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狂おしいほど愛おしい

作者: 傘屋 佐菜

 ああ、なんて愛おしい。あいつのすべてが愛おしい。そのしなやかな指先も、驚くほど細い腕も、女性らしいふくよかな胸も、短いスカートから覗く足も、透き通るほど白い首も、その上にある顔も、髪の毛一本一本でさえも、あいつを形成するすべてが愛おしい。

 ――だから、俺だけのものにしたかった――

 誰の目にも触れないよう暗い闇の中へ閉じ込め、俺以外の名前を呼ばないようその口を塞いだ。俺以外を見ないようその目を潰し、俺の前からいなくならないようその足を切り落とした。俺がいなければ何もできないようその腕を切り落とし、俺以外の声を聴かないようその耳を千切った。何も喋らない、何も見ない、全く動かない、何も聞かないあいつだったが、俺と同じ空気を吸っているというだけで、俺は十分満足できた。

 ――あくまで、その時だけは――

 俺が吸っている空気と同じ空気だと思っていたそれは、しかし、換気扇の外にいる誰かが呼吸したものだということに、ある日ハタと気が付いた。そう思ってしまったからには、もうどうしようもなかった。俺はあいつの肺を潰した。間もなくして、あいつは完全に動かなくなった。

 ――もう、一生離さない――

 俺はショーケースをいくつか買ってきて、あいつのすべてをその中に入れた。部分部分で鑑賞できるようその首も切り落とし、綺麗に洗い、新しい服を着せて。勢い余って千切ってしまった耳だけは戻らなかった。完璧ではないが、完全に俺だけのものになった。

 ――これで、いつでも一緒――

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