Mixture
企画第3弾に使用した台本です。
オーディションで選出させて頂いたキャストの当て書き台本となりますので、他での使用は禁止致しますのでご了承下さい。
岡
「お疲れ様でーす。
お先に失礼しまーす!」
祐
「おっしゃ、俺も終わったーっ!
岡、今から呑みに行かないか?」
岡
「えぇ?
いや、今夜は…ちょっと、そのーー…」
ジンツー
「すいませーん先輩、今日は俺が先に約束取り付けたんで諦めて下さいっす!
って事で、お疲れ様っした〜!」
祐
「なっ、それに俺も混ぜてくれたらいい話だろーがよ!
っつーかジンツー、お前何回言ったら覚えるんだ!?
すいません、じゃなくてすみません、だろ!」
ジンツー
「あっ、すいませーん!
岡、早くしろってもうすぐ店閉まるんだろ!?」
岡
「あっ、やばっ!!
すいませーん、先輩、また明日にでも!
お疲れ様でした〜!」
祐
「だーかーらーっ、お前らなぁっ!
いってぇっ!!」
凛子
「うるっさい!
出入り口で喚かないでくれる?
うざいし邪魔なんだけど」
祐
「あぁ!?
邪魔したのは悪かったが何もファイルで叩くこたぁ無ぇだろっ!?」
凛子
「あーもう、ほんっとうざいうざい」
祐
「んお?
何イラついてんだよ、あの日か?」
凛子
「地獄行っとく?」
祐
「あー、遠慮するわ」
凛子
「ねぇ、あんたでしょ、このファイルに未処理の契約書綴じたの」
祐
「未処理?
いや、んな訳ーー…」
凛子
「部長の承認印無しに綴じたらダメだって、新入社員の頃に習わなかったかしら〜?
それとも、あまりにも過去過ぎて記憶の片すみにすら残ってないとか〜?」
祐
「どれどれ…あっ、マジだ…
っかしいな〜」
凛子
「おかしいのはお前の頭ん中だバカタレ!
部長はもう直帰で帰ってこないからね、明日朝イチで処理しないとこの契約おじゃんになると思っといて」
祐
「げぇ、職権乱用だろそれ!
そこまで急ぎの奴じゃなかった筈だぞ?」
凛子
「明日、あたし午後休貰ってんの。
昼までにあたしんとこに持って来なかったらどうなるか…分かってるよね〜?」
祐
「…朝イチでやらせて頂きます、ハイ」
凛子
「分かれば宜しい。
じゃ、お疲れ〜」
祐
「おう、お疲れ!
……あーあ…あいつ、仕事出来んだから愛想さえ良ければな〜…
っと、俺も帰るか…」
間
凛子
「…という訳で、上層部からこのままではリストラもやむを得ないという見解が出ています。
人事課からの情報では、営業部が主にその対象になるとの事です」
岡
「うわぁ…リストラとか…
ちらほら噂で耳にはしてたけど、何となく別次元の話だと思ってた…」
ジンツー
「あ、質問、いーっすか?」
凛子
「はい、どうぞ」
ジンツー
「業績が右肩下がりなのは一目瞭然なんで、リストラも視野に入れるのは分かるんすけど…何でその対象が営業部なんすか?」
祐
「バッカだなお前、簡単な話だろうが」
ジンツー
「えーえー、どうせ俺はバカっすよ」
凛子
「…昨年度、我が社は僅かながら黒字決済となりました。
それに伴い、主に営業部の人員の補充を行いましたが、今年度、それに見合う契約数が上がってきていません」
岡
「そういえば、新卒採用者が結構いたんでしたっけ。
でもまだ半年やそこらで判断しなくてもいいんじゃ…」
凛子
「多少は予想していたみたいだけど、想定外だったって事でしょうね」
ジンツー
「業績が伸び悩んでるのを俺らのせいにして、あっさりクビ切るとか…人事部は鬼か!!」
祐
「それが会社ってもんだ。
朝礼終わったら、会議だなこりゃ…」
凛子
「では、経理からは以上です。
他、何か連絡ある方はいらっしゃいますか?
