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事件

王子と姫が逢瀬の時を過ごしている丁度その時、父王ダンバーにとんでもないことが起ころうとしていた。

ダンバーはいつも夜遅くまで仕事にいそしんでいた。揉め事の仲裁、処罰の裁定、家来の昇給人事、傷痍軍人の年金保障と枚挙にいとまがない。さらに息子の王位継承問題が加わるので目の回る忙しさであった。

入り口の扉は頑丈で、窓のガラスも魔法加工されているの部屋の中は安全だと、見張りの兵士は置かないでいた。

ダンバー王はふと羊皮紙の文字群から目を離し鼻眼鏡をはずしてまわりを伺う。本来この時間帯は王の塔は離れにあるので仕事をするのにふさわしく静寂に包まれているのだが、今現在は違った。耳をすませるとなにか得体の知れない音が響いてくるのだ。それは徐々に近づいてくる。それは金属音のする大きな羽ばたく音だった。やがてその音は窓のすぐ外に達した。と同時に窓から夜とは思えない金色の光が差し込み部屋の中が真昼のような明るさになった。危険を察した王が立ち上がると同時に、何者もが砕くことができないはずの魔法ガラスが砕け散った。とっさに王はガラス片がかからぬように腕で顔を覆う。恐るべき敵が来襲してきたかもしれぬのに今これが王ができる精一杯の行動だった。王の体を吹き飛ばさんとするかの風が襲ってくる。机の羊皮紙が空中に舞い上がる。

襲ってくる風とまぶしい黄金の光に逆らって、目を細め腕の隙間から侵入者を覗き見んとする。

それは機械仕掛けの黄金の鳥であった。きしむ音を立てながら舞い降りてくる。

「こ、こいつは!!!」

やがて鳥は王の前の机の上に舞い降りた。王は体の震えが止まらなかった。

全身黄金の鳥の足には黄金の小さな筒が取りつけてあった。その筒のふたが自然に開くと同時に黒い煙が出てくる。煙はまるで生き物のように地面をはい王の前まで来ると上にひろがった。

「そ、そんなはずはないっ!」

王は煙を凝視する。黒い煙は人の形を作り上げていった。王は横にある呼び鈴の紐に食らいつくようにつかむと思いきる何度も引っ張った。

「ロートレッド!!!早くっ!早く来てくれっ!」

遠くの部屋に控えている魔法使いの名を聞こえるはずもないのに叫ぶ王の姿がそこにはあった。



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