ガラス玉黒く染めたなら
...にをしたいんだい」
あれは僕にそう言ったのだろうか。今じゃもう、憶えていない。
「君になにか想いがあるなら形にしてあげよう」
あれは僕にそう訊いただろうか。今はまだ憶えている。
物語を紡ごうと想う。僕のどこかで僕の誰かがそう返した。
「そうか、君は物語を紡ぐのか」
そうだろうか、僕は思った。
「そうだろう」
あれが問うた。
そうなのか、僕は物語を奏でたいのか。
奏でたい?
それは音なのか、それとも意味なのか、それとも声なのか。
僕にはまるっきりわからなかった。
え、なんだい。僕が今どこで何をどうしてるかわからないって?
そんなこと僕にだってわからない。
じゃあ、せめてあれがなにかだけ教えろって?
君も無理なことを言いだすんのだな。
いいかい、僕は僕でさえ、僕自身でさえわからないんだ。だのにあれが何かを、僕に示せって、君はそういうのかい。
君は僕に、あれを規定しろと、あれを形にしろとそう言うのかい。
君はひどいやつだ。
僕は君を僕にして、僕はあれをあれにするのかい。
ああ、なんて。なんて、、、、、、、
あれはね。
青年を紡いだ物語は、地球というちっぽけなビー玉を黒く、あたたかく包み込みました。