……では、本日も宜しくお願いします」
岡
「……うーん、どうしたものかな…
リストラは困るし…来月イベント目白押しなんだよねぇ…
ジンツー、何かいい案ある?」
ジンツー
「いや、こういうのってさ、上層部が改善策とか出すもんじゃねぇの?
下っ端の俺らが考えてもさぁ」
祐
「おう、取り敢えずそこの2人とーー…凛子、ちょっといいか」
凛子
「は?
何であたしまで呼ばれなきゃいけない訳?」
岡
「そうですよ先輩、俺らは同じチームだから分かりますけど…」
ジンツー
「はー、凛子さん、近くで見るとますます美人だぁ〜」
祐
「それはな、うちのバカがお前のファンだからだ!」
凛子
「はぁ!?」
祐
「というのは冗談として、元営業部のエースだったお前にちょっと教えを請おうと思ってな」
岡
「えっ、凛子さんって元営業部だったんですか?」
ジンツー
「あれ…凛子さんって、俺らとほぼ変わんないんじゃなかったんじゃ…
俺、最初から経理部だと思ってたんすけど」
凛子
「祐…あんた、覚えてなさいよ…?」
祐
「まぁまぁ、細かい所はいいとしてだ、ちっと場所移動して話を聞こうじゃないか!
…今夜品揃え豊富なウイスキー専門のバーに連れてってやるからさ」
凛子
「…奢りでしょうね」
祐
「勿論だ」
凛子
「…しょうがないわね。
あたしで役に立つかは分からないけど、協力してあげましょう」
岡
「……凛子さんって…一体いくつなんだろ…」
凛子
「うん?
岡君、何か言ったかな?」
岡
「ひえっ、何でもないです!
すみません!!」
祐
「何で凛子には素直にすみませんって言うんだ!」
ジンツー
「…笑顔なのにすんごい迫力だった…二の轍踏まない様にしとこ…」
間
祐
「はー、会議室ひと部屋空いてて良かったな!
んじゃ、取り敢えずさっき凛子から貰った資料をおさらいするか」
凛子
「説明は朝礼でしたつもりだったけど、どこか不足してたとこあった?」
祐
「うちのチームには、こいつがいるからな!」
凛子
「あぁ……そうね」
ジンツー
「へ?
ちょっ、何で俺に視線集まってんすか!?」
岡
「認識が周知されてるって事だ、良かったなジンツー」
ジンツー
「え、え、どゆこと!?」
祐
「あー、時間勿体無ぇからさっさと話進めるぞー。
こっちが昨年度の業績をグラフ化した物だ。
で、こっちが今年度の先月までのグラフだな」
凛子
「人員を増加した事で、本来あるべき数値を算出すると、明らかに不足してるのは分かるでしょう?」
ジンツー
「そりゃまぁ、見れば分かりますけど…それで責任を全部営業部になすり付けるのはおかしいじゃないっすか!」
岡
「別にそういうつもりじゃないと思うけど…どうなんです?」
祐
「新卒採用でかなりの数が営業部に回されたのは事実だ。
そのお陰で営業部の人員不足が緩和され、多少動きやすくなったのは確かだが…」
凛子
「昨年度は特に、新規の顧客が多かったし額も大きかったからね。
でも、人員不足解消が今度は油断を生んでしまった」
岡
「油断なんて…」
祐
「耳が痛い話だ。
決して無かったとは言えない」
ジンツー
「だとしても、昨年度みたいに毎日残業続きで、休日出勤もザラなんてごめんっすよ!」
凛子
「勿論、それが正しい姿とは言えないし、推奨すべきじゃないとも思う。
上層部は美徳だと思い込んでいる人間も多いけどね」
祐
「理想は、就業時間で仕事をこなし、それなりの結果を出す事だ。
なかなか難易度の高い離れ技の様な話だがな」
岡
「うーん、実績は昨年度とそこまで差は無いんですよね?」
凛子
「そうね。
ただ、このままでは近い内に頭打ちになるでしょうけど」
ジンツー
「…あーもう、俺ショート寸前っす〜」
祐
「凛子、何かいい策は無いか?」
凛子
「うーん…」
岡
「あっ、俺、ちょっと案があるんですけど」
祐
「お、言ってみろ」
岡
「新たな顧客層を獲得するってのはどうですか?」
凛子
「ふうん…まぁ無難な線ではあるけど…例えば?」
岡
「現状、顧客層って企業じゃないですか。
それを個人向けにするんですよ。
なぁジンツー、昨日話したアレだよ」
ジンツー
「え?
