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異世界で戦闘玩具職人に任命されました  作者: 夏野あさがお
第一章
40/127

40. マウエ村へ


 えっと……これは、どうしたらいいんだろう……?


「こ、これが食べたいの?」


 オオカミはこちらの言っていることが分かるようで、首を縦に振り、嬉しそうに尻尾をぶんぶんと振った。


 急に素直になっちゃったよ!?

 まさか、マドレーヌ効果!?

 でも、この子を退治しないといけないんだよね……?


 私は困ってマークを見た。……が、マークは目を逸らした。

 逃げたなっ。

 仕方なくクラウディオさんを見ると、難しい顔と目が合う。


「魔獣の殲滅が王からの指令だ。……仕方ないだろう」


 そう言って、バシリーさんをちらっと見た。バシリーさんの手前、見逃すことは出来ないと考えたんだろう。

 ところが……


「あなたは鬼ですか!?」


 バシリーはクラウディオに軽蔑の眼を向ける。

「こんなにかわいい子を殺そうって言うんですか!?」

 そう言ってオオカミに近づき、ム〇ゴロウさんのように、よーし、よーしと手を出した。


 え!? 危なくない!?


 そう思った私の予想を覆し、オオカミは大人しくバシリーさんに撫でられている。オオカミを撫でるバシリーさんはとても嬉しそうだ。意外にも動物好きらしい。

「目を見れば分かります。この子はもう、私達に敵意はありません。なんて、可愛いんでしょう!」

 バシリーさんは私には絶対見せない良い笑顔で、オオカミを撫でまわしている。


 ボスと思われるオオカミに全員出てこさせるように言うと、隠れていた2頭も素直に出てきた。

 ボスに習い、行儀よくお座りをしている。ボスの命令は絶対のようだ。

 見比べてみると、オオカミのボスは、やはり他の2頭よりも大きく強そうだ。それに毛並みの色も違っている。他のオオカミ達は薄茶色だが、ボスだけは綺麗な銀色の毛並みで、ふっさふさだ。

 私もちょっと触ってみたいなぁ。

 あれ? よく見れば角が2本だ!


 3頭のオオカミを前に、

「二度と人間や、その積み荷を襲わないというなら見逃します。もし、また人間に危害を加えることがあれば、今度は容赦せずやっつけますからね!」

 そう言い聞かせると、オオカミ達は大人しく首を縦に振った。

 3つに分けたマドレーヌを地面に置くと、オオカミ達は嬉しそうに食べた。


「これで大丈夫だと思う?」

 私は困り顔でマークに尋ねた。

「魔獣は基本、嘘はつかない単純な生き物だから、大丈夫だと思うよ。念のため何かあったら知らせるように、この辺りにいるフィアリーズに頼んでおくよ!」

 なんて頼もしい! それなら安心だね。やっぱりフィアリーズってすごいんだな。


「王には、私から上手く報告しておきましょう。あなた達は、まだ村人の安否確認が残っていますよね。私はこの辺りで、影に戻ります。では、また」

 バシリーは、そう言い残し、私達の前から姿を消した。



 粋華とクラウディオに続き、ぞろぞろと巣穴から出来てきた3頭のオオカミに、騎士のみんなは目を丸くして驚いた。

 クラウディオは騎士達に事情を説明した。

「では、急いでマウエ村に向かう。日が沈むまでには辿り着けるだろう」

 先程はずれた道に戻り、村へ続く道を馬で登る。



「あの……、魔導士様。いいのでしょうか……?」

 ホレスが弱った顔で、後ろを振り向く。

 魔導士クラウディオはそれを見て、難しい顔で私を睨む。

 うっ……私だって知らないですよ!

 どうしてこんな事になってるの!?

 最後尾にいる私に寄り添うように、オオカミ達3頭がピッタリついてくる。


「おい、何とかしろ」

 クラウディオが馬を寄せ、小声で言ってくる。

「このままでは村には入れん。村人を怯えさせてしまうからな」

 ええ、分かってますよ。

 まったく、その通りですね。

 私は何度目か分からないが、オオカミ達に向かって、

「ついて来ないでください! 巣穴に戻って!!」

 睨みつけながら、厳しく言い放つ。

 オオカミ達は、クゥーン……と悲しそうに頭を下げた。

「分かりましたね! では、ここでお別れです!」

 私は前へ向き直ると、オオカミ達をその場に残し、先へと進む。


 そうっと後ろを振り向くと、少し後ろを頭を下げたままで、まだついて来ている。

「うう……無理です。どうしてもついて来てしまいます!」

 なんだか健気で可愛くなってきちゃってよ。どうしよう……


 クラウディオは、はぁーっとため息をつくと、

「こうなったら、お前だけ村の外で野宿だな」

と、冷たい声で言った。


 ええー!?

 ヒドイ……!

 みんなは村のベッドで寝て、私だけ外の地面の上ですか!?


 私は心を鬼にして、オオカミ達に向かって叫ぶ。

「ここから先は駄目です! こんな大きなオオカミを連れてはいけません! 村人が怖がってしまいます!」


 オオカミは目を大きく見開いて私を見た。

 うう……ごめんって、仕方ないんだよ……


 オオカミは何故かうんうん頷くと、3頭が顔を合わせ集中しだした。

 え、なに!? ちょっと厳しく言いすぎちゃったのかな!?

「何だろう、魔力を高めてるよ!」

 マークもジッとその様子を、興味深そうに見つめる。


 ふわっと、光に包まれたと思ったら、3頭の姿が消えた!

 

「キャン、キャン!」


 可愛い鳴き声が聞こえて足元を見ると、コロコロとした子犬が3匹、嬉しそうに尻尾を振っていた。

「えっ!? まさか……?」

 私は子犬を一匹抱き上げて、よく見てみる。

 綺麗な銀色の毛並みの子犬だ。

「すごいね……こんな事も出来るんだ!」

 マークが驚いて子犬達を見ている。

「まさか……こんなのは聞いた事がない……!」

 クラウディオも信じられないという顔をしている。


 ふーん……よっぽど珍しい事なんだね。

 まあ、だいたい野生の魔獣が、わざわざ弱い姿に変身する必要ないもんね。だから、もしかしたら、そんな能力があっても知られていないだけかもしれない。

 腕に抱いた銀色の毛並みを撫でながら、絶対に村の中では変身を解かないように言い聞かせ、オオカミ達も連れて行くことになった。


 日が沈みかけた頃、私達はマウエ村に到着した。 



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