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マイクラの話

 少し昔話をしよう。マイクラの話だ。


 俺はマイクラで皆がなんか凝ったでかい家や施設を作る中、ストイックにベッドとチェストと階段の配置だけ考えていた。二階は芝生……いや、麦畑だ。たまにログインしては二階の麦を収穫してパンを作っていた。


 俺はブランチマイニング用に大量の石のつるはしを携え、ただひたすらに掘った。目標は鉄鉱石。鉄インゴットだ。ダイヤなど捨て置け。鉄だ。鉄インゴットを作るのだ。


 チェストいっぱいの鉄インゴットを見て、俺は一仕事を終えた鉱夫の表情になる。石のつるはしは摩耗し、新しく新調しなければならない。少しだけ貯まった経験値は、専用のエンチャント台で、低レベルエンチャントのためだけに使う。


 鉄の鎧兜を身にまとい、俺は鉄を探し求める。北は海の底近くまで掘り進めた。次は西だ。ブランチマイニングは地底に爪痕を残し、ダイヤを掘る邪魔になるかもしれないが、鉄のためだ。仕方がない。


 ある時リアルが忙しくなり、しばらくログインしなくなった。次にマイクラをやったとき、鯖は消えていた。精練前の鉄鉱石も、大量の鉄インゴットも、消えてなくなった。涙は出ない。鉱夫は泣かない。


 ただ、マイクラを通じて、俺は自分がどういう人間なのか分かったような気がした。俺は、他人が価値を持つと思っているダイヤより、そのへんに埋まっている鉄のほうに価値があると思っている男なのだ。確かにダイヤは希少だ。価値がある。事実はそうかもしれない。だが、俺は鉄の神話を信仰していた。

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