あれって…あぁ、アレ??」
祐
「勿体ぶんな、さっさと話せ」
岡
「ふふん、オタク層をターゲットにするんです!」
凛子
「オタク層〜?」
祐
「ちょっと面白そうな話だが、うちの商品がどうオタク層向けになるんだ?」
凛子
「うわぁ、祐が食い付いた…
そういやあんたもオタクだったわね」
ジンツー
「そこの2人はそれで結託してる様なもんすからね〜」
岡
「何だよ、ジンツーだって似た様なもんだろ?」
ジンツー
「俺はアニメとかはそこまで興味無いしな〜」
祐
「そうなのか?
お前、それは人生の大半損してるぞ!」
岡
「全くだ!!」
ジンツー
「俺はどっちかっていうとアクティブな方なんで〜、家でじっとしてるの苦手っていうか、体動かしてる方が好きなんすよね」
凛子
「へぇ、例えば?」
ジンツー
「最近は殺陣にハマってるんすよ!
これがまた稽古が面白くて!」
凛子
「殺陣?
あぁ、時代劇とかでよく見る様な奴?」
ジンツー
「そうっす!
マジでカッコイイんすよ〜、俺の先生がーー…」
岡
「あー、その話始まったら長いから終わり終わり!
……だぁっ!
終わりだっつってんだろ!!」
ジンツー
「いって!!
…いい、下段蹴りだったぜ…ぐふっ」
凛子
「あれ、終わり?
えー、あたしちょっと興味あったんだけど…」
祐
「凛子が興味示すなんて珍しいな。
まぁでも、今は業績アップの話を優先しなきゃいかんし後でにしてくれ。
……で、どこまで話したっけ?」
岡
「えーと、オタク層をターゲットにって話です」
祐
「そうだったそうだった。
詳しく話してくれ」
岡
「昨日、ジンツーととある店に行ってたんですけど…」
ジンツー
「そうそう、殆ど無理矢理付き合わされたんすけどね」
岡
「ほら、人間って好きな物に対して結構貪欲っていうか、明らかに熱意が違うじゃないですか」
祐
「あー?
あぁ、あそこか…俺、何となく分かってきた」
凛子
「え?
分かんないわよあたしは。
あーもう、続けて続けて!」
岡
「例えば、好きなアニメがあるとして、毎週録画保存してるんですけど、プレミアムBOXが出たら買っちゃうとか」
ジンツー
「岡んち、DVDがカラーボックスに入り切らなくて平積みされてるもんな。
あれその内雪崩起きるぞ?」
岡
「大丈夫、そうならない様にバランスちゃんと考えて配置してるから!」
凛子
「それって、新しいカラーボックスを据えるという対策はしないの?」
岡
「そんな金あったら新しいDVDBOX買います!」
凛子
「うわぁ…胸張って言う事じゃないでしょ…」
ジンツー
「いや凛子さん、つまりはこういう事なんすよ!」
凛子
「はぁ?
こういう事って?」
ジンツー
「今の岡に必要なのは、平積みされて今にも崩れそうなDVDBOXを収納するカラーボックス、っすよね。
でも、岡が無けなしの金で買おうとするのは、他人から見たら確実に必要な物じゃなくて、持っていない、欲しいと思うDVDBOXって事っす!」
岡
「無けなしって…」
ジンツー
「ん?
