第16話 想いを形に
秋の柔らかな日差しが城下町を照らす午後、ライナルトとエリスは手を繋ぎながら市場を歩いていた。
人々の行き交う中、自然と笑顔がこぼれる。
「この花、君に似合うと思ったんだ」
ライナルトが少し照れながら差し出すと、エリスは頬を赤らめて受け取る。
「ありがとうございます、ライナルト様……とても素敵です」
「うん、気に入ってくれたなら嬉しい」
二人は花屋や本屋を回りながら、日常の些細なことを楽しむ。
本屋では、エリスが興味を持った歴史書を手に取り、ライナルトに説明する。
「ライナルト様、知っていましたか?この時代、騎士たちは城を守るだけでなく、街の秩序も守っていたんです」
ライナルトは興味深げに頷く。
「なるほど……今も昔も街の巡回や秩序維持も、騎士として重要だな」
午後の散歩では城外の小道を歩き、二人は夕暮れの高台にたどり着く。
赤やオレンジに染まる街並み、遠くの森や川が夕陽に柔らかく光る。
風が二人の髪を揺らし、心地よい静寂が広がる。
「エリス……正直に言うと、俺はもう君のことを誰にも渡したくない」
エリスは胸を高鳴らせながら、顔を赤らめる。
「……ライナルト様……」
「だから、俺は君と正式に婚約したいと思ってる」
エリスは戸惑いながらも、心の奥でずっと思っていた想いを告げる。
「私も、ライナルト様と..」顔を赤らめながら言葉を返すエリス
ライナルトは微笑み、そっと手を握り返す。
「よかった……これで俺たち、正式に一歩踏み出せる」
翌日、ライナルトは朝の書斎で父母に向かって話す。
「父上、母上、私は婚約者がいます――エリス嬢です」
母は少し驚いた表情、父は眉をひそめる。
ライナルトは迷わず語る。
「はじめは舞踏会でそして城下町で出会い、互いの気持ちを確かめ合いました。私はエリス嬢以外は考えられません。爵位や家柄は関係ありません。彼女を大切にしたい――それだけです」
両親は一瞬黙り込むが、ライナルトの熱意と真剣さに納得する。
「なるほど……お前の心がここまで決まっているのなら、我々も反対はしない」
母も微笑み、手を握る。
「正直、あなたがこのまま誰とも婚約をしないのかと心配していました。
ですが、あなたがが幸せであれば、それで十分。エリス嬢を大切にしなさい」
同日、エリスは男爵家で家族に向かって報告する。
「父上、母上、私……ライナルト様と婚約することになりました」
父は驚き、母も目を丸くする。
「伯爵家……!?」父が言う。
「はい……でも、ライナルト様は私のことを心から大切に思い、私の幸せを一番に考えてくださいます」
父は考え込むように頷き、母は少し微笑む。
「本当に君の幸せを考えてくれるなら、我々も納得だ」
使用人たちも口々に祝福し、エリスは胸がいっぱいになる。
――家族も祝福してくれる……これで少し自信を持てる
翌週、二人は城下町の川沿いを歩く。
「この景色も、君となら特別だな」ライナルトが言うと、エリスは微笑む。
「私も……ライナルト様といると、どんな景色も素敵に見えます」
カフェで軽食を楽しみながら、ライナルトは少し意地悪に訊ねる。
「さて……次はどんな場所に行きたい?俺が計画してあげる」
エリスは少し照れながら考え、二人で笑い合う。
数日後、ライナルトは騎士団の仲間に自然に話す。
「皆、少し聞いてくれ。俺はエリス嬢と婚約することになった」
カールや仲間たちは驚きつつも、にこやかに祝福する。
「さすがだな、ライナルト!」「よくやった!」
これまで少しずつ埋めてきた外堀――互いの距離や心の壁は、こうして確実に形になりつつあった。
夕暮れの街灯が灯る中、二人は並んで歩き、静かに笑い合う。
――未来はまだ長いけれど、確かに二人の想いは通じ合ったのだ。




