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魔の書  作者: 琶苑
2/2

第1書:魔女の呪

本編スタートです!



「ちょっとクロウ、待ちなさいよ」



クロウと呼ばれた長い金髪を一つに結った朱眼の青年は、赤いツインテールで緑目の少女に呼び止められた。


先を歩いていたクロウは、足を止めて少女の方を向いた。



「何だ?」


「人が倒れてるのよ」


「人?こんな森の中にか?」



クロウが言うとおり、ここは深い森の中。普通、生身の人が通る道なわけがなかった。



「本当に倒れてるんだもの」


「エンジュ、どこに倒れてるんだ?」


「……あんたの下よ」



エンジュと呼ばれた少女にそう言われ、青目で緑色のボサボサ長髪の青年、レオはしゃがんで自分の下を目を細めて見た。



「コンタクトはどうしたのよ!」



「どこかで落としたみたいだな」


「落としたって……。眼鏡をかけなさいよ!もしくは代えのコンタクトはないの?」


「眼鏡ならあるけどでかいんだよなぁ」


「とりあえず今はそれしてなさいよ!」


「てめぇら!うっせーよ!」



倒れていた黒髪の少年はあまりの騒がしさに勢いよく起き上がった。



「お前はいつまでも俺様に乗ってんじゃねーっ!

そっちの金髪も黙って見てないで止めろよ!」


「……元気そうだな。サッサとこの森を出るぞ」


「そうね」


「早く町に行って新しいコンタクト、買わないとな」


「レオ、そっちは逆よ」



少年を無視してその場を去ろうとする3人に少年は怒りが頂点に達した。



「テメェら!このゼノ様を怒らせたらどうなるか分かっててやってんのか?」





「レオ、とりあえず予備のコンタクトよ」


「ありがとう」


「……」



誰一人、ゼノの話しを聞いてはいなかったことにゼノはついに武器である大鎌を取り出した。



「ぶっ殺す!」



そして、3人に目掛けて大鎌を振り回して来た。


3人はそれぞれゼノの攻撃を避けた。

エンジュは鞭を取り出し、レオは槍を取り出した。



「俺様とやろうってか?いい度胸だな。

俺様が何者か知ってんだろーな!」


「“ゼノ”ってさっき自分で名乗ってただろ」



レオの的確な突っ込みにゼノは顔が赤くなったと同時に怒りのボルテージが更に上がった。



「うるせぇ!もう頭にきたぜ!てめぇらを殺した後、身ぐるみをはいでやる!」


「追い剥ぎみたいね」


「俺の物は俺の物。テメェの物も俺の物だ」


「ガキ大将かよ」


「世の中、俺がルールなんだよ。だから、大人しく金よこせ」


「さっきと言ってることが違ってるわ……」


「うっせー!いいから、金を渡すのか渡さないのか決めやがれ」



エンジュとレオは唇を釣り上げると戦う姿勢になった。

それだけで答えが分かったゼノも戦う姿勢になった。


「お金は大事な旅資金。渡すわけにはいかないな」


「そゆこと」


「この俺様相手にいい度胸だな」


「先手必勝!

〈ファイアーボール〉」



エンジュが呪文を唱えると炎の玉がゼクオン目掛けて飛んでいった。


しかし、ゼノは慌てる様子もなく、大鎌でエンジュの魔術をはじいた。



「こんなもんか?」


「まさか、その大鎌が魔力のこもった魔具だったとわね……。

下級魔術じゃ簡単に弾かれるわ」



エンジュは下級魔術では効かないことを知ると、今度は先ほどよりも強い魔術を使うため、詠唱を始めた。



「させるかよ!」


「詠唱の邪魔はさせない!」


ガキンッ


と金属音が響き合う音が森中に響いた瞬間、ゼノの大鎌が吹っ飛んだ。


二人の間には今まで影で様子を見ていたクロウだった。

クロウは右手でレオの槍を受け止め、左手に持っていた大剣でゼノの大鎌を吹き飛ばしのだった。



「(こいつ、俺様の大鎌を吹っ飛ばしやがった……!)」



ゼノは自分の大鎌を吹き飛ばされたことに驚きと同時に怒りもこみ上げてきた。


エンジュも詠唱をやめ、クロウに注目していた。



「いきなり何するんだ?」


「暴れるのは勝手だが場所を選べ。

ここで暴れると森の生物に迷惑だ。

それとエンジュ」


「な、何?」


「森で炎の魔術はやめろ。

燃え広がる」


「確かに…」

「チッ!興が冷めちまったぜ」



ゼノは邪魔をされたことが気に食わなかったのかやる気をなくし、落ちていた大鎌を拾った。



「たくよ、最悪な気分だぜ」


『こういう時は気分転換に楽しいことをしたらいいッス!』


「そうだな。こういう時は酒場で酒飲んで金を巻き上げて女たちに『キャーキャー』言われてぇな……って、誰だ?」



聞き慣れない声にゼノはクロウたちの方を向いた。

しかし、3人共、首を横に振った。



『ここッス!』



声は明らかにゼノの下から聞こえてきた。

ゼノが下を見ると、なんとゼノの影には目や口があり、全く姿形が違う生きていた。

ゼノは驚くより怒りが込み上がり、影に向かって大鎌を突き刺した。



『ウギャーッ!やめて欲しいッス!』



影はゼノの大鎌が当たらないように避けた。


この様子にクロウたちは呆然とした様子だった。



「テメェは何なんだ?」


『オイラはシャドウで、“ブレイルド・ザ・シャドウ”っていうもんッス』


「うっせーよ。テメェなんて“ジミー”で十分だ。

どこから来たんだよ?」


『名前を聞いといてひどいッス!

