表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界で戦闘玩具職人に任命されました  作者: 夏野あさがお
第一章
46/127

46. 王都へ帰還


「おはよう、スイ! 今日もいい朝だね!」


 いつもの如く、朝の挨拶をしながら飛んで現れたマークだったが、珍しいことに、粋華はまだ夢の中だった。

「あれ? まだ寝てるの?」

 マークは気持ちよさそうに寝息を立てている粋華の頭の上に降りた。

『よっぽどお疲れでしたのね』

 とっくに起きているマリアとライディは、粋華を起こそうかと思案していた。


 その時、ノックをして、「おーい、入るぞー」と、アルフレッドが扉を開けた。

「おい、スイ。まだ寝てるのか?もうすぐ出発するぞ」

 声を掛けても一向に起きる気配がない。

「ほら! 起きろって!」

 アルフレッドは掛布団をはいで、粋華の体を強引に起こす。頭がぐらんぐらんと揺れる。


 そこまでされて、やっと粋華は目を覚ました。

「え!? なんで!?」

 アルフレッドの呆れた顔が目の前にある。

「やっと、起きたか。早く支度しろよ。置いてくぞ!」

 笑いながら粋華の寝ぐせのついた頭をわしゃわしゃと撫でると、部屋を出て行った。


「う、うそ……、寝起きを見られた……!」

 粋華は乙女心にダメージを受けた。



 王立騎士団討伐部隊は村人に別れを告げると、王都に向け出発した。


 はぁー……

 私は今日何度目かのため息をついた。

『なんやスイ、まだ凹んどるんか』

「だって、ライディ達が起こしてくれてれば、こんな事にならなかったのに……」

 私は、ぼそぼそと不満を言う。

『いつまでも、いじいじすな! ぼさぼさ頭見られたくらい気にすんな!』

「そんな大きな声で言わないでよ!」

 アルフに聞こえちゃうでしょ!

『ライディ様、乙女にはいろいろ悩みがあるのです。今はそっとしておく場面ですわよ』

 マリアさんの生暖かい目が痛い(涙


 マウエ村から去る一行を、ひっそりと見つめる一匹のクモは、真っ黒の鳥に姿を変えると、静かに羽ばたき、後を追った。



「あー、やっと帰ってきたね」

 帰りは何事もなく馬をとばし、王都に帰り着いた。

 本来なら町の人々から歓声で迎えられるのだが、出発時と同様に裏門から隠れて入る。

「なんか、すいません。私達がいるせいで、町の人たちにせっかくの手柄をお知らせ出来ないですね」

 申し訳なくて騎士達に謝る。

「スイは慎み深いんだな。そんな事で謝る必要ないさ」

 みんな気にしてないと笑う。


 うーん、日本人だからかな。すぐ謝っちゃうんだよね。

 討伐部隊の騎士たちは、みんないい人たちだなぁ。

 胸をジーンとさせていると、


「気にしてるのは、ロイくらいだよな!」

 ロイさんはムッとして、発言したフリッツさんを見ている。

 そういえばロイさんだけは、女の子にキャーキャー言われて喜んでいたっけ。


 帰って来た私達を、お城の人たちが迎えてくれる。

 あ、ハインリッヒさん! ベット!

 無事帰ってきたよー!


 二人の元へ行こうと歩き出すと……

 奥からドレスを翻しながら、髪の長い女性がすごいスピードで走ってきた。

 もう、はしたないなぁ……って、王女様!?

 その後ろから、慌てた様子で侍女のサリーさんも続く。


「スイ! 無事でよかったですわ!」

 王女様は私に飛びついて、ぎゅうっと抱きしめてきた。

「は、はい! 無事、帰ってきました!」

 王女様は嬉しそうに頷くと、

「さあ、早速話を聞かせてちょうだい」

 私の耳元でニヤリと笑う。

 

 ああ、うん。

 王女様の頭の中は、その事でいっぱいなんだね。

 でも生憎、報告出来るような話がないんだな、これが。

「すいません、失敗しました」

 頭を下げ、上目遣いで二人を見た。

「サリーさんにも、せっかく手伝ってもらったのに、申し訳ありません……」

 さらに深く頭を下げた。


「え……なんで? もうちょっと詳しく!」

 詰め寄る王女をクラウディオが止めた。

「すみません、エミーリア王女。我々はこれから王へ報告に行かねばなりません。この辺りで失礼します」

「あっ! まあ、クラウディオ様、ご無事で良かったですわ!」

 エミーリア王女は、突然目の前に現れたクラウディオにハッと驚くと、喜びの声を上げた。


 んん?

 前にも感じたことあったな、この違和感。

 普通、真っ先に行くのは好きな人の所だよね。

 なんで最初に私の所に来たんだろう……?


