第11話 少しずつ近づく距離
朝の光が、城下町の石畳を柔らかく照らしていた。
ライナルトは、騎士団での訓練を終えた後、自然と足が図書館へ向かっていた。
――昨日、仲間に相談した通り、まずは会話の機会を増やすのだ。
図書館の扉を押すと、静かな空気の中で、エリス嬢が本に目を落として座っていた。
恋茶色の髪が肩にかかり、薄緑の瞳は文字を追う真剣な表情。
ライナルトは少し息を呑む。
(ああ……やっぱり、落ち着く雰囲気だ……)
そっと近づき、声をかける。
「おはよう、エリス嬢。今日はどんな本を読んでるの?」
エリスは顔を上げ、少し驚いた表情を見せる。
「おはようございます、ライナルト様……今日は、王国の歴史についての本を読んでいます」
ライナルトは首をかしげ、少し笑いながら言った。
「歴史か……俺も少し興味あるんだ。どの辺の時代の話が書いてあるの?」
エリスはページをめくり、丁寧に説明する。
「この本には、王国がまだ小さな領地だった頃から、騎士団がどう作られ、戦いに参加してきたかが書かれています。ライナルト様の騎士団についても少し触れられています」
ライナルトは真剣に頷きつつも、少し親しみを込めて言う。
「なるほどな……君の説明で、内容がぐっと身近に感じられるよ。ありがとう、エリス嬢」
エリスは少し微笑み、頬を赤くしながら答える。
「恐縮です、ライナルト様……お話しできて、私も嬉しいです」
二人は王国の歴史や騎士団の話題を中心に、少しずつ会話を重ねる。
ライナルトは、エリス嬢の知的好奇心や落ち着いた雰囲気に触れ、自然と会話に入りやすくなった。
(こんなに落ち着く雰囲気の子だったのか……)
胸の奥がじんわり熱くなる。
「ライナルト様、騎士団での訓練は大変ではありませんか?」
「ああ、まあ……日々、身体だけじゃなく頭も使う訓練だな。でも君の話を聞くと、少し気が楽になるよ」
エリスは頬を赤くし、うつむきながら小さく笑った。
「そう言っていただけて、私も安心しました、ライナルト様」
昼が近づき、ライナルトは立ち上がり、軽く会釈する。
「今日はこれくらいにしておこう。また会えたら嬉しいな」
エリスは顔を赤くしながら、静かに頷く。
「はい……また会えたら嬉しいです、ライナルト様」
その一言に、ライナルトの胸は高鳴る。
(――やっぱり、守りたい、もっと知りたい……)
ライナルトは心の中で誓った。
――焦らず、少しずつ。だが、確実に、彼女の心に近づくのだ。
図書館を後にするライナルトの背中に、穏やかな光が差し込み、心の奥で芽生えた恋心が、ますます強く燃え始めていた。