何か俺間違った事言ったか?」
岡
「いや、合ってる…合ってるけど、何だろう、この切ない感じ…」
祐
「そうあからさまに肩を落とすな、岡!
分かる、俺には分かるぞ!
缶コーヒーでも買おうと立ち寄ったコンビニで、推しの一番くじがあったら缶コーヒーを我慢してでも手を出してしまう事も!」
凛子
「一番くじって…あれ結構高くない?」
祐
「ふむ、高いな」
凛子
「しかも大抵はハズレでしょ?
くじの値段半分以下の価値しか無いのだってザラじゃないの」
祐
「そうだ!
だがしかし、だからこそ俺達はそこにロマンを求めてしまうのだ!!」
ジンツー
「一番くじは上手いっすよね〜、売り出し方が…
目の前に欲しい物があると、もう1回…ってついつい財布の紐が緩むっていうか」
岡
「まぁつまり…俺が言いたいのはそういう事なんですよ。
必要な物ですよ、と売り込むやり方が一般的ですけど、そのやり方だと限界が見えてますよね」
祐
「なるほど…顧客が自主的に手を伸ばしてくれる様な戦術を取るって事か」
ジンツー
「で、こっからは俺の提案なんすけど…」
凛子
「えっ、ジンツー君の提案…?」
ジンツー
「そこで一気に引かないで欲しいっす!
凛子さんが遠いっす!!!」
岡
「いや、凛子さん大丈夫ですよ。
この案は俺もなかなか妙案だと思ったんで」
凛子
「あらそう?
岡君が言うんなら聞いてみてもいいわ」
ジンツー
「はい、聞いて下さいっす!」
祐
「…こいつ気付いてないのか?
言外に岡にしか信用度無いって言ってる様なもんだぞ」
岡
「あー、何せあいつ、凛子さんのファンですからね」
祐
「でもって、アレ、だからな…」
岡
「まぁ、本人幸せそうだから放っときましょう…」
祐
「そうだな」
間
凛子
「ジンツー君、販促物はこれで全部?」
ジンツー
「はいっす、凛子さん!」
岡
「ジンツーの張り切りよう、何だか異様だなぁ…
いつもこうならもっと成績上がるだろうに」
祐
「まぁまぁ、今からいくらでも取り返しがきくだろう。
水を差してやるなよ」
岡
「分かってますよ。
でも、凛子さんも流石ですよね〜。
あれからひと月足らずで企画練ってプレゼンする所まで持ってっちゃうんですから」
祐
「あれあれー、一応企画案の名義、代表は俺なんだけどなー?」
岡
「そうですけど、組み立てて上層部に掛け合ってくれたのだって凛子さんじゃないですか」
祐
「そりゃまあ…昔からの付き合いがあるからな…
あいつは利用出来るもんはとことん利用する奴だよ」
岡
「で、並行して経理の仕事もこなしてるってのが凄いですよ…
最初こそ時間外まで動く事もあったけど、表立った動きをこっちに任せてからは定時上がりしてますもんね」
祐
「あぁ、それはな…あいつ家でーー…」
凛子
「祐くーん?
何の話をしてるのかなー?」
祐
「ひっ…な、何も…っ」
凛子
「そお?
ならいいんだけど…余計な事をベラベラ話しちゃうそのお口、あたしの得意技で綺麗に縫い合わせちゃうわよー?」
祐
「は、ははっ、目が笑ってないぞー…」
凛子
「ほらっ、これから忙しくなるんだから、そこでぼんやりしてないであんた達もさっさと動く!」
祐
「へいへいっ」
凛子
「…あんた、あの2人にいつも言葉直させてたのに、そんな返事でいい訳?」
祐
「はい!
すみませんでした!」
凛子
「宜しい」
岡
「おお、真の支配者現る…か。
うーん…さっきの話気になるなぁ〜。
定時上がりして、家で一体何してるんだろ…」
凛子
「岡くーん?
