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第40話 過去 1

今回は第三者視点になってます。

今から数年前。

ラストラドの人たちは、あの城を中心とする城下町に暮らしていた。

国というほどの土地はなく、法律もほとんどなかった。

少し大きい程度の町に、数万人が暮らしていた。

だが、様々な種族が集まり、協力して、支え合うことで幸せな町を作っていた。

そして、そこに住む人々をまとめ上げ、町を治めていた者が、ネクシア城の城主ドレイガン=ネクシアだ。

彼は懐の大きな人物で、いつも笑顔だった。

そんな彼だからこそ、城下町の人々から愛され、幸せな町を築けたのだろう。


争いのない平和な日々が永遠に続くと、誰もが心の底で願い、信じていた。

だが、この世に永遠は存在しない。


ある雨の日、人々の思いは最も残酷な形で散ることになる。



「逃げろーっ!ドラゴンが来た!!」


今まで森の奥深くに棲んでいたドラゴンが町に現れた。

滅多に人を襲うことはなく、穏やかな性格のドラゴンが、この時は怒り狂ったかのように破壊の限りを尽くした。


町の至る所から白煙が上がり、人々の泣き叫ぶ声が響き渡る。

その様子は、地獄そのものだった。



「ドレイガン様、指示を」


壊れゆく町を城の一角から見つめながら、ドレイガンは考えた。

そして、後ろにゆっくりと振り返ると、床に膝をついた男の目を見つめた。

男はすでに覚悟を決めているようだ。

一切の恐怖心を男からは感じない。

ドレイガンは己の感情を押し殺し、冷酷な様相で言った。


「騎士団長ボルスよ、この町からの避難を命ずる」


男は絶句した。

自分の育った愛する町を捨てるよう命じられたのだ。

それは、町を守りたいという自分の信念を否定され、ドラゴンと戦う覚悟を踏みにじられたに等しい。

到底、男は命令を受け入れることはできなかった。


「ドレイガン様、我々騎士団はドラゴンと戦います!」


ドレイガンは一瞬、顔の緊張を解いたようだったが、すぐに元の表情に戻った。

考えを変える気はないようだ。


「ボルス、これは命令だ。お前に拒否権は――」

「それでもッ!」


男は立ち上がった。

ドレイガンとは対照的に、男の表情からは感情が溢れ出ている。

そして、どこか悲しそうなドレイガンの目を見た。

自分は意志を決して曲げないと訴えるかのように。


少しの間――でも、二人にとっては膨大な時間――が流れ、ドレイガンは顔の表情を崩した。

いつもの笑顔に満ちた表情に似ている。

男は自分の思いが伝わったと笑みを浮かべたが、実際は違った。

ドレイガンは卑怯だと思いつつ、男の願いを拒絶し、自らの決断を押し通す最後の手段を使ったのだ。


「ボルス、皆の命を守るために町から逃げてくれ。これは私からのお願いだ、命令ではない」

「・・・ッ」


男は涙を溢れ出しながら、その場に崩れ落ちた。


「・・・分かりました。この町から住人を連れて避難します」

「ありがとう、ボルスよ」



こうして、人々は城下町から退避することになった。

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