がいいと思うんだ」

 私の頭をポンポンと叩くと行ってしまった。


 なんなんだよー!!

 


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