第50話 光
「予想を超える未来?」
アキは眉間にシワを寄せた。
怒りが次第に収まりつつあるが、それは決してアキの心に変化が起きているわけではない。
このまま流れを崩さずに、彼女の心に訴えかけよう。
俺は話を続けた。
「今のカコピオスには、目指すべき目標がない。生きる価値を見失っているんだ。そして、そのことを正しい選択だと思っている」
初めて皆に会ったとき、目に光がないと感じた。
それは、生きる意味を失い、ただただ彷徨い歩く亡者と同じだ。
彼らの過去を知ったからこそ、俺は自分のできる最大限のことをやりたいと思う。
亡者ではなく、目標に向かって大地を踏みしめる生者になってほしい。
「家族の命を奪ったドラゴンを討つ、それが私たちの悲願だ。そのためには、カコピオスがいるべきじゃない。だから、努力することを我慢している。それが生きる理由だ」
「いや、違う」
俺はアキの言葉をすぐに否定した。
彼女自身も、自らの言葉が自分の本心だとは微塵も思っていないだろう。
その証拠に、彼女の顔にはさっきまでの威勢がない。
言葉にも重みを感じない。
「君も気づいているだろ、自分の本心に。家族を奪った仇を命に代えてでも討ちたいと、そのために自分の命を捧げたいと。今の現実を変えたいと、自分の心に従いたいと」
雲の切れ間から、空を照らす一つの星が姿を現し、潤んだアキの瞳をキラキラと反射させる。
あと少しだ。
アキの心情が変わりつつある。
彼女だって、黙ってドラゴンが倒されるのを待ちたいわけではない。
残された自分の命を、仲間のため、家族のために使いたいのだ。
だから、ラストラドにいる。
今は自分の心を自分の理屈で縛っているんだ。
俺は、その呪縛を解く。
「もう一度だけ聞く」
アキが喉の奥を小さく震わせながら、一生懸命に口を動かした。
もう、怒りは消え失せたのだろう。
俺はアキが紡ぐ心からの言葉一つ一つに耳を傾けた。
そして、その意思を彼女に伝えるかのように、自然と目の奥に炎が宿る、そんな感じがする。
「私はドラゴンを討つために努力していいのか?」
アキの心から生まれた純粋な言葉に、俺はこたえた。
「一緒に努力しよう」
俺の言葉にアキが何かを言うことはなかった。
でも、彼女の表情から、言葉以上のものを知ることはできる。
アキの目には、光がある。
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