寿命
「儂は・・・もうじき死ぬだろう・・・最期に孫の顔を見れて・・・嬉しいよ」
「何を言ってるのよお爺ちゃん!そんな弱気な事なんて言って・・・それでも国の英雄?」
孫の言葉に思わず、軽い笑みが出る。
視線を自分の身体に向けると、そこには萎れた腕。枯木の様な身体に。
悲しさとも、諦めとも思える渇いた笑みがまた出る。
「とんだ英雄じゃよ・・・こんな弱っちい男が英雄とは。」
「まあ、お爺ちゃん英雄って未だに国じゃ言われてるけど。私より弱いからね。
でも、本当に弱いの?お爺ちゃん?」
「何度も言ったじゃろ?筋力5の奴と腕相撲して負けたと。
素早さ15の奴と、かけっこで負けたと。
強固11の奴と我慢比べで負けたと。
知力も低いようで、魔法も1つしか覚えられんかった・・・」
これまで検証した結果。
男のステータスは5~8才程の子供と同じ位のステータスとなる。
正直、弱い。
弱い弱いとは思っていたが、ここまで弱いと逆に開き直る位で。
ステータスが強くなれないなら、別の方法で強くなれば良いと考えた。
そして、戦って戦って戦って戦って戦って戦って戦って戦って戦って戦って戦って戦い捲った。
初めは負けて負けて負け続きで。
何度も死にかけた。
だが、経験は積めてる様で。
身体能力は上がらずとも、経験は積める。
経験は勘となり、次に相手が何をしてくるのか。
何を考えているのか判るようになった。
どんな強者でも。何を考え、何をしてくるか事前に解っていれば負ける事はない。
こうして男は英雄と呼ばれる所まできた。
現在男は95のお爺ちゃん。
死期は近い。近すぎて死神とフレンドになりつつある。
「儂も長生きしたもんだ・・・初めはステータス用紙が出なくて鬱になった時期もあったが。
・・・まあ、遠い遠い昔の話か・・・」
三度、渇いた笑みがこぼれ。
意識が遠くなっていく感覚。
身体から力も抜け、孫が握っている手が。
するりと落ちる。
「!?お爺ちゃん!お爺ちゃん!?」
孫が必死に呼び掛けるも、男が再び目を開ける事はなかった。
悲しみに暮れていると、何と亡くなった男が光だした。
いや、光っているのは一部だけ。
そこは・・・
「・・・お尻?え?」
困惑する孫を文字通り尻目に、男の亡骸の光る尻から輝くステータス用紙が出てきた。
それを手に取り、孫は目を通す。
「・・・ふふっ、何よ。本当に弱いじゃないお爺ちゃん。殆んどのステータス一桁って・・・え?」
名前「エドワード・シュレティンガー」
性別 男性
筋力 3
強固 4
知力 7
素早さ 8
スキル 「先見の理」 「後の先」 「直感」 「剣術の極み」 「狂奔」
未振り分けステータスポイント 「250980057」