29. 新しい仲間は…
なんとか王女様から解放された私は、部屋のソファーにぐったりと、もたれて座った。
「あれ? さっきよりさらに疲れてない? 王女様とお茶してきたんでしょ?」
マークがのんきな声で聞いてきた。
「うん、お茶は……あれは紅茶だったな。美味しかった。それに、出されたお菓子も美味しかったよ。いろんな種類のクッキーがあってね。こっちの世界も同じようなお菓子があるんだねぇ。まあ……ここが王宮だから、特別なのかもしれないけど」
あれから王女様の追及は続き、ついには私とアルフレッドの仲を深めるための作戦会議なるものまでしてきた。
勧められるまま、目の前にあった紅茶を何杯もがぶ飲みし、お菓子もたらふく食べてきた。
自分とクラウディオさんの仲を取り持ってほしいという王女の企みも確かにあるだろうが、純粋に私の為を思ってしてくれているようでもあるので、強く断りにくいのだ。
これからの事を思うと気が重くなる。
本当にあの作戦やるの!?
また新たな悩みが出来てしまった……
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次の日の早朝、まだフィアリーズが眠る部屋で目が覚めた私は、体の異変を感じ思わず叫んだ。
「グワーーーーー!!」
『どうしたんや! スイ!!』
「ううう、ライディ……痛いよ、筋肉痛……」
『あほか! 人騒がせな声出すな!』
『もう、スイ様ったら! 寝不足はお肌の大敵ですのよ! 私はもう少し寝てますわね!』
いつも優しいマリアさんにまで怒られた。
……凹む。
そう言っていたマリアさんだったが、それからしばらくして起きた時には、回復魔法をかけてくれた。
「ありがとう、マリアさん。楽になったよ……」
『うふふ、お役に立ててよかったですわ。今日も訓練ですのよね。頑張ってくださいませね』
マリアさんの言葉に、「ふふふ、その点については、私に考えがあるんだよね」と、私は黒い笑みを見せる。
『あら? スイ様。何やら悪い顔をしてらっしゃいますわ』
「おはよう、スイ! 今日もいい朝だね!」
いつもの如く、マークがやってきた。
よしっ!
これで、メイドさんと会話が出来る。マークが来るまで人と話が出来ないのは不便だが、まぁ、いつもの事か。
私は食事の用意をしに来てくれたメイドさんに、あるものを頼んだ。
メイドさんは私が朝食を食べている間に、頼んだものを持ってきてくれた。
私は急いで作業に取り掛かる。
フィアリーズの三人は一体何が始まるのかと、不思議そうに見守っている。
今回のポイントは、まずスピード、そしてパワー、一番大事なのが安全性!
思いを込めながら作り続ける。
「出来た!」
急いで作った割には良くできたんじゃないかな?
メイドさんに持ってきてもらった材料は、藁とロープと粘土だ。
中心には藁をロープで束ねて形を作り、表面を粘土で整えて、大型犬より、少し大きいくらいの馬を作った。……といっても、大きさ的にはミニチュアポニーといったところか。
しかし、なんと、その背中には羽が生えているのだ。空飛ぶ仔馬だ!
ああ、上手くいくかなぁ……
私はワクワクしながら見守る。
「ねぇ、スイ。角は?」
『角がないのは、おかしいやろ!』
『まあ、スイ様ったら。角を付け忘れてしまったのですわね』
!?
えー?
角って、絶対つけなきゃいけないものなの?
いやいや、私の作るものは私の世界の方式でいきたい!
私は三人に、私の世界の動物には角がないという事実を力説する。
『まあまあ! スイ様の世界には角のない動物がいるんですの!?』
「もちろん角があるのもいるんだけど、馬には角はないんだよ。だから、これでいいの!」
ああ、フィアリーズの誰か、早く私の作ったお馬さんに入ってくれないかなぁ……
「ねぇねぇ、スイ」
「何、マーク?」
「角のない馬になんて、カッコ悪くて入りたくないって、フィアリーズが……」
くっ……!
私は当初の趣旨を変更し、素早く馬の頭に角を付けた。
いいんです。
フィアリーズの入り心地が一番なんで。
それからほどなくして、私の作った小さな馬は黄緑色に輝き始めた。
おお! やった!!
仔馬は私のイメージした通り、翼を大きく広げ部屋の中を飛び回る。
すばらしい!
……あとは、私の思惑通りにいくかどうかだ。
「初めまして、私は丸井粋華といいます。よろしくお願いします。スイって呼んでくださいね」
飛び回る仔馬に話しかける。
仔馬はゆっくり降りてくると、私の前に着地する。
『はあ……楽しい。初めまして、スイ。僕はフィアリーズのミント。よろしくぅ』
のんびりとした、可愛らしい男の子の声がした。
「どう? ミント、その体は。変なとこないかな?」
『うん、最初は角がなかったから、どうしようかなぁって思ったけど、かっこ良くなって良かったぁ。ぼくねぇ、こんな大きな体になってみたかったんだぁ』
ミントは嬉しそうに答えた。
やはり、角がポイントだったようだ。
付けて良かったぁ。
「実は、私を乗せて飛んで欲しいと思って、この馬を作ったんだ。乗せてもらってもいいかな?」
もちろん、それを想像して作ったのだから当然乗せて欲しいが、人を乗せるなんて、フィアリーズにとったら嫌な事かもしれないからなぁ……
ちょっと心配している。
『うん、いいよー。乗ってみて?』
ミントは快く言ってくれた。
やったー!
私は恐る恐る仔馬に跨る。
背中の形や大きさは、ちゃんと私が乗りやすいように形作ってある。
仔馬に跨った私は、首をしっかり掴む。
「よし、ミント! このまま訓練場まで行って、みんなを驚かそう!」
ミントが飛び立とうとした時、マリアさんが待ったをかける。
『お待ちください、スイ様。私も乗せて行っていただきたいですわ』
おう、そうだった!
マリアさんは飛べるように作ってないから、歩くことしか出来ないんだよね。
私はマリアさんを私の前に座らせると、いよいよ訓練場へ向けて窓から飛び立つ。
うぉぉぉぉ! 飛んでるー!!
私達を乗せても、仔馬はバランスを崩すこともなく、順調に飛び続ける。
すごい、すごい!
気持ちいいーっ!
建物の間を抜けて飛んでいく私たちに、城の警備をしている騎士たちが指を差して何やら騒いでいる。
「お待たせしましたー!」
元気な声で第七訓練場に到着した。
ああ、楽しかった!
討伐部隊の面々は、口をあんぐりと開けて、驚きの顔で私たちを見ていた。




