第49話 部外者
目を逸らさず、嘘はつかない。
本心のぶつかり合いを、心からの納得を。
俺は、アキに鍛錬をしてもらうべく、説得を始めた。
「鍛錬は無駄なんかじゃない。君も最初は本気で強くなろうとしたんだろ?」
アキの表情がより一層、怒りを帯びた。
過去の話は忘れたいのだろう。
それを無理やり掘り起こされて、不快に違いない。
だが、俺はアキのご機嫌をとる気は毛頭ない。
必ず、やる気にしてみせる。
「一緒に鍛錬をやろう」
俺は、アキの胸の奥深くに届くよう、思いの全てを乗せた。
「だまれっ!」
アキの怒声が訓練場に響き渡った。
「お前に何がわかる?よそ者のくせに!」
アキの怒りはさらにあふれ出した。
感情を抑えていた蓋が外れたようだ。
殺気にも似た、肌に突き刺さる威圧を感じる。
彼女の獣耳が逆立っている。
「鍛錬をしたところで、カコピオスはドラゴンの討伐に参加できない!魔王様の条件を満たすために、雑魚は雑魚らしく、ただ邪魔をしないようにしていればいいんだッ!!雑魚が頑張ったって、周りの足を引っ張るだけだ!」
アキの呼吸が荒い。
息を切らしながら、怒りに満ちた感情を途切れることなく俺にぶつけた。
多分、これがカコピオスの連中の心に生じている「諦め」だろう。
これをどうにか取り除かなくては、現状の改善を成すことは不可能だろう。
俺は拳を強く握った。
アキの怒りに押し負けてはいけない。
飲み込まれてはいけない。
冷静かつ、強い心を持って臨まなくては。
「確かに俺は部外者だ。ラストラドの皆の過去を実際に見てきたわけじゃない」
「だったら――」
「それでもッ!」
俺はアキの声をかき消す程、大きな声を出した。
こんなに言葉に思いを込めたのは、いつぶりだろう。
前世でも、多分経験してないと思う。
アキも、俺が言い返してくることが予想に反していたのか、先ほどまでの怒りを忘れ、唖然とした顔を
している。
「それでも、俺は皆に鍛錬をしてほしい!今のカコピオスは、変わるべきだと信じてる!」
俺ははっきりと言いきった。
もう、自分の考えを引き下げるつもりはない。
最後まで貫き通す。
困惑した様子のアキが、まだ少し残る怒りの感情とともに、さっきまでより小さな、虚勢を張った声で俺に問いかけてきた。
「どうして・・・そう断言できる?」
俺はアキの目を見つめ、答えた。
「諦めなかった先にこそ、予想を超える未来があるからだ!」
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