表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界で戦闘玩具職人に任命されました  作者: 夏野あさがお
第一章
13/127

13. 新しい仲間たち


 身長30センチほどのナースの粘土人形が、私を見上げて小首を傾げている。


 かわいいっ!


 思わず見とれていると、粘土のナースが自分の姿を確かめて声を上げた。


『ええっ!? これは、どうなってるんですの!?』


 あれ?

 今までのフィアリーズは自分から入ってきてくれてたみたいだけど、何か様子が変だ。


 私は恐る恐る聞いてみた。


「あのー……、フィアリーズさん、初めまして。私は丸井粋華といいます。スイと呼んでください。あなたは自分でこの粘土ナースに入ってくれたんじゃないんですか?」


『はい? 粘土ナースって何ですの? ああ! この体のことかしら? うーん……私、自分の寝床で眠っていたはずですの。気が付いたら、何故かこうなってましたのよ』


 粘土ナースは困ったように答えた。


 自分の意志じゃないってこと?

 えー……どうしよう……


 私は、粘土ナースを作った経緯を説明した。


『まあ、そうですの……』


「そういうわけで、治療魔法が使えるフィアリーズさんに来てもらいたかったんです」


『まあまあ、スイ様……でしたかしら? あなたは不思議な力をお持ちですのね。 私は確かに治療魔法が得意ですわ』


「!! そうですか! ではでは、もし良ければ、その体に入って治療してくれませんか? お願いします! たぶんその体だと、魔力が強くなると思うんですが……」


 ふーん……と考えながら、粘土ナースは水たまりまで行って、くるくる回って自身の体をじっくり眺めた。


『まあっ! これは可愛らしいですわね! 気に入りましたわ! いいでしょう。 お手伝いいたしますわ』


 粘土ナースはにこやかに頷いた。


『良かったな、スイ! よう! ワイもついさっき、ここに来たんやで!』


 粘土剣がナースに声を掛けた。

 んん?と、粘土ナースは粘土剣をジッと見る。


『あら!? あなたはライディ様ではなくて?』


『なんや? ワイのこと知っとるんか!?』


『ええ、ええ。この近辺では、マーク様と並んで有名ですもの! あらあら、そんな姿になったんですの!? 私はマリアと申します。ライディ様、どうぞよろしくお願いいたします。』


 粘土ナースのマリアさんはスカートを持ち上げ、優雅に頭を下げた。


 なんだかフィアリーズ同士で話が盛り上がってきたみたい。

 粘土剣に入ってくれたフィアリーズはライディ、粘土ナースの方はマリアというらしい。

 そういえばバタバタして、粘土剣の方のフィアリーズには挨拶もしていなかった。

 私は今さらながら、ライディにも自己紹介をして謝った。


 ライディは、『ええで、ええで、ワイはスイのこと知ってたしな』と笑った。


 そういえば、最初から名前を呼ばれてたような……?


「お話し中、失礼する。出来れば早く怪我人を見てもらいたいのだが……」


 クラウディオが口を挟んできた。


 そうだった!!

 重症のロイさんが待ってるんだった!

 

『あらあら? あなたですの? 怪我人は。まあっ、とってもタイプ!』


 粘土ナースのマリアさんは頬を両手で押さえながら、うっとりとクラウディオを見上げている。

 クラウディオは少々うろたえながら、「いや、俺ではなく、そっちだ」と、ロイさんを指さした。


『あらあら、そちらの騎士様ですの?』


 マリアはロイさんの顔を覗き込む。


『あらら!? こちらの騎士様もなかなか素敵! やる気が出てきましたわ!!』


 なんだか嬉しそうだ。

 マリアさん……言葉遣いからおしとやかな人かと思ったんだけど、けっこう軽い感じの人……じゃなくて、フィアリーズなのかな?


 私たちが心配して見守る中、粘土ナースのマリアは小さな両手を胸の前で合わせた。


『本当ですわ! 魔力が溢れてくる!』


 マリアの両手が白い光に包まれた。

 その両手をロイのわき腹にかざすと、傷口も光に包まれた。

 

 これが治療魔法?

 温かい光……


 そうしていること数分。

 気を失っているロイさんの青白かった顔色が、だんたんと赤みを帯びてきた。


「うっ……」


 ロイさんが目を覚ましたようだ。

 ロイさんは自身の傷口に触れる粘土ナースを見ると、ギョッと目を見開く。


「ああ……とうとう私は死んでしまったのか。天使が見える……」


『あらいやだわ! 天使だなんて!』


 マリアは恥ずかしがって顔をブンブンと横に振りながら、ロイのわき腹をバシンッと叩く。


「ぐおおおおおおーーーー!!」


 ロイは涙目で、苦しそうに唸った。


「こ……この痛みは、これは現実か!?」



 そうして、マリアによる治療が終わると、ロイの傷は完全に塞がり、痛みも消えた。


 そうしてやっと、みな安心して眠りにつくことが出来たのだった。



挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