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第46話 未来へ

「騎士団じゃない?」


マンガスさんの口から告げられた事実に、俺の頭は「?」だ。

さっきまでの話だと、ラストラドにいるのはドラゴン退治のために鍛錬をしている元騎士団の人たちのはずだ。

そうでないなら、カコピオスは何の集団なのか。


いや、元々が騎士団じゃないからこそ、今の現状があるのかもしれない。


「それでは、彼らは一体何者なのですか?」


マンガスさんは目を下に向け、少し躊躇(ためら)うように小さく言葉を発した。


「彼らは、ネクシア城の城下町に住んでいた住民だよ。ドラゴンの襲撃で家族を失ったんだ」

「・・・」


表情から察するに、暗い話だろうとは思っていたが・・・。

そうか、カコピオスの連中は辛い経験をしていたのか。


マンガスさんが話を続ける。

まだ言葉に活力がない。


「騎士団以外の人々が移住の準備をする中、彼らはドラゴンの討伐に名乗りを上げたんだ。全てを失った彼らにとって、ドラゴンを殺すことだけが唯一の生きる理由だったんだろう」


マンガスさんは口を閉じた。

そして、空気を重くしてしまった責任を感じたのか、明るい笑顔を俺に向けた。

だが、それが偽りであることは至極当然のことだ。

誰でも分かる。

その笑顔で雰囲気が良くなることはなかった。



「・・・一つ質問していいですか?」


静まり返る二人の空間に、俺の声が流れる。

それは、俺が思った以上に大きく聞こえた。

マンガスさんも全ての意識を持っていかれたようだ。


少し驚きはしたが、それを表情に出すことはなく、俺はマンガスさんに問いかけた。


「カコピオスの皆にとってドラゴン討伐が生きる理由なら、どうして鍛錬をしないのですか?」


マンガスさんの顔が再び憂いを帯びる。


「諦め、だよ」

「・・・」


俺は何も言わず、マンガスさんの顔を見つめた。


現状を打破するには、過去を知る必要がある。

どんな困難であっても、俺は諦めるつもりはない。

今は、過去(げんじつ)を受け入れなければならない。


「最初はね、皆やる気があったんだよ。鍛錬だって真面目にやってた。それこそ、死に物狂いで。でも・・・」

「条件、ですか」


マンガスさんは静かに頭を縦に振った。


「魔王様からの条件、誰も死んではいけない・・・、これを知ってから鍛錬に対する態度が変わった。多分、素人の自分たちがいては条件を達成できないと思ったんだろう。近いうち、足手(まと)いの自分たちはドラゴンの討伐から外されるから、頑張ったって意味がないと考えるようになったんだ」


エリーナが課した条件。

ボルスさんの命を救うことになった一方で、カコピオスの士気を奪っていた。


「まぁ、おかげで皆が死ぬことはなくなったんだけどね」


マンガスさんが慌てた様子で、ぎこちない笑顔と共に言った。

重い空気を避けたいのだろう。

だが、その言葉に喜びの気配はなかった。

ボルスさんの命が助かったことには感謝をしていたのに、今回は何か不満そうだ。


マンガスさんが言う通り、カコピオスの連中はドラゴン退治の際に捨て駒になる覚悟だったのだろう。

彼らにとって、家族を奪った仇を討つことは、自分の命に代えてでも成すべきことに違いない。

マンガスさんは、彼らに死んでほしいとは微塵も思っていないだろう。

だが、それでも彼らが死なずに済むことを嬉しいとは感じないのだ。

カコピオスとボルスさんには、一つだけ違う点がある。

それは、覚悟と酔狂だ。


ボルスさんはドラゴンを討伐することに固執していた。

他の何もかもが目に入っていなかったんだ。


それに対して、カコピオスの連中は、命に代えてでも仇を討つという信念の下に動いていた。

それは、一時の感情の高ぶりによるものではなく、長年の月日をかけて形成された自分自身の人格によって決定された人生の選択に他ならない。

だから、彼らはその死に満足するだろう。


そのことにマンガスさんは気付いていたはずだ。

そんな彼らが今のように落ちぶれ、憮然(ぶぜん)としていることは、命が助かったとはいえ、人生の自由を奪われた牢獄の住人になるに等しい。

活力に満ちた姿を見たマンガスさんだからこそ、より現状を喜ぶことができないのだろう。



と、色々考えてみたわけだが、これらは全て俺の妄想でしかない。

俺は話を聞いただけなのだから、本当のことなんて知るわけがない。

それは仕方のないことだ。

だが、大体の内容は間違いでもないと思う。

根拠はないけど。


とりあえず、知りたいことは全部聞けたので、ここからは未来のことを考えていく必要があるな。


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