Nさんとの出会い
NEET株式会社で僕が何をやっていたのか。それは守秘義務に反しない範囲でなら書くことができる。つまり、僕が推進していたアナログゲーム事業部についてなら。
いろいろSNS内部でごたごたはあったけれど、2013年11月にNEET株式会社は登記され、正式に株式会社になった。登記にあたって会社を最低一年間存続させるためのお金から逆算して、株式(転売不能)が希望者全員に発行されたのだが、NEET株式会社とは別の道に行くためにメンバーになることを止めたり、お金が準備できなくてメンバーになるのを諦めたりした人たちもいた。300人くらいいた人たちのうち、200人がSNSに参加し、160人くらいが株主になったと思う。そのうち、積極的に活動していた人たちが、記憶が正しければ70人前後いたのじゃないかな。
さて、NEET株式会社で、僕はSNSに顔を出したり他のプロジェクトを手助けしたりしつつ、カードゲームの第二弾を構想していた。でもさっきもいったように、アーガーデュエルの制作メンバーで、11月までに株主になるのを止めてしまった人たちもいた。また前回アーガーデュエルが思ったより売れなかったこともあった。結局、僕と一緒にカードゲームの第二弾を作ろうとする人はほとんど居なくなってしまった。
アーガーデュエルのときはイラストを著作権の切れたタロットから流用してきたわけだけれど、新作を作るならルールだけでなく、イラストを書き起こさないといけない。そして多種多様な人材がいるNEET株式会社でも、上手くイラストを描ける人となると、だいぶ絞り込まれてしまうというのが現状だった。
年を越して、2014年2月。僕は東京で行われたNEET株式会社のリアルミーティングに顔を出していた。病院帰りに「ダイヤを掘ろう!」のルールは思いついていた。あとはイラスト担当を決めなければならない。僕は勇気を出して、イラストレーターのNさんに接触した。
「どうも。青い鴉(ぶるくろ)です」
簡単なメモを渡し、イラスト制作の依頼を行う。その相手であるNさんは、NEET株式会社の動画配信で、コメント読み上げ(棒読み)を担当していたことから、メンバー全員に顔が知られていた。いわば一方通行の状態である。
でも、棒読みとはいえ、一生懸命に頑張るNさんに、僕は勝手な好意を抱いていた。そんな僕は、NさんとSkypeのIDを交換し、通話での打ち合わせを何度も何度も行った。僕の中の好意は徐々に高まっていき、眠剤を飲んで夜の(感情をすぐ言葉にしてしまう)人格が出ている間に、知らずに告白してしまっていた。
うつ病でニートのNさんは、僕の声が好きだと言ってくれた。Nさんが良ければ、リアルで打ち合わせ(デート)しませんか。そんな唐突なお誘いに、Nさんは少し迷ったあと、はいと答えてくれた。飛び上がるほどうれしかった。
4月。僕はNさんと栃木県のU市で出会った。Dカップ黒髪ロング眼鏡で猫耳カチューシャを着けていた。一目ぼれとはこういうのを言うのだな、と思った。一緒にオリオン通りという商店街を歩いて、おっかなびっくり手を繋いだ。カードゲーム店や、ちょっと高めのコーヒーショップで、何度もカードゲームのイラストの打ち合わせをした。
Nさんは、ガンプラやフィギュアが好きな、変わった女性で、趣味がオタクっぽいことなどを話してくれた。東京の秋葉原には負けてしまうが、U市のオタク系ショップなどをめぐったり、カラオケに行ったりした。
幸せな時は、すぐに過ぎ去ってしまう。Skypeで毎日のように通話しているのに、思いはますます強くなる一方だった。僕はNさんを愛しているのだ。だから――いつか、僕はNさんと結婚したいなと、性急かもしれないけれど、そう思った。
今、僕はNさんと神奈川で同棲している。幸せすぎて、少しのろけ話になってしまうが、僕はNEET株式会社に参加してNさんと出会えたことを、心の底から感謝しているのだ。




