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異世界で戦闘玩具職人に任命されました  作者: 夏野あさがお
第一章
10/127

10. 洞窟にて


「では、野営できそうな場所を探してきます」


 一人の騎士がそう言うと、魔導士クラウディオは空を見上げる。


「待て! しばらくすると雨が降り出しそうだ。雨をしのげそうな所を探せ」


 そう指示を出した。


 私たちは、探索から戻った騎士に案内されて、大きな洞窟の前に辿り着いた。

 クラウディオは洞窟の奥をジッと見やる。


「大丈夫だろう。今日はここで野営を行う。みな準備するように」


 騎士たちはそれぞれ、寝床を作ったり、食事の準備を始めた。

 この洞窟は高さは3メートルくらいあり、奥行きもそうとうありそうだ。

 まったく奥が見えない。


 私も騎士たちを手伝おうと周りをウロウロしてみた。

 

「どうしたんだい、スイ」


 アルフが声をかけてきた。

 私は手伝う旨を伝えたが、


「えーと……とりあえずやってもらえそうな事はないから、そこで待っててくれるかな?」


 私はお邪魔だったようだ。

 大人しく膝を抱えて座った。


 そうしているとまもなく、クラウディオが言った通り、雨が降り始めた。

 私は手持無沙汰で、何気なく荷物を見た。

 そうだ!!

 私は自分の荷物を引っ張り出す。


「スイ。何してるの?」


 マークが尋ねた。

 私はフフンと笑うと、「いいから、見てて?」と、荷物の中から粘土を取り出した。


 私は村人たちから、服だけでなく粘土ももらってきていた。

 実はこの世界、マークやアルフから聞いたところによると、けっこう恐ろしい魔獣や、もっと知能や戦闘力が高い魔物も存在するらしい。

 旅人たちは、武器や魔法を使って、自分の身は自分で守らないといけないそうだ。

 私はもちろん剣など使えないし、直接魔法で戦うこともできない。

 今は騎士たちが守ってくれるだろうが、これから先は自分でやっていかなければならないだろう。

 そこで、私の武器は何か!

 私は自分の能力で、自分を守るための武器を、自分自身で作り出すしかないのだ。


 何にしよっかなぁ……

 やっぱり、基本は“剣”だよね!

 この世界にある普通の剣じゃ、私には重すぎて扱えない。

 私は粘土を形作りながら考えた。

 硬くて軽くて切れ味抜群で……

 そうだ! 剣先から魔法がドーンと出せるのなんかいいんじゃない?

 ゲームで勇者が持ってるみたいな、カッコイイ剣!



「出来た!!」


 私は地面に置かれた、出来上がったばかりの粘土の剣を期待を込めて見つめた。

 細長い形をしているので、持ち上げることが出来ない。粘土のままでは柔らかすぎて壊れてしまうからだ。

 しばらく待ってみたけれど、何も変化がない。


「あれ? なんで?」


 私は首を傾げた。

 マークは周りを見回している。


「スイは気が早いね。まだみんな迷ってるみたいだよ。気に入る子がいれば、そのうち入ってくれるよ」

 

 おお!

 そういえば目に見えないけど、周りにはフィアリーズが何人もいるんだよね。

 誰か気に入ってくれるかなぁ。

 せっかく作ったんだから、誰かに入ってもらいたいなぁ。


「スイ! 食事の用意が出来たよ。こっちにおいで!」


 アルフに呼ばれたので、騎士のみんなと食事を取った。

 野菜や肉を塩で煮ただけのシンプルな料理だった。

 でも、温かい料理が食べられるだけで、幸せだよね。

 外の雨で、気温が大分冷えてきていた。雨は激しくなっている。


 食事を終えて、後は寝るだけとなった時、ドドーン!!と外で大きな雷の音が鳴り、洞窟が振動した。


「ひゃあ!!」

「「「うわあ!!」」」


 私も驚いたが、野宿に慣れている騎士のみなさんでも驚いたようだ。

 どうやら、すぐ近くに落ちたみたい。

 しかし、雨が降り出す前に洞窟を見つけてくれてよかった。

 

「スイ。僕、もうおやすみの時間だ。また明日ねー……」


 そう言って、いつもの如く、マークは早々にどこかへ眠りに行ってしまった。

 昼間、私の言葉の問題などにずっと魔力を消費してくれてるらしく、マークは夜ぐっすりと寝て、回復させないといけないらしい。

 眠る前には、この前のように私に魔法をかけていってくれるので、少しの間は言葉に困らない。マーク様様だ!

 


 突然、クラウディオが立ち上がり洞窟の奥を睨んだ。


「どうしましたか? 魔導士様」


 騎士の一人が尋ねた。

 クラウディオは眉間に皺をよせる。


「魔力の気配を感じる。……これは、魔獣だな。俺が行って見てくる。皆はここで待機していろ」


 クラウディオが行こうとすると、一人の騎士がそれを止めた。


「待ってください、魔導士様! 私が見てきます!」


 今度はその騎士を別の騎士が止める。


「おい! ロイ、無理するな。お前はまだこの部隊に入って日が浅い。ここは魔導士様に任せておけ」


「何言ってるんですか! だからですよ! 私はこの討伐部隊に入れたことを誇りに思っているんです! 今回は魔物を討伐出来なかったので、今こそ役に立ちたいんです!」


 あ、それって私が魔物じゃなかったから、出番なかった系な話か。


「待て! 凶暴な魔獣だったらどうするんだ。お前の実力では……」


「それこそ私の手柄のチャンスですよ! うちで私の帰りを待っている妻と、もうすぐ生まれてくる子供に自慢したいんです! 大丈夫! 行ってきます!」


 そう言うと、ロイと呼ばれた騎士は、他の騎士が止めるのも聞かず、洞窟の奥へ走って行ってしまった。

 クラウディオと他の騎士たちは、そんな彼をあっけにとられて見ている。

 

 なんか、盛大にフラグ立ててない?

 とてつもなく嫌な予感がする。

 心配そうにみんなが洞窟の奥を見つめる中、


「ギャーーーーーー!!」


 盛大な悲鳴が聞こえた!



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