表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
モブ令嬢と騎士  作者: はるさんた


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/21

第7話 揺れる心


王都の午後。

雲ひとつない青空の下、騎士団の訓練が終わったあと――

ライナルトは、足が自然と図書館の方へ向かっていた。


(……少し、古い戦記の資料を探しているということにしておこう)


誰に言い訳をするわけでもないのに、

そんな理屈を心の中で整えてから、彼は重厚な扉を押し開けた。


静かな空気と紙の匂い。

本棚の間に、あの淡い髪の令嬢の姿を探す。


いた。

窓際の席で、今日も本を読んでいる。

エリス・フォン・ヴァレンタイン。


けれど、その隣には見慣れない男性がいた。

二人は何か話をしている。

エリスは少し困ったように、それでも礼儀正しく微笑んでいた。


――胸の奥が、ざわめいた。


ライナルトは足を止め、しばらくその場に立ち尽くす。

見知らぬ感情が、心の奥から湧き上がってくる。


やがて男性が立ち去ると、ライナルトはゆっくりと近づいた。

「……エリス嬢」


エリスは驚いたように顔を上げた。

「ライナルト様……! またいらしたんですね」

「少し、資料を探しに来てね」


そう言いながら、彼はちらりと先ほどの男性の去った方向を見る。

「……さっき、話していた男性は?」


「え? あ……」

エリスは一瞬戸惑ったように瞬きをしてから答えた。

「知らない方でした。でも、私がよくここにいるのを知っていて……少し話しかけられただけです」


「知らない人、か」

ライナルトの声は、いつもより少し低かった。


エリスは小さく首を傾げる。

「……どうかしましたか?」


「いや……別に」

そう言いながらも、胸の中では穏やかでない何かが渦巻いていた。


(知らない男性……彼女のことを気にしている者が、他にもいるのか?)

(いや、それが普通だろう。彼女は誰にでも礼儀正しく、優しい)


理性で理解しようとするのに、

感情はまったく言うことを聞かなかった。


エリスはそんな彼の変化に気づかないまま、

「今日はどんな資料を探しているんですか?」と微笑んだ。


ライナルトは少しだけ視線を落とし、

その笑顔を見て、胸の奥が痛いほどに締めつけられるのを感じた。


(……ああ、そうか)


ようやく、自分の中の答えに気づく。

――自分は、彼女を気にしている。

ただの好奇心でも、優しさでもない。


ライナルトは小さく息をつき、微笑んだ。

「……また、君と話せてよかった」


「え……?」

エリスは不思議そうに見つめる。


その瞳を見ていると、言葉が続かなくなりそうだった。

ライナルトは少し早足で席を立ち、背を向けた。


(この気持ちは……もう否定できない)


図書館を出ると、秋の風が頬を撫でた。

その冷たさが、少し熱を帯びた心を落ち着かせてくれるようだった。


だが同時に――

もう以前のような穏やかな気持ちでは、彼女に会えなくなっていた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