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戦闘員の日常  作者: 和平 心受
戦闘員の日常
39/59

勇気の印


『そういえばフレイ』


『何だい』


『前回、《《敵に勝ってしまいました》》よね』


『ああ、それか』


 俺たち組織は敵対勢力、とりわけ先日現れたブレイブ・ジャッジのような新技術体系を使用する相手に勝つことはない。というより勝ってはならない。


 あくまでフレイの懸念でこそあるが、展望としては同等かそれ以下。つまり敗北しているぐらいが丁度良いと言うのだ。


 端的に言って技術レベル向上を押さえる為である。つまり俺たちが敵勢力に勝利してしまう事で、敵のレベルアップの必要性が発生してしまい、それは未完成の怪人を実地試験する段階の組織としては望まざる状況である。


 怪人は動作確認後処分し、かつ数少ない人員である戦闘員は無事回収するという一見非効率な作戦を取る組織にとって、技術競争(インフレ)の構図は都合が悪く、言ってしまえばこれは小競り合いの形態であった。戦争準備の為の戦争とも言える。


 最も、今までで言えば茶番が功を奏して敵は勢力と言える程の組織的行動を取ってこなかった。俺たちは威圧行動だけの弱小独裁国家と同じ扱いだった訳である。


 その今まで徹してきた《《悪は負ける》》という構図が、前回偶発的に発生した戦闘により瓦解した。不意に発生した事故により、フレイは判断を誤り敵、ブレイブ・ジャッジの抹殺を命令。結果、少なくとも構図としては、新たに出現した脅威によってジャッジは敗北した事になる。


『迂闊だった事は認める。今更だが二人共、次が現れた際は注意を頼む』


『そう言えば、前回のアレ、最初のジャッジと違うって話。あれどうよ』


 次という単語に揚羽が反応する。ミーティングの最後に俺は技研の男から知らされた懸念に付いて報告を入れておいた。


『さて、俺も技研のデスクで見せられた時はバストサイズ談義してましたし、何とも』


『馬鹿野郎だね。

 そっちは現在確認中だが今のところ身長、これは凡そ二十センチ近い差異を確認したそうだ。現在ヘラクレスの記録ログを早急に寄越すよう掛け合っているが、私の記憶にも前回のジャッジはどうも女性のそれとは違ったな』


 つまり、当初のジャッジとで、中身が違う可能性。


 始めて相対した明らかに気弱な新米といった態度のジャッジと、前回SAで遭遇した非常に好戦的な姿。特殊な訓練で自信が付いたというよりは、薬物か何かで狂人化。あるいは中身が別物と言われた方が納得が行く。


『身長が違うんじゃ当たりだな。ジャッジは次が居るぜ』


『あのジャッジが出てきますかね?』


『判らない。いっそあの小娘ジャッジが出て来るならまだ楽そうだが』


『というか来れるか、ですよ。管轄が違う』


 ブレイブジャッジの所属は恐らくだが所轄警察。それゆえ他県に出張ってくるとは考え憎く、ましてや現在の現場は郊外とは言え都内である。

 縄張り争いに置いても、おいそれと手が出せるとも考え辛い。


『そんな事より状況は』


『四階を進行中』


『怪人は相変わらず鼻の調子が悪いようです』


 揚羽と俺が報告を返す。追尾する怪人といえば見て取れる程に病状が進行し、咳の他、現在は多量の鼻水を垂れ流す状況である。


『こちらも重役を程々に痛めつけて開放し終わった所だ。警察が大分集まってきているな。と、

 ――あれは』


『どうかしましたか』


『参ったな。言った側からジャッジが出て来たぞ』



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