オイラは魔界から来たッス』


「魔界ぃ!?テメェ、悪魔なのか!」

『はいッス!でも、オイラは友好的な悪魔ッスから人間に危害は加えないッス』


「んなこたぁどーでもいいんだよ!いいから俺の影から出て行きやがれ」


「それは無理だ。お前らは離れられない」



クロウが2人の会話に割って入った。


ゼノはクロウの言葉に衝撃を受けていた。



「どういうことだよ?」


「これは“呪”だからだ」



呪……ようは呪いである。



「どんな呪なの?」


「詳しくはかけた本人にしか分からないが呪であることは確かだ」


「詳しくはわかんねーのかよ!?使えねー奴だな」


「呪にかんしては、専門外だからな」


クロウはゼノから罵声を受けてもたいして気にも止めていなかった。



「なら、呪の解き方はないのかよ?」



「二つあるが、一つは呪を解くことができる奴を捜すことだ」


「もう一つは?」


「呪をかけた奴に解いて貰うことだな」



「呪をかけた相手って誰よ?」



エンジュにそう言われ、ゼノは過去の記憶を探ってみる。



「そもそも何で倒れてたんだよ?」


レオにもそう言われ、倒れる前の記憶を探ってみた。

そして、一人の人物が頭に映し出された。



「女だ」

「女?」


「たまたまここで女に会ったんだ。持ち合わせの金も無かったし、その女からぶんどろうとしたんだよ」



「追い剥ぎか!」とエンジュとレオは思ったが、口には出さないでおいた。

2人がそう思っている間もゼノは話しを進めた。



「そしたらあの女!金を渡さないどころか変な魔法を俺に使いやがった!」



「そりゃあそうだ」というようにエンジュとレオは頷いた。



「んで、気がついたらお前らに会った」


「どうやら、その女がアンタに呪をかけたみたいね。

どんな女なの?」


「どんな女って言われてもなぁ…。

いきなり聞かれても…あ!」



エンジュに尋ねられ、考えこんだゼノだったがすぐに“女”について思い出したようだ。



「紫髪で黒いとんがり帽子を被ってて、箒を持ってたな」


ゼノから女の特徴を聞いて、女の正体が分かった。

箒を持ち、魔法を使う女といえば……。



「魔女だ」

「魔女ね」

「魔女だな」



3人は同時に言った。


見た瞬間、魔女だと普通は気付くだろう。



「あの女!ぜってぇ許せねえ!」



ゼノは大鎌で近くにあった木を切り倒し、暴れはじめた。



『お、落ち着くッスよ!』


「次に会ったらぶっ殺す!」



クロウたちは呆れたのか、無言のまま立ち去ろうとした。


しかし、ゼノに行く道を先回りされ、去ろうにも去れなかった。



「まだ何か用か?」


「魔女捜しを手伝いやがれ」


「何で?」

「俺様が手伝えってんだから手伝うのは当たり前だ」



-なんて自分勝手な男だ。



クロウは呆れた顔をして、エンジュとレオはため息をついた。



「こんな奴でも人に変わりはないし…」


「ここで見捨てたら、人を見殺しにしたものだしな」


「仕方ないわね。不本意だけど、手伝うわよ。

あたしたち、用事があって聖教会に行く所だったし」



聖教会とは、シルフィーネ国の中心にある教会で、他の国でいう城のような所である。

聖教会にはシルフィーネを統治する導師がいる。



「お前ら、聖教会に何しに行くんだよ?」


「聖教会が護衛を欲しがってるのよ」


「護衛?んなもん、兵士を使えばいいだろ」

「戦争で忙しいらしい」



自分から尋ねておいて、ゼノは興味がなさそうだった。



「で、なんだって護衛を募集してんだ?」


「悪魔の“呪”を解くシスターや神官を他の町に派遣するための護衛だ」



今まであまり言葉を発しなかったクロウが横から会話に割り込んで言った。


「呪を解くだと?聖教会に行けば呪が解けんのか!そうと分かったなら早く聖教会に行くぞ!」


『待つっスよ~!』



ゼノは聖教会で呪が解けると分かるとズンズンと森の奥に進んで行った。

そんなゼノを見て、3人はため息を深くついた。



「うるさい人ね」


「賑やかだな」


「面倒なのを拾った」



3人は面倒そうにゼノの跡を追った。



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