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第53話 城壁の上にて

アキが鍛錬に参加してから一週間が経過しようとしている。

最初は予想外の出来事に驚いていたカコピオスの連中も、この風景に慣れ始めたようだ。

俺たちを見る視線が明らかに減っている。


だが、残念なことに、新しく鍛錬に参加しようという者は一人として現れていない。

これが時間の問題だと思っているのは、一週間前と変わらない。

いつかは皆が鍛練をやるようになると信じている。

でも、その時間が俺の想像よりも長くなりそうなのである。

まったく、カコピオスの奴らはチキンばかりだ。


時間がかかりすぎるのは喜ばしくない。

もし、ドラゴンの討伐が近いうちに決行されるとすれば、今さら鍛錬を始めようとはしないだろうから。

だから、俺としては皆になるべく早く鍛錬を始める決断をしてほしいところなのだ。



そうは思いつつも、これといった解決策が閃かないので、現状は手の出しようがない。

どうしたものか。

う~ん



腕を組んだまま、目を閉じて唸っていると、鍛練の終わりを知らせる鐘の音が耳に入ってきた。

今日の鍛練はここまでのようだ。

壁の隅に置いてあった荷物をまとめ、宿舎に帰ろうと訓練場を出たときだった。


「ショウ!」


後ろから俺の名前を呼ぶ声が聞こえた。

いつも聞いている馴染みの声に違和感のおぼえることもなく、俺は後ろを振り返った。


そこには、急いで来たのか、少しばかり息を切らしながら、額の汗を拳で拭うアキの姿があった。

鍛練の時間以外で彼女と話すことは滅多になかったので、こうして呼び止めてまで話すことがあるのだろうか、と俺は不思議に思った。

よほど重要な話である可能性が高い。

少し、緊張する。


「どうした、アキ?」


アキは、深呼吸をして息を落ち着かせた。


「少しだけ、時間ある?話をしたい」


なんの話だか分からないが、アキが珍しく自分から声を掛けてくれたのだから、少しくらいは付き合うとしよう。


俺はアキに連れられて、ラストラドを囲む城壁の上に来た。

ここに来るのは初めてだ。

いつもは背の高い木々に囲まれた森の中の景色しか見ることができないが、この高さだと視界を遮るものがなく、日が沈みゆく地平線を見ることができる。

なんか、沁みるなぁ。


久しぶりに大自然の景色に感動しつつ、アキの様子もしっかり伺っていた。

話とは、何のことだろうか。



「なぁ、ショウ。お前に一つだけ、聞いておきたいことがある」


いつもは俺に対して強い口調のアキだが、今はなぜか優しさを感じる。

ツンデレも嫌ではないが、おっさんには優しい女の子のほうがありがたい。


まぁ、それはどうでもいいとして、「聞きたいこと」とは何だろうか。

彼女が俺に興味を持っているとは思っていなかったので、とても以外だ。


アキは、神妙な面持ちでゆっくりと口を開いた。

その様子はまるで、好きな相手に自分の思いを告白するかのようだ。

自分の思いが叶うという期待と、望まない事実――知らないままが良かった現実を知ってしまう恐怖、

その相反する二つの気持ちが入り混じった、そんな様子だ。



「お前の目的は何だ?」


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