第57話 忠告と助言
旧ネクシア城――城主の部屋
「やぁ、久しぶり」
どこか不気味な薄ら笑いをした男が、城主のものと思われる豪華な椅子に座った小太りの中年男性に挨拶をした。
小太りの男は全身に装飾品を身に付け、椅子の背もたれに身を預けている。
「なんのようだ、シン?お前がここに来るということは、何か話があるのだろう?」
「そんなに焦らないでよ、モルヴァン」
小太りの男、モルヴァンは不快そうに鼻を鳴らした。
「君に忠告しておきたいことがあるんだ」
シンの言葉に、モルヴァンの耳が微かに動いた。
そして、その言葉を嘲笑うかのように、シンにむき出しの歯を見せた。
「忠告だと?この儂が恐れることがあるというのか?」
そう言って、男は部屋の窓から、城の正門に目を向けた。
「儂には大地の支配龍がある!奴さえいれば、この森に敵なしよ」
モルヴァンの目線の先には、巨大な身体に、ゴツゴツとした鱗に全身を覆われたドラゴンが悠然と立っていた。
「確かに負けることはないかもしれないが、一応伝えておくよ」
「ふんっ、つまらん男だ」
モルヴァンは自分の自慢話を完全にスルーされてしまい、不満を露わにした。
すでに慣れているのか、シンはそんなモルヴァンを気にも留めず、話を続けた。
「そのドラゴンに関係するんだけど、ラストラドって所でドラゴン退治の準備がされているようなんだ」
「ドラゴン退治?」
モルヴァンは顔を下に向け、少しだけ黙っていたが、次第に肩を上下に揺らし始めた。
「くっくっくっ・・・」
そして、堪えられなくなったのか、勢いよく顔を上にあげた。
「あーっハッハッハッ!」
他に何の物音もしない城内に、モルヴァンの高笑いが響き渡った。
「ドラゴンを倒すだと?魔物はバカだと思っていたが、弱肉強食という自然の理すら知らないのか!」
モルヴァンはしばらく腹をかかえて笑った。
それをシンはただ無言で見つめていた。
そして、少しするとモルヴァンに声を掛けた。
「もう時間なので、私は帰りますが、最後に一つ助言です」
さっきまで上機嫌だったモルヴァンだが、シンの言葉に怒りを感じたようだ。
眉間にシワを寄せ、シンを睨んだ。
「助言とは?」
「あまり調子に乗らないように」
そう言うと、シンはモルヴァンの目の前から姿を消した。
まるで霧のように。
モルヴァンは舌打ちをした後、机の上に置かれていた酒の入った瓶を掴み、ぐいっと飲み干した。
「ブハッ!何が助言だ、あの青二才が!!」
モルヴァンは空になった瓶を机にたたきつけた。
「誰が相手でも、今の儂には皆雑魚じゃ!ハッハッハッ!」
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