君もお口縫ってみる?」
岡
「ひぃっ、地獄耳…」
凛子
「力仕事はあの2人に任せるとして、君に頼んでた方はどうなの?」
岡
「あぁ、最終チェック済みです。
バグも修正しましたし、念の為3日間、営業部でテストして貰ってます」
凛子
「そう、後であたしも確認するけど大丈夫そうね。
それにしても、よくあんな破格のギャラで話をつけたもんだわ…
このクオリティはプロ並みでしょ?」
岡
「ええ、結構付き合いの長い知人なんですけど、話を振ってみたら二つ返事で」
凛子
「そうなの…
ちょっとあたしも依頼してみたいわ、このクオリティなら…」
岡
「えっ、今何か言いました?
すみません、よく聞こえなかったんですけど…」
凛子
「何でもない、気にしないで」
岡
「はぁ…」
ジンツー
「凛子さーん!
ちょっといいっすか?」
凛子
「なぁに?」
ジンツー
「A判の販促物がコンビニ用っすよね?」
凛子
「そうそう、で、B判の方が駅構内用。
印刷ミスが無いか確認した?」
ジンツー
「確認済みっす!
GOサイン、出しちゃっていいっすか?」
凛子
「販促物は結構怖いから、トリプルチェックしてからにしましょ。
あれ、祐は?」
ジンツー
「あ、何か時間かかるだろうから飲み物買ってくるって言ってたっす」
凛子
「そう、分かってるみたいね」
ジンツー
「何が分かってるんすか?」
凛子
「デザインが違う販促物が結構な数あるでしょ。
これらを全部チェックするのは重労働よ〜。
疲労感でチェックミスが出たら甚大な損害が出るから、これは時間を掛けてでもキッチリしないとね」
ジンツー
「ほへー、そうなんすねー!
今まで営業に出てた時既存の広告やパンフレット、何気なく顧客に出してましたけど…こんな風に作られてたんだなって、俺初めて知ったっす」
凛子
「他職種の仕事を知るのも大事な事よ。
一企業の中でも、部署が違えば仕事内容だって、責任だって別物」
ジンツー
「ホントっすよね…
俺、今まであんまり営業の仕事にやりがいとか持って無かったんすけど、ちょっと考え方変わったっす」
凛子
「それは、いい事ね!」
岡
「あれ、社内メール…えっ、新たなバグ!?
マジかぁ〜…
凛子さん、ちょっと俺行って来ます!!」
凛子
「はい、行ってらっしゃい!
…ね、どんなにチェックしても、大丈夫だと思っても、こうしてミスが出る事もあるの。
人間がやる事だからね」
ジンツー
「難しいっすね〜」
祐
「おう、今戻ったぞ〜!
岡がさっき廊下走ってったけど、バグでも出たか?」
凛子
「そうみたい。
あ、差し入れありがと」
祐
「おう、凛子はいつものな。
ジンツーはコーヒーで良かったか?」
ジンツー
「あ、はいっす!
ゴチになりまーす!」
祐
「ふぅ、ちょっと休憩するか!
……何だか懐かしいな、お前とこうやって組んで仕事すんのも」
ジンツー
「えっ、先輩、凛子さんと組んでた事あるんすか!?」
凛子
「さぁ、そんな事あったかしら〜?」
祐
「ははっ…
凛子はな、自ら営業部を志願して入社したんだ。
あの頃は営業部に女子社員なんて居なかったよな〜」
ジンツー
「えっ、今は3分の1くらいいるっすけど…」
祐
「凛子が男どもに負けずに業績上げていったら、少しずつ女子社員が増えていったんだよ」
凛子
「記憶にございません」
ジンツー
「流石っすね〜、凛子さん…カッコイイっす!!」
祐
「ん、何だ、廊下が騒がしいな…?」
岡
「た、大変だっ!!」
祐
「お?
バグは大丈夫だったのか?
随分早く戻ったな」
凛子
「っ!!
