第45話 条件
「スキル『統合』は、ただスキル同士をくっつけるんじゃなくて、より強力なスキルに生まれ変わらせるんだ」
つまり、ボルスさんはより強大な力を求めたわけだ。
何のために?
・・・
答えは一つしか考えられない。
ドラゴンを倒すためだ。
「魔王様にスキルの統合を懇願している時の団長は、いつもと違った気がする。なんだか、ドラゴンを殺す使命に呪われているようだった。蛾が自ら炎に近づき、その身を燃やすように、団長も自らの使命のために己の命を炎に投げ入れようとしていた、と思う」
先ほどまでヘラヘラしていたマンガスさんの表情が暗くなった。
当時の光景を思い出して、恐怖を感じたのだろうか。
それほどに、ボルスさんの様子は異様だったに違いない。
だが、再びマンガスさんが口を開こうとした時、顔のこわばりは無くなっていた。
それは、作り笑顔などではなく、どこか頼りないマンガスさんの心からの笑みだった。
「魔王様には、団長の考えがお見通しだったみたい」
声も安堵の気持ちを纏っている。
「魔王様は条件を出したんだ。スキルを統合するための条件」
「条件?」
一体、どんな条件をエリーナは提示したのだろうか。
「その条件はね、誰も死なせないこと、だよ」
マンガスさんの顔は安心に満ちている。
彼はこの言葉に救われたのだろう。
命と引き換えにドラゴンを討とうと、病的なまでに執着した仲間を――多くの命を失う恐怖を知った自分を、その言葉は温かく包み込んでくれたのだ。
ほんと、エリーナらしいな。
俺ならボルスさんに迫られるだけで、怖くて了承するだろう。
なのに、こういう時のエリーナは冷静で、肝が据わっている。
さすが魔王様だ。
「この条件があるから、僕たちは鍛錬をしているんだ。団長も魔王様に認めてもらうために、魔王城に行くことにしたんだ」
「なるほど。それでボルスさんは十大魔将になったのか」
もし、この条件がなければ、ボルスさんたちはすぐにでもドラゴン退治に行っただろう。
そうなっていれば、結果は悲惨だったに違いない。
エリーナは案外、頭が良いのかもしれない。
もしくは、勘というやつか。
話が長くなったが、これでラストラドの事情は把握することができた。
これで先に進むことができる。
・・・
先に進む?
「あ!忘れてた!!」
突然の大声に、マンガスさんの目が飛び出そうになる。
「カコピオスの奴らに鍛錬をさせるんだった!」
頭から消え去っていた自分の使命を思い出し、崖から突き落とされた気分だ。
そう、問題は何も解決していないのだ。
ああ、どうしたものか。
彼らをやる気にするには、何が必要なのだろう。
俺がう~んと唸りながら頭を抱えていると、何かを思い出したように隣にいたマンガスさんが「あっ」と声を出した。
「言い忘れていたことがあった」
打つ手がなく絶望していた俺は、マンガスさんのほうに死んだ魚の目を向けた。
何か手助けになることだといいが、大して期待はしていない。
そんなテンションだだ下がりの俺を無視して、マンガスさんは能天気に言った。
「カコピオスの皆はね、元々、騎士団じゃないんだよ」
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