第58話 狸さん
「なぁ、俺たちも一緒に混ぜてくれないか?」
いつも通り鍛錬をしていると、全身モフモフの狸型の獣人が、後ろに二人の魔物を連れて話しかけてきた。
アキは狐のような耳と尻尾を生やしているが、獣人という種類の魔物にはいくつか種類があるようだ。
俺の目の前にいるポッチャリ体型の狸さんは、少し申し訳なさそうに目線を下に向けている。
その目はオドオドしていて、落ち着きがない。
「今まで無視してきたのに、急に仲間に入れてくれっていうのが図々しいのは分かってる。でも、お前たちを見ていて、もう一度頑張ろうって気になったんだ!」
狸さんは拳を胸の前で固く握り、恐怖で震える身体を必死に抑え込もうとしているようだ。
なんだか、昔のカコピオスが自然と頭にイメージされる。
たぶん、活気のあった頃の彼らは、こんな感じだったのだろうな。
俺は一歩前に出て、狸さんの目を見た。
これは、本気でやろうとしている目だ。
アキもそうだった。
努力しようという思いのある人は、こういう目になるのだ。
俺はゆっくりと前に手を差し出した。
「これから、一緒に頑張ろう!」
前向きな返事をもらえて緊張の糸が切れたのか、狸さんは目をうるうるにしながら、俺の手を強く握った。
「これからよろしくお願いします!」
こうして、新たな仲間が三人増えることになった。
ちなみに、狸さんの名前はラクンというらしい。
他二人の名前は、ロンとイロだそう。
この二人は緊張していたのか、あまり話そうとしなかったので、これから打ち解けていきたいと思う。
「やった~!同志が増えた!!」
さっきまでランニングをしていたマンガスさんが、嬉しそうにこちらに来た。
「この調子で頑張ろう!」
「「・・・」」
流れに乗ったと思った掛け声に誰も反応せず、一人悲しそうにマンガスさんは鍛錬を再開した。
改めて、マンガスさんはリーダーとして認識されていないのだなと思う。
だが、あの人の言う通りだ。
「この調子で、どんどん皆をやる気にさせるぞ!」
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