何かあったの!?」
岡
「はぁっ、はぁっ…か、会長から…っ…この企画、没だって…!」
凛子
「は……あんのクソジジィッ!!!」
ジンツー
「あっ、凛子さんっ!?
…はっや!
もう見えなくなった…」
岡
「す、凄い形相だったけど…っ…大丈夫、かな…」
祐
「岡は取り敢えずこっち来い。
丁度飲み物買ってきてたしな、少し休め。
お前こそ顔色真っ青だぞ」
岡
「…だって!
折角ここまで来たのに!」
ジンツー
「そうっすよ!
何で先輩そんなに落ち着いてられるんすか!?」
祐
「…あいつが、行ったからな」
岡
「え…凛子さんが行ったから、何だっていうんです?
だって、会長ですよ!?
うちのトップじゃないですか!」
祐
「大丈夫だ。
座ってコーヒー飲め」
岡
「…先輩、何か知ってるんですか?」
祐
「いや?」
ジンツー
「えぇっ、何か知ってそうな口振りだったのに!」
祐
「ひと息入れたら、販促物のチェックしとこう。
今日は流石に定時上がりは無理だろうからな、やる事やっとかねぇと、またあいつの雷落ちるぞ?」
岡
「…先輩……ホントに、大丈夫なんですね?」
祐
「あぁ」
ジンツー
「…分かりました!
岡、俺達は俺達で出来る事やろう。
先輩達を信じて!」
岡
「…おう!
んじゃ、これ飲んだらチェック続けてくれてる営業部戻ります!」
祐
「そうだな、そっちは頼んだ」
岡
「はい!
……ご馳走様でした、じゃあ戻れたらこっち手伝いますね」
祐
「おう。
…おっし、んじゃやれるだけやるかぁ!
ジンツー、今日は帰れねーかもしんねぇぞ、へばるなよ?」
ジンツー
「問題無しっす!
伊達に毎日鍛えてないっすからね!」
祐
「そういやお前、筋肉バカだったな」
ジンツー
「あっ、それ褒め言葉っすよ!
っしゃ、やる気出てきたぁっ!!」
祐
「……ま、こういうバカも、必要な人材って事だな…」
間
祐
「えー…本日はお日柄も良く…」
凛子
「結婚式のスピーチか!」
祐
「うるせぇな〜、俺はこういうの苦手なんだよ」
ジンツー
「もう喉乾き過ぎでカラカラっすよ!
ここは凛子さん、お願いしまっす!」
凛子
「おっけ、じゃあ皆お疲れ様、乾杯っ!」
岡・ジンツー
「乾杯!!」
祐
「あーもう、無駄に立たされただけだった、俺…」
岡
「はい、先輩も!
お疲れ様でした!」
ジンツー
「くぁーっ!
ビールが沁みるぅっ!」
凛子
「よーし、今夜は呑むぞ〜!」
祐
「宅飲みじゃねーんだから、ちゃんとセーブしろよ?」
凛子
「うっさいわね〜、分かってるって!」
岡
「…なぁ、やっぱりあの2人さぁ…」
ジンツー
「言うな、頼むからそれを言ってくれるなぁっ!
俺は信じないぞ〜…ちくしょう」
岡
「バカだな、ちゃんと現実を受け止めて、諦める事も肝心だぞ?」
ジンツー
「どうせ俺はバカだよ…」
岡
「んでもって筋肉バカなんだろ?」
ジンツー
「それは俺の誇りだ!」
岡
「へぇへぇ、耳にタコが出来る程聞いたよもう…
そういえば凛子さん、バタバタしてて聞きそびれてたんですけど」
凛子
「ん、なぁに?」
岡
「ほら、会長から没が出た件ですよ。
あの後凛子さん、何したんです?」
ジンツー
「あっ、それ俺も聞きたいっす!