 ぼんやりとそんな事を考えていたら、

「おい、お前もついて来い!」

 クラウディオは私を振り返り待っている。


 ええ!?

 また、あの王様に会うの?

 ベットとハインリッヒさんに実は腹黒王だと教えてもらってから、もう会いたくないなと思ってたのに……

 

「スイさん! 無事の帰還おめでとう!」

 ベットは笑顔で、顔に飛びついてきた。

「ご無事でよろしゅうございました」

 にこにこと笑うハインリッヒさんにホッとする。

 と、ベットが「えっ!?」と、私の足元に驚く。

「まさか、この子達って……」

 私にすり寄る子犬達を見ている。


 あ! ベットには、ばれちゃった?


「あのー……王の所には連れて行かない方がいいですよね?」

「ああ、うん、そうね」

 ベットが複雑な顔で答える。

「少し預かっといてください」

 ジッと子犬達を見て固まるベット。

 ハインリッヒさんは、

「これは、かわいい子犬達ですね。お任せください」

と、快く了承してくれた。

「いい子にしててね」

 キャン、キャンと機嫌よくじゃれ合っている子犬を残し、重い足取りでみんなの後に続いた。


「王都に入っていった。俺はここから先は入れない」

 真っ黒い鳥は、粋華たちが入った裏門をジッと見つめていた。

 王都の周りには、魔物の侵入を防ぐため、町を覆う様に結界が張り巡らされている。無理に突破しようとすれば、人間に見つかってしまう。

「魔王に知らせに行くか」

 そう呟いた黒い鳥は、北へ向かって飛び去った。



 討伐部隊の面々とフィアリーズの仲間たちは、王の待つ謁見室に入る。


「魔獣討伐、完了いたしました。マウエ村の住人の無事も確認できました」

 騎士たちは一斉に頭を下げる。私も慌てて皆に習う。

「よくやってくれた。ご苦労だったな」

 王は、美しい顔でにっこりと微笑む。


「ところで粋華」

 えっ! 私?

「は、はい!」

「王都に来てから、またフィアリーズを仲間にしたそうだな。紹介してくれるかな?」

 微笑んだ王の顔が、なぜか少し怖い……?

「あ、はい。ミントとシェルです!」

 私は、横に並ぶミントと、その背に乗っているシェルを紹介する。

『僕、ミント』

『俺はシェル。よろしく王様』

 

 二人のやる気のない挨拶にも、王は嫌な顔をせず、それどころかニコニコしながら見ている……ように見える。

「よろしくな、ミントにシェル。こうしてフィアリーズが国の為に協力してくれるとは、頼もしいことだ」

 そう言った王様の笑顔に、なぜか負のオーラが漂っている気がするのは、私の気のせいか!?


「いつも通り、お前たちには明日から3日間の休暇をやろう」

 王は私を見ると、

「粋華、お前にも、もちろん休暇をやる。ゆっくり休むがよい。それと、今回の任務の手当てもやろう。町で必要なものを揃えるといいだろう」

 

 え、それって……

 町に行って、お買い物できるってこと?


 王はなぜかクラウディオを見て微笑む。

 クラウディオは小さくため息をついた。


 王との謁見を終え、部屋から出た私は、ルンルンと軽い足取りだ。

「あのー……もしかして私、町に行けるんですか!?」

 騎士のみんなに尋ねる。

「そうみたいだな。スイはもちろん初めてだろ?」

 ホレスさんの言葉に、

「はい! ずっと町を見てみたかったんです!」


 だって、王都に来てから、ずっと城に軟禁状態だったんだよ!?

 まあ、この世界のお金もないし、土地勘もないから出れなかったんだけどね。

 最初に見たアソイツ村と違って、おしゃれなお店もたくさんあるみたいだったし、うーん、楽しみー!


「お前一人では当然城から出れんぞ。町のことは何も分からんだろう」

 クラウディオさんが厳しい目を私に向ける。

「明日の朝、用意して待っていろ」

 

 むっ、お目付け役か?


「えっ!? 魔導士様が付き添うんですか!?」

 フリッツさんが驚きの声を上げる。

「わざわざ魔導士様が出向かなくても、俺が行きますよ」

 アルフレッドが優しい笑顔で頷く。

「いや、しかし……」

クラウディオは、ごにょごにょと言い淀む。 


「アルフ、いいの?」

 せっかくの休みだし、何かしたいことあるんじゃないかなぁ。

「ああ、大丈夫だ。いろいろ美味い店もあるし、案内してやるよ」

 胸を叩いて、任せろとアピールする。


 アルフと一緒なら楽しいだろうなぁ……

 うふふっ、わくわくする!


「アルフがこう言ってくれてることですし、クラウディオさんは来なくてけっこうです」

 笑顔で告げた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