表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界で戦闘玩具職人に任命されました  作者: 夏野あさがお
第一章
17/127

17. 王と対面


 廊下に出ると、そこにはクラウディオさんが立っていた。


 ギョ!

 いつからいるの!?


 私の姿を見て、クラウディオさんは少し驚いたように目を瞬かせた。

 しかし、すぐに元の仏頂面に戻る。


「俺が案内する。行くぞ」


 すると、メイドが慌てた。


「いえ、でも……」


 反論しようとするも、クラウディオはメイドを睨みつけ黙らせた。


 うわー恐怖政治……


「行くぞ」と、私に向かって冷たく言い放ち、歩き始めた。

 メイドは小さくなって俯いている。


 私は気の毒なメイドさんを気にしながらも、クラウディオの後について行く。

 マリアは嬉しそうに、私の横をてくてく並んで歩く。

 歩幅が短いので、足をちょこまかと動かして可愛らしい。

 マークは私の肩……いつもの定位置に座っている。

 「はぁ……やっとか」と、疲れた顔をした。



「ここだ」


 しばらく歩き、大きな扉の前に着いた。

 騎士二人が扉の前を守っている。

 彼らは私の足元にいる粘土ナースのマリアを見て驚く。

 そんな騎士を無視して、クラウディオは扉に手をかけた。


 しかし、横から伸びた手が私の入室を遮った。


「待て!! ここから先、武器の携帯は禁止だ! これは置いていけ!」


 騎士は厳しい口調でそう言い、ジロっと私を睨む。


 うっ、怖い……


『なんやなんや!? 武器って、ワイの事かいな!』


 私の肩に担がれていたライディが威勢のいい声を上げて肩から外れ、空中に浮かんだ。


「うわあ!!」


 驚いた騎士は、空中に浮かぶ剣を凝視している。


『ワイだけ仲間外れにするんか? ええっ!?』


 ライディは騎士たちにすごんだ。

 騎士たちは腰の剣を抜こうと手をかける。


 こんな所で暴れないで欲しいーーー!!

 私はわたわたと焦りながらも、ライディをなだめようと手を伸ばす。


「大丈夫だ。俺が責任を持つ」


 クラウディオは騎士に言い、手を伸ばし、ライディをサッと掴む。

 そして私に手渡した。


「しっかり押さえていろ」


 私は頷いて、両手でライディをしっかりと抱えた。

 まあ……ライディが本気になったら、簡単に抜け出せちゃうんだろうけどね。

 私はハハハと苦笑いを浮かべる。

 もう、お願いするしかない。


「お願いだから、大人しくしててくださいね」


『わーっとる、わーっとる!』


 ライディは軽い口調で、明るく答えた。

 全く信用できない。



 そして、私達はやっと王がいる、謁見の間に入った。

 真っ直ぐ先に青い絨毯が敷かれ、両側には難しそうな顔をしたおじ様達が並んでいる。

 正面の何段か上がった先には、立派な椅子に座った男性の姿が見えた。


 私達が数歩進んだとき、正面に座った男性から声がかかった。


「おいおい。お前は呼んでないぞ」


 その男性は目を細め、困った顔でクラウディオを見ていた。

 クラウディオはピタッと歩みを止め、恭しく頭を下げる。


「この者は、こういった場は慣れておりません。何か失礼があってはいけないので、こうしてついて参りました。私には、この者を連れてきた責任があります」

 

 私を問題児扱いか?

 失礼な!

 私は軽くクラウディオを睨んだ。


「まあ、いいだろう」


 男性は、ふぅと小さく息を吐くと、ニヤリと笑った。

 そして、今度は私の方を向くと、ふわりと優しく微笑む。


 えーと……、もしかしなくても、この人が王様?

 プラチナブロンドのキラキラした髪で、澄んだ水色の瞳。年は30代くらいの、目が覚めるような美形だ!

 思ったよりも随分と若いなぁ。

 んん?

 よく見たら、男性の肩には、ベットが座っている。

 ベットを驚いた顔で見ると、にっこり微笑み返された。

 

「私がエアールの国王で、クロスという。お前のことはベットから聞いている」


 キラキラ輝く金髪の男性……エアール国のクロス王が名乗った。

 わ……私も名乗らねばっ!


「わ、私は、丸井、粋華と、申します!」


 あっ、緊張して変な声出た。


「ぷぷっ! スイ、面白ーい!」


 マークに笑われた。

 ……凹む。


「お主がベットの弟か」


 王がマークを見て目を細めた。


「そうだよ。初めましてクロス王」


 マークはふわりと浮かび優雅なしぐさでお辞儀をした。

 両側に並ぶ男性たちは王の視線の先、私の周りに目を凝らして、何かを探しているようだ。

 どうやらマークの姿を探しているらしい。

 王以外の人達は、フィアリーズを見ることは出来ないようだ。


 王は、マークが見えている。

 ……という事は、もちろんベットの事も分かるんだよね。

 ベットに話を聞いたと言っていたし、ベットと王は、仲が良さそうだ。


『なあ、スイ! ワイのことも紹介してや!』 


 ライディから声がかかった。

 私は、分かったと小さく答える。


「王様、私の仲間になってくれた、他の二人のフィアリーズを紹介いたします。ライディと、マリアです」


 私が言うと、ライディは威勢のいい声を出した。


『ワイがライディや! よろしくな、王様!』


 ひぇー、言い方!

 友達か!


 しかし、王は嫌な顔をすることもなく、「うむ、よろしくな。ライディ」と、にこやかに答えた。


『私はマリアと申します。よろしくお願いいたします』


 マリアはスカートの端を掴み、ゆったりと頭を下げた。

 王は、マリアにも穏やかな笑顔で返した。

 そして、面白そうに目を細める。


「お主が異世界人だということは、騎士達から聞いている。ところで、お主はこの国の最初の王の出自は聞いておるか?」


「え、いえ……?」


「そうか……」


 クロス王は、ニヤリと笑うと続けた。



「この国の最初の王は、()()()()なのだよ、粋華」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