いつの間にか、話通したから続行、みたいな流れになってたもんな」
祐
「何だ、こいつらには話して無かったのか」
凛子
「別に大っぴらに話す事でも無いでしょ」
ジンツー
「また、先輩だけ特別扱いみたいな…っ!」
祐
「いや、俺もこの間聞き出しただけだ。
てっきりお前らにも話してたと思ったんだがな」
岡
「ズルいですよ先輩だけ聞くなんて…
で、何したんですか?」
凛子
「…別に、直接話しただけよ」
ジンツー
「へ?」
祐
「こういうのはしれっと言った方がいいと思うぞ。
こいつらなら話しても問題無ぇだろ」
凛子
「そうかもしれないけど…」
岡
「あ、何か言いにくい事情があるんですか?
なら無理には聞かないです!」
ジンツー
「そ、そうっすよ!
うん、言いたくないんならいいんす!
企画も無事通ったし!」
祐
「いやさ〜、俺もビックリしたんだけど、こいつ会長の孫だったんだと!」
凛子
「ちょっ、祐っ!?」
祐
「いって!
お前、人の足思いっ切り踏むな!」
岡
「…先輩、マジですか…?
あぁでも、それなら直談判出来ますもんね…納得しました」
ジンツー
「ふぇ〜、何で話してくんなかったんすか〜」
凛子
「だから…嫌じゃない、そういう目で見られるの」
岡
「凛子さん…」
凛子
「あたしは、自分の力でどこまで出来るか試したかったの。
女である事を不利に思いたくないし、会長の孫である事で周りから色眼鏡で見られたくなかった。
ただ…」
祐
「…ただ?」
凛子
「…今回だけは、あんた達の努力を無駄にしたくなかった。
それだけの自信もあったから……それだけよ」
祐
「……そうか…ありがとよ。
あぁ、こいつ、今でこそ丸くなったけどな、最初の頃はギスギスしてたぜ〜?
自分以外皆敵って感じでよ」
凛子
「どうせ、あの頃は肩肘張ってたわよ。
可愛くないって散々言われてきたわよ!」
岡
「んー、でも、そんな過去があったからこそ、今の凛子さんがいるんですよね?」
祐
「お、岡、いい事言うじゃねぇか。
そうなんだよな…人間、間違う事もあるし、後になって後悔する振る舞いをする事もある」
ジンツー
「俺なんていつも間違いだらけっす!」
岡
「そこ胸張るとこじゃねーぞー?」
祐
「色んな経験して、成長してくもんだ。
必要の無い事なんて1つも無いんだからな」
凛子
「…ふふっ、あはははは!」
ジンツー
「り、凛子さん?
大丈夫っすか!?」
祐
「何笑ってんだよ、この笑い上戸め」
凛子
「ふふっ、だって、あんたが…くくっ…あーもう、ダメ、おっかしくって…あはははは!」
岡
「先輩もたまには真面目な事言うんですねー?
俺見直しました!」
祐
「あぁっ!?」
ジンツー
「うぅっ…やっぱり…諦めるしか無いのか…っ…俺の入る隙間なんて…っ」
祐
「あぁん?
こっちは泣き上戸か、ったくめんどくせぇな〜」
岡
「個室にしといて正解でしたね、今日」
祐
「全くだな…とんだ慰労会だこりゃ」
岡
「…先輩も充分絡み酒でめんどくさい人ですよ…」
祐
「あ、何か言ったか?」
岡
「いーえ?
なーんにも、言ってませーん!」
祐
「嘘つけ、聞こえてたかんなっ!
誰が絡み酒だこんにゃろっ!」
岡
「痛い痛い、ギブ、ギブです先輩っ!!」
凛子
「あはははは、すっごい、それ首入ってない?」
ジンツー
「あーあ…ビールがしょっぱいよ…」
間
岡
「おし、今日の仕事終わりっと!
そっちは?」
ジンツー
「ちょい待ち、部長にハンコ貰ったらーー…って、いねぇっ!!」
岡
「あぁ、部長ならほら、ボードに書いてあるだろ?
