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異世界で戦闘玩具職人に任命されました  作者: 夏野あさがお
第一章
32/127

32. ライディとの特訓の続き


「す……すごいんだね、ライディは……!」


『そやな! ま、ちょっと本気を出せば、こんなもんや!』


 ライディはエヘンと得意そうに答える。


「こんなすごかったら、魔物なんて簡単に倒せちゃうんじゃない?」


 もう訓練なんて必要ないね!


「いや、この世界の魔物を侮るな。このくらいやってのける魔獣も、うようよいるぞ。魔力の強い魔物には近づくことも難しいだろう。近づく前に魔法をくらう」


 クラウディオは厳しい目で私を見る。

 

 え?

 このくらい出来て当然のレベルなの!?

 そんな恐ろしい世界にきちゃったんだ……

 私は真っ二つに切られた木を見て、気持ちが沈む。

 この木が明日は我が身かぁ……


『よっしゃ! 今度は魔法の特訓や! ドカーンとやるでー!』


 そっか、ライディは魔法も使えるもんね!

 確かに訓練は必要かもしれない。

 近づけない敵には魔法が有効だ。


「……ところでライディ、魔法はこの前と同じ、雷魔法?」


『そうや! ワイはそれしか出来んからな!』


 えっと、ちょっと待てよ?

 この前は私までくらったんですけど!?

 また二の舞になるんじゃ……?


『それ、雷魔法やー!』


 ライディの掛け声と共に眩しい光に包まれる。

 ドガガーーン!!

 轟音を聞きながら、目の前が真っ暗になった。



 ----------



 目を開けると、心配そうに見つめる騎士たちと目が合った。


 はい、本日二度目ですね!

 私は先程に続き、また意識を失っていたようだ。 

 ゆっくりと体を起こすと、そこは訓練場ではなく、昨日、昼食を作って食べた小屋だった。


「ああ、良かった。やっと目が覚めたな。全然起きないから、ここまで運んできたんだ。もう昼飯作ったから食べようぜ」


 アルフレッドが明るく言った。


 ええっ、もう昼!?

 私は結構長い間、眠ってしまっていたらしい。

 私はキョロキョロと辺りを探す。

 どーこーだー……?


「スイ、ライディならあそこだよ」


 マークが指さした。


 見ると、小屋の隅の薄暗い所に、ポツンと置かれた剣が。

 そこか……


「ラ、イ、ディ……?」


 私は低い声で名を呼び、剣に近づく。


『ワーーーーー!! すまんかった、すまんかった! 悪気はないんや!』


「前もそんな事言ってましたよねぇ……?」


『でも、今日はこの前よりは威力を抑えたつもりやったんや! そやから大丈夫やと思ったんやけど……』


 ライディの声は、だんだん小さくなる。

 反省はしているようだ。


「はぁ……分かりました。もう、いいですよ」


 これ以上責めても仕方ないか……

 私は渋々許した。


「しかし……、困ったね。これでは魔法は使えなそうだね」


 アルフレッドは心配そうに私たちを見た。


 本当だよ。

 どうしよう……


 とりあえず心配事は後回しにして、私はみんなの作ってくれた昼食を頂く。

 もぐもぐもぐ。うん、美味しい!

 あー……生き返るー!


「スイのそういう図太いとこ、凄いと思う」


 マークは呆れたような顔で私を見ている。


 うん、気にしない。



 ふと、騒ぎ声に気が付いてそちらを見ると、先に食べ終わった騎士たちが仔馬のミントを囲んでいる。


「なあなあスイ! ちょっと俺も乗ってみたいんだけど、駄目かな?」


 ロイさんがこちらをチラチラ伺っている。

 みなさん、空飛ぶ仔馬に興味深々のようだ。


「ええ、ミントがいいっていうなら、いいですよ」

 

 私の言葉にミントは、


『うん、いいよー。乗せてあげる』

 

 のんびりとした口調でロイさんに頷いた。


「おい、お前大丈夫か? また無茶するなよ」


 ホレスさんが心配している。

 確かに、ロイさんは見ていていつも心配だ。


「大丈夫ですって。よろしくお願いします、ミント様!」


 ロイさんは元気よく言うと、ミントを連れていそいそと外へ出る。

 私も心配になってきて、いそいで昼食をかきこむと、二人を追って外へと出た。


 ロイさんが恐る恐るミントに跨ると、ミントはゆっくりと羽をはばたかせる。

 10センチほど宙に浮かんだ。


『あれ? なんかおかしいなぁ』


 ロイさんを乗せたミントは、フワフワとゆっくりと歩く速度で前に進んだ。


「ミント様、もう少し早くても大丈夫ですよ」


 ロイさんが声を掛ける。


『うん、でも無理。これ以上早く飛べない』


 ミントはそのままのスピードで小屋の周りをのろのろと回ると、私達の前で止まった。


「ミント、大丈夫? どっか調子悪いの?」


 さっき、無理させちゃったのかも……?

 私が心配して声を掛けると、


『ううん、大丈夫。ただねぇ、力が全然出ないの』


「力が……?」


 うーん……どうして力が?

 何も思い当たる節がない。


「スイが乗ってないからじゃないか?」


 アルフレッドが言った。


「スイと一緒に乗ったらどうだろう」


 ミントに声を掛け、アルフレッドがミントに跨る。

 私を手招きして、前に座るように促す。


「ほら、スイは俺の前に乗って」


 ミントは私が一人で乗るように作ったので、背中はそんなに大きくない。

 私は狭い隙間に何とか座った。

 背中にピッタリと当たるアルフレッドの体。彼の体温を感じる。

 もうっ、王女様が変なこと言うから、意識しちゃうじゃないかー!

 私は、カッカと顔が熱くなってくる。

 みんなにばれない様に俯いた。


『あ、これならいけそう』


 ミントはそう言うと、羽を広げて宙に浮かぶ。

 フワリと屋根までの高さまで上がると、小屋の周りをくるくると飛び回った。

 ロイさんを乗せた時とは比べ物にならないくらい軽やかに。

 そしてまた、みんなの前に着地する。


「やっぱりな! その剣もそうだけど、スイが魔力を与えてるんじゃないかと思ったんだ」


 私の耳元でアルフレッドはそう言って笑った。

 耳に彼の息がかかり、体が思わずビクッと震える。

 ひぇーーー!!

 もう、止めてほしい……。

 全身が熱くなって、汗をかき始めた。

 そこを目ざとくマークが気付いた。


「あれ? スイ大丈夫? 何か顔が赤い……」


 マークが言い終わる前に、私はビュンと素早くミントから降りる。


「ミント、調子が悪いわけじゃなくて良かった! 本当だね、アルフ! 私が乗ったら大丈夫だったね!」


 早口で言って、何とか誤魔化した。

 ふう……

 王女様だけじゃなく、みんなにまで冷やかされたら、たまったもんじゃないからね。

 なんとか誤魔化せて、私はホッと胸を撫で下ろした。

 

 ん?

 視線を感じてそちらを見ると、マリアさんが生暖かい目で私を見ていた。



挿絵(By みてみん)

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