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異世界で戦闘玩具職人に任命されました  作者: 夏野あさがお
第一章
3/127

3. フィアリーズのマーク

 挿絵を差し替えました。


「うふふっ、幻じゃないよー!」


 目の前の妖精さんらしき男の子がにっこりと微笑んだ。


「初めまして、僕はアソシエ地方一帯の王、マーク・ベルだよ! よろしくね! 異世界からのお客人!」


「……え? 今なんて?」


「うん? 僕はアソシエ地方の王だよ!」


「あ、その次」


「マーク・ベルだよ!」


「…………」


 あ、やっぱそうなんだ。

 ふーん、マークベル……ベルマーク。


「……何か思ったのと違う反応だね。いきなりこの世界に来てしまった君は、不安でいっぱいだと思ってたけど、けっこう平気そうだね!」


 よかったぁと、またにっこり。


「あのー……、これが現実だとして、ちょっと聞いてもいいですか?」


「うんっ! 何でも聞いて!」


「さっき、異世界って言ってたんですが、ここは異世界なんですか?」


「君から見たら、ここが異世界だね! ここは、エアラーク大陸にあるエアールという国のアソシエ地方にある、アソイツ村だ!」


 いっぱい地名が出てきたぞ。

 とても覚えきれん。


「えっと……ここは、地球という星じゃないんですか?」


「うんっ! この星に名前はないよ! まだ誰も名前を付けてないからね!」


 私はガックリと地面に両手をついた。

 日本じゃないどころか、地球でもなかったとは!!


「大丈夫? ショックかもしれないけど安心して! これからは僕がついてるからね! 何でも助けてあげる。ふふっ、僕と一緒なら言葉も心配しなくていいよ!」


「そうだ! 言葉! 妖精さんは日本語が解るの?」


「日本語? 君の言葉のことかな? 僕たちは言葉を喋っているわけじゃないんだよ。魔法で会話してるんだ。僕の魔法は会話が出来るんだよ!」


「へえ……、さすが妖精さん。魔法が使えるんだね」


 さすが異世界!

 魔法があるんだ!


「ねぇ、ヨウセイサンって僕のこと? 君たちの世界ではそう言うの? 僕たちはこの世界を作ってる神様みたいなものだよ。この世界のすべてに僕たちがいる。人間たちは僕らのことを“フィアリーズ”と呼んでるよ!」


「フェアリーズ?」


()()()()()()!」


 訂正された。


「君のことを教えてくれたのも、ここにいるフィアリーズだよ! フィアリーズはどこにでもいるからね。僕たちに分からないことなんて、何もないのさ!」


「え? ここにもいるの?」


 私は周りを見渡した。

 あれ?

 ちょっと前に聞こえた声って、そのフィアリーズの声?

 目の前の男の子はクスクスと笑う。


「力の弱いフィアリーズは、君でも見ることは出来ないみたいだね」


 目に見えないフィアリーズがここにいるの?


「それから、僕のことはマークって呼んでね! それで、君のことは何て呼べばいい?」


「あっ。私の名前は丸井粋華(まるいすいか)。“スイ”って呼んで!」


 友達たちには、みんなにこう呼んでもらっている。

 また会えるんだろうか……みんな……


「わかった! よろしくね、スイ!」


「うん! よろしく、マーク!」


 私は握手をしようと、手を差し出した。

 フィアリーズのマークはふわふわと飛んで、私の人差し指を両手で掴んだ。


「わぁ! ホントに触れるんだ! ビックリ!!」


 マークが叫んだ。

 え? 私も驚いたけど、マークがビックリ?


「触れてビックリ?」


 私の疑問に、マークは複雑な笑顔で言った。


「そう、この世界の人間はフィアリーズには触れることは出来ないんだよ。それどころか見ることも声を聴くことさえも出来ない。こちらからは全部見えてるのにね。

 ごく稀に、魔力が強くフィアリーズとの相性がとてもいい人間は僕らが見えるみたいだよ。まだそんな人間に僕は会ったことがないけどね!」


「えーっ!? 他の人には見えないってこと? それでどうやって助けてくれるの!?」


 私は言った後、ハッと気づいた。

 まず、一番の願いを口にしてみる。


「そうだ! 元の世界に帰ることは出来る!?」


 マークはますます微妙な笑顔になって、申し訳なさそうに言った。


「ごめんね。さすがに僕たちでも君を返すことはむつかしいと思う。僕の強大な魔力をもってしても、あの空間の切れ目を作り出すのは無理っぽい」


 てへっと可愛く片目をつぶった。


 空間の切れ目……

 あの涼しい風はこちらの世界から流れてきてたのか?

 もしかして私は、まんまと自分からこちらの世界に入ってきてしまった!?


「……無理っぽい……」


 マークの言った言葉を繰り返してつぶやいてみた。

 マーク曰く、この世界の神様のような力を持っている彼でさえ、無理っぽい……

 元の世界に帰るのは無理なの……?

 衝撃にしばらくじっと地面を見ていた。

 そして、お腹がクゥーとなった。


 ……とりあえず、もとの世界に帰るのは後回しにして、今現在の問題をどうにかしなければ!!


「じゃあまず、ここから出たいんだけど、出してくれる?」


 マークに頼んでみた。


「今は出来ない」


 マークはニッコリ微笑んだ。


「え?……それも無理なの!?」


 あれれ? 何だか雲行きが怪しくなってきたぞ……?

 マークは自分は神様みたいにすごいって言ってたけど、どうやら言うほど大したもんではないらしい。


「ちょっと!! 今、失礼なこと思ったでしょ! まあ、僕の力をもってすれば、本当はこんな所から出るのは容易いけどね。でも、今は大人しくしてたほうがいいの! ここの世界の人間たちと仲良くしたければね!」


 何かわかんないけど、マークには考えがあるらしい。

 私は、はぁーとため息をつく。


「そうなんだ……。じゃあさ、私、お腹ペコペコなんだよね。何か食べ物くれないかな?」


「フィアリーズは食べなくても平気なんだ! だから何も持ってないよ!」


「え!? だったら何か探してきてくれないかな? お願い!」


 マークは私の声が聞こえていないかのように、大きなあくびをしながら伸びをした。


「あー……もう僕、おやすみの時間だ……。早く寝ないと動けなくなっちゃう……スイ、また明日ね~」


 マークはふわふわと漂いながら背中を向けた。


「はぁ!? ちょっと待って! まだ聞きたいことが! ちょっとマーク!!」


 この展開でいきなりの退場!?

 私は大声をあげて引き留めようとしたけれど、マークはそれを全く無視して、壁をすり抜けて飛び去ってしまった。


「マークー! 戻ってきてー! カムバーーック!!」


「※※※※※※※※※※!!!」


 外の見張りが私の大声になにやら怒鳴り返してきた。

 あっ、少し涙が……



挿絵(By みてみん)



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