12. 治療魔法
「……スイ! おい、スイ! しっかりしろ!」
アルフレッドの声に、私はゆっくり目を開いた。
洞窟の天井が見える。
「……あれ?」
私はのろのろと起き上がり、周りを見渡した。
クラウディオと騎士のみんながいる。
ロイさんは相変わらず、苦しそうな呻き声を上げながら横たわっていた。
どうやら私は気を失っていたようだ。
「はぁ……よかった。大丈夫か?」
アルフレッドが、私の顔を覗き込んで言った。
「えーと……なんで私、倒れてたんですか?」
「俺もよく分からないんだけど、その剣から魔法を放った後、突然倒れたんだ」
私は自分の横に落ちている剣をジッと見た。
『わ……悪かったな、スイ! いやあ、まさかの威力やったなあ!』
明るい声で、剣がしゃべった。
粘土の剣が言うには、私と剣は一緒に雷の魔法を放ち、熊の魔獣を撃退したそうだ。
しかし、威力が強すぎて私まで感電し、周りにいた騎士たちも、気を失うほどではないがダメージを受けてしまったらしい。
ロイさんなんか出血して重症なのに、電撃のダメージまで加わってしまった。
ロイさんは、ウーン、ウーンと苦しそうな声を上げている。
ああ、申し訳ないことをしてしまった。
私はロイさんの傍までいき、素直に謝った。
「すみません、ロイさん……。こんな事になってしまうとは……」
「う……聖女様、き……気にしないでください……。わ……私はだいじょ……グハッ!」
騎士は気を失ってしまった。
「おい! しっかりしろー! ロイー!!」
周りの騎士たちが叫ぶが、ロイさんの意識は戻らない。
ど……どうしよう……!?
「わ……私に何か出来ることはないかな?」
私は焦って、横にいる粘土剣に話しかけた。
『すまんなぁ、スイ。ワイが“治療魔法”使えたらよかったんやけど、ワイの専門は“雷魔法”やからなぁ』
ん?
フィアリーズはそれぞれ、専門の魔法があるのか?
私は詳しく聞いてみることにした。
「それって、他のフィアリーズなら、“治療魔法”が使えるってこと?」
『ああ、そうや! もちろん治療魔法が使えるやつもおるで! でも……数は少ないかもしれんなぁ』
私は近くで話を聞いていたクラウディオにも尋ねた。
「クラウディオさんは治療魔法は使えないんですか?」
「ああ、生憎俺は“攻撃魔法”しか使えん。人間にも、治療魔法が使えるものもいるが、とても数は少なく貴重な存在だ。今から呼びに行かせても、ここまで来てくれるとは思えない。……この状態のロイを動かすわけにもいかんし……」
クラウディオは、ロイを見ながら暗い表情で答えた。
ああ、ここに治療魔法が使える人がいればロイさんを助けられるのに……
ハッ! ……そうだ!
治療魔法が使える人が今ここにいないのなら、呼んじゃえばいいじゃない!!
というわけで、早速、粘土を取り出した。
うーん……治療をする人って言ったら、医師なんだろうけど……
私としては、可愛い癒し系のナースにお世話になりたいなぁ。
萌え系の女の子がナースだったら嬉しいかも?
ナース服は膝丈の少しゆったりと広がったスカートで、そこからはほっそりと伸びた足。
頭にはもちろんナース帽で、髪の毛は可愛く編み上げておこう。
クリクリお目目の可愛らしいナースの完成だ!
「よし! 出来た!」
お願い。治療魔法が使えるフィアリーズさん、この中に入ってください!!
私は目を瞑って祈った。
『お? スイ。こりゃあいったい何や?』
不思議そうに聞いてきた粘土剣を無視して、祈り続けること数分。
「はぁ、そんな都合よくいかないかぁ……」
治療魔法が使えるフィアリーズは数が少ないって言ってたしね。
あきらめかけたその時、粘土ナースの色が徐々に変化し始めた。
こ……これは!!
私たちが見守る中、粘土ナースは淡い白色の光を放ち出した。
『んんん? ここは、どこですの?』
粘土ナースは立ち上がり、周りを見回しながら尋ねた。