第42話 過去 3
今回も第三者視点です。
「私はドラゴンに立ち向かう」
ドレイガンの一言に、男は再び絶望の谷に突き落とされた。
自分の耳が壊れたのだと、そう思いたかった。
だが、現実はトゲを突きつけるのだった。
「ドラゴンと戦えば、間違いなく私は死ぬ。ドラゴンに傷を負わせることは不可能だろう」
「ではなぜっ!」
ドレイガンは男の目を見つめた。
そこには、涙に埋もれた絶望があった。
同時に、男はドレイガンの目を見つめた。
ドレイガンの目的は男に自分の目を見せることだったのだろう。
そして、男は驚愕した。
男の見たドレイガンの目には、諦めや恐怖といった負の感情は一切なかった。
そこにあるのは、希望だった。
ドレイガンは未来を見つめ、そして期待しているのだ。
そのことに男は衝撃を隠せなかった。
どうしてこの状況でそんな目をできるのか、理解できなかった。
だが、自分は負けたと、そう感じた。
「戦えば私は死ぬ。だが、それは決して無駄ではない。ドラゴンに立ち向かったという事実が残るのだ。これから先、お前たちはドラゴンを憎むだろう。そして、その首を討とうとする。その時、今日のことを思い出すだろう。仲間と故郷を奪ったドラゴンの恐怖、逃げることしかできない自分たちの弱さを。これでは戦いを始める前からドラゴンに負けているも同然だ。ゆえに、今日、私は戦うのだ。これからの未来でお前たちがドラゴンと戦う時、今日のことが足枷とならないために。今日という日が、ドラゴンに負けた日ではなく、ドラゴンに立ち向かった日となるように」
ドレイガンはそう言うと、男の肩を叩いた。
励まそうとしているのだろうか。
しかし、男にとっては、これからの未来を託された、そう感じざるを得ないものだったに違いない。
男は覚悟を決めることにした。
死ぬ覚悟ではない、死なせる覚悟だ。
「分かりました、ドレイガン様」
男はそれ以上何も言わず、ドレイガンを置いて城を離れた。
走る男の唇からは、血が流れ出している。
城の外に出ると、そこには誰もいなかった。
あるのは壊された建物の残骸だけだ。
どうやら、住人の避難は無事に終わったようだ。
男も急いで城下町の外に向かった。
「おーい、団長っ!」
遠くから声が聞こえる。
その場所に男が辿り着くと、数え切れないほどの人が肩を寄せ合って立っていた。
中には騎士団の奴も多くいた。
ドレイガン様のおかげで皆が生きているんだ。
男はそう思った。
自分が走ってきた方向を振り返ると、ドラゴンがネクシア城を襲っていた。
男は歯を食いしばり、耐えた。
そして、誓った。
いつの日か、必ず仇を討つと。
次回からは主人公視点に戻ります。
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