今日は直帰って」
ジンツー
「ぐあぁ〜、またかよ〜!」
祐
「おう、お困りの様だな」
ジンツー
「あ、先輩!
…何持ってるんすか?」
祐
「これか?
じゃーん!!」
岡
「はっ、それは見覚えがある…って、部長のハンコじゃないですか!
いいんですか、持ち出して?」
凛子
「いい訳無いでしょ!?」
祐
「いってぇ!!
凛子、頼むからファイルで人の頭叩くのいい加減やめろ!
しかも今角だったろ!」
凛子
「当然の報いだと思わない?
何やってんのよ!」
祐
「へっへーん、これを見ろ!」
凛子
「はぁ?
何これ……使用、許可証!?」
ジンツー
「すげぇ先輩!
本物っすか!?」
祐
「無論だ。
何せうちの部長は多忙で不在が多いからな、代理として預かる事になったのだ!」
岡
「あ、じゃあ先輩、この書類にもお願いします!」
ジンツー
「あっ、抜け駆けだぞ!
俺のが先だ、これから殺陣の稽古なんだからな!」
岡
「俺だって観たいアニメがあるんだ!」
ジンツー
「どうせ録画してるんだろ!?」
岡
「分かってないなぁ、ジンツー君は…
リアルタイムで観てこそ、だろ!!
ね、先輩!」
祐
「うむ、当然だな」
ジンツー
「そんなぁ、先輩…俺の方が先に手を挙げたじゃないっすか!」
凛子
「はぁ、あほらし…
あたしは帰るわ〜、お疲れ様!」
ジンツー
「あ、お疲れ様っした、凛子さん!」
岡
「お疲れ様でした〜!
あ、先輩あざっす!」
祐
「有難うございます、だろ!?」
ジンツー
「先輩、こっちもお願いしますよ〜」
祐
「お、おう、ほれ」
ジンツー
「あざっす!」
祐
「だーかーらー、何度言えば分かるんだお前ら!」
ジンツー
「おっしゃ、走ればギリで間に合う!
お疲れっした〜!!」
岡
「やべっ、俺も!
お疲れ様でした〜!!」
祐
「あーもう、お疲れさん!
ったく……あいつら、いつになったら成長してくれるんだかな…
んー、俺も帰るか」
凛子
「あ、良かったまだいた!」
祐
「お?
どした、忘れもんか?」
凛子
「成長してないのはあんたもよ、祐!
さっきあんたの頭叩いたファイル、見覚えなーい?」
祐
「あん?」
凛子
「まーた承認印の無い契約書が綴じてあったのよ!
さっきの2人の書類は代理でも構わないけど、それは部長本人に確実にチェックして貰ってよね!
じゃ、今度こそお疲れ!」
祐
「うぇぇ…またかよ…
あ、おい凛子!」
凛子
「何よもー、急いでるんだけど!」
祐
「今回の衣装の進捗は?
どうせまた、冬コミ参加するんだろ?」
凛子
「は!?
ちょっと、まだ残ってる人もいるのにやめてよバカ!」
祐
「まぁどうせ、お前の事だから衣装は出来てるんだろうけど、人集めに毎回手を焼いてるもんなぁ。
あ、また売り子やってやろうか?」
凛子
「大きなお世話よ!
もう二度と、あんたの手は借りないって決めてるの!」
祐
「くくく…一緒に企画を成し遂げた仲だ、あいつらにも話したらいいじゃないか」
凛子
「嫌よ、あたしはあんたと違って仕事とプライベートは分ける主義なの!」
祐
「へぇへぇ、さいですか」
凛子
「今度あたしのトップシークレットを職場で口にしたら、タダじゃ置かないわよ…!?
2分無駄にした、じゃあね!」
祐
「くくくくく……さぁってと、この契約書はまた朝イチに部長に提出するとして、俺も帰るか〜。
おーい、まだ残るんなら戸締まり頼んだぞー?
…んじゃ、お疲れさん!」
-end-
2017/12/27、ツイキャスにて公演を行いました